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2009.11.28
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量子物理学の歴史を語るときにどうしても欠かせない人物の一人にヴェルナー・ハイゼンベルク(Werner Heisenberg 1901-1976)という天才がいる。

1922年6月、ハイゼンベルクは初めてニールス・ボーア(Niels Bohr 1885-1962、デンマーク語の発音はネルス・ボアに近いそうだ)に会っている。その年の末ノーベル物理学賞をもらうことになるボーアはすでに著名な学者で、原子の中で電子がいくつかの軌道の間をジャンプする(quantum jump)という、彼の提唱した原子モデルは、実験結果を正確に説明することができたので、新しい理論として定着しつつあった。電子がいつどのようにして軌道間を乗り換えるのか、という疑問には誰も答えを出せず、とにかく、乗り換えが不連続的に起こるらしいことがほぼ判明していた。

不連続的にそしてランダムに起こる、という点がニュートン以来の古典力学では説明できない、古典力学のパラダイムにはない新しい現象で、これを説明する過程で量子物理学が誕生・発展したと言っていいと思う。マックス・プランクが、数式をこねくり回しているうちに偶然発見した事実―電磁波のエネルギーの交換が(流れる水のように)連続的にやり取りされるのではなく、(水をバケツに汲んで運ぶように)不連続にあるまとまった量(例えば1リットル)でされる―が発表されたのは1900年のことだった。アルバート・アインシュタインが、光電効果を光の粒子性で説明した、つまり光には波的性質と粒子的性質があることを証明したのが、1905年、彼が特殊相対性理論を発表したのと同じ年だった。そして、ボーアの原子モデル、軌道間を量子飛躍する電子、を発表したのが1913年のことだ。

ボーアとハイゼンベルクの初対面に話を戻そう。デンマークのコペンハーゲン大学の教授だったボーアは、この時ドイツのゲッティンゲンに招かれ、数回の講演を行った。ハイゼンベルクは20歳という若さだったが、ミュンヘン大学で師としていたゾンマーフェルト(Sommerfeld)に連れられて講演を聴いていた。ボーアは講演の中で、水素原子のシュタルク効果という現象に関する計算結果について触れ、この計算は同僚のクラマース(Kramers)が行ったものだが、正しいと思う、と述べた。ハイゼンベルクはたまたまクラマースの研究について最近勉強したことがあり、古典力学にのっとっている計算方法では、水素原子の中での現象を正しく説明できないはずだと思っていた。半年後にノーベル賞をもらう大物のボーアに対して、たかが大学三年のハイゼンベルクは臆することなく疑問を呈した。まあ、このあたりが天才のもつ自信と傲慢の表れなんだろう。

講演のあとでボーアはハイゼンベルクのところにやって来て、散歩しながら話をしようと誘ってきた。二人の会話は当時の原子理論の哲学的問題にも及び、ハイゼンベルクは、ボーアが自分の原子モデルに必ずしも絶対の自信を持っているわけではないこと、ボーアの原子モデルが数学的に導き出されたものではなく、現れた現象をじっくり考察することで得られた直感のようなものであること、などを理解した。(注1)

「私にとって、ほんとうの科学者の道がこの時始まった」とハイゼンベルクは後に述懐している。

(注1) ハイゼンベルクとボーアの1922年の邂逅については、Bohr Memorial Volume (1967)に収められたハイゼンベルクの回想に基づいてまとめた。出典は、Sources of Quantum Mechanics, by Bartel Leendert Waerden (1968)。





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最終更新日  2009.11.28 08:29:23
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