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一語楽天・美は乱調の蟻

2016.10.30
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テーマ:本日の1冊(2997)
カテゴリ:カテゴリ未分類
9月4日のブログで、前島密が漢字廃止論を言文一致の源流の一つとして紹介した時に、山片蟠桃(やまがたばんとう)もアルファベットの簡明さについて述べていることに触れた。山本正秀の「近代文体発生の史的研究」から引用したもので、山片蟠桃が誰であるのかも知らなかった。そこで、蟠桃についてネットで調べてみて、西暦1800年前後にこんな近代的な現実主義者がいたのかと驚いた。その号、蟠桃からも推測できるように、彼の本業は升屋という商家の番頭で、仙台藩など武家との商いもあり、武士と商人の両方の視点を持っていたのかもしれない。それに加えて、商人による商人のための儒学塾である「懐徳堂」で、中井竹山・履軒兄弟から儒学を学んでいる。天文学は麻田剛立から学んだ。彼のライフワークは「夢の代」と題され、その内容は天文、地理、歴史、経済など多岐にわたっている。今日は「夢の代」の中から、いくつか抜き書きしてみる。日本思想体系(43巻)の原文を基にして、日本の名著(23巻、責任編集 源了圓)の現代語訳(抄訳)を参考に、拙訳・意訳したものを載せる。
<本居宣長批判>本居宣長は「古事記伝」で、仏教を退け儒教を排し、中国の書物の理屈で日本の神代の人知を超えた不思議さを論じるな、と騒ぎ立て、天照大神が太陽の化身で(皇室は)その天孫である、と主張する。(本居氏はさらに)伊勢の大宮は日輪(太陽)でいらっしゃるので、日本はもちろん高麗、唐土、天竺などあらゆる国々がこの神を拝して感謝するべきなのに、外国人たちはそんな道理も知らないとはあさましいことだ、とも述べる。こういった本居氏の論理は牽強付会ばかりだ。・・・ああ神道を学んで博学と見える人も、なんでこんなに愚かなのだろう。・・・天照大神が日本を照らすのは疑いないにしても、どうして全世界を照らすと言うことができよう。(「第三巻 神代 一、二」より)
<西洋人の怖さ>欧羅巴(ヨーロッパ)の国々は外国を奪って自分の属国にし、代官を置いてこれを治め、諸国通商の便とする・・・彼らの底意(下心)を知っておかなければいけない。恐ろしいことではないか。(第二巻 地理 廿)
<日本と西洋の比較>(1804年にわずか7、80人の従卒と、ペテルブルクから西回りコースで長崎に来て通商を求めた、ロシア人ニコライ・レザノフの「智術の逞しい」ことに触れた後)日本や中国の人は幼い時から字の勉強をするけれども一生かかっても全部知ることはできず、そのほかにも仏教、詩歌、茶の湯、謡曲、舞楽をはじめとして無用の稽古や諸芸諸術に日々を費やし、また自分の仕事の為に諸芸や諸行に努め、誠実に忠孝仁義を学ぶ、それほどしても身を修めることができない。まして、天文や地理などの事象の意味や道理の知識を得て通じることなどなおさらできない。・・・世界の諸国のおおよそのことも知らない。ただ自分の国の風俗や今の有様だけがいいのだと思い込み、天変地異や外国で大事が起きたら、どうしていいかわからず驚き怖れるだけで、漫然と日々を過ごしていくのは残念なことだ。西洋「欧羅巴」の人たちは、世界中を周り、天文(天空に起こるさまざまな現象)を解明し地理を調べ、世界全体の概要を把握し、忠孝仁義のことはもちろん、物の道理を極め知的判断力を高めることだけに没頭して、諸芸・諸術など無用なことに時間をかけることはせず、文字はたったの26字で、大文字、小文字、筆記体、数字など合わせて100字ばかりなので、10歳になるまでに全部習得して、その後は知識を深め物事を習うことに向かうので、知識・技術の幅広いことが理解できるだろう。(第二巻 地理 十九)
なるほど、このような現実的で合理主義の考え方が、明治初めの前島密などの考えにつながったのか。






最終更新日  2016.11.01 06:57:50
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