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アンリ・ベルグソン(Henri Bergson)はフランスの19世紀末から20世紀初頭にかけての思想家、1927年にはノーベル文学賞をもらっている。
最近彼の「物質と記憶」(ちくま学芸文庫、2007年)の古本を購入して気付いた。著者名の表記が「アンリ・ベルクソン」、つまり、berGsonのGが、濁音「グ」ではなく清音「ク」になっている。僕はずっと濁音で使ってきたが、これは誤りだったのだろうか、それとも時代とともに表記が変わったのか。 過去に出版された書名を調べてみると、1960年代に出版されていた白水社の全集は「ベルグソン全集」と濁音で表記されているし、岩波文庫で1976年に出された「笑い」の著者も「ベルグソン」とある。更に年代を下って1993年刊行の現代思想の「時間論の現在」という特集でも、「ベルグソンvsアインシュタイン」というように濁音表記だ。どうやら、1990年代後半か2000年代になって表記の変更が全社会的に起きたのだと思われる。日本語版ウィキペディアにはこう書かれてある、日本語では「ベルグソン」と表記されることも多いが、近年では原語に近い「ベルクソン」の表記が主流となっている。英語版Wikipediaでも、発音記号は清音の「ク」を使用している。 さてそうなると、原語フランス語の発音である。Gは清音なのか濁音なのか?学生時代に数年フランス語を学んだ時にGが清音である(あるいは清音の場合がある)とは教わっていない、と思うのだが。いい加減にしか授業に出ていなかったので確かではない。 StackExchangeという「ヤフー知恵袋」のような英語のサイトがあるので、覗いてみた。すると、僕と同じ疑問を抱いている人がいた、「Bergsonの発音は何でBerksonneのように発音されるのか?」と。解答者は4人で、以下にまとめる。詳しくは、このリンクを参照。 フランス語本来のGの発音は濁音である。しかし、2人の解答者のによると、濁音のGが清音のSと連続している場合は、実際には濁音が清音に引きずられて清音化し、これは音声学上の逆行同化(backward or regressive assimilation)だそうだ。逆行というのは、後ろの音に同化している場合で、前の音が後ろの音を変化させるのは順行同化(forward or progressive assimilation)と呼ばれる。正式な発音は濁音だが、日常現実の発音では清音に近づいたものなのか、あるいは完全に同化が定着した結果今や清音が正式なのか、その辺はよくわからない。1936年に録音されたフランス語の録音のリンクが張ってあり、多分講演かなにかでベルグソンを紹介している司会者の発音だと思うが、そこではほぼ清音の「ベルクソン」と発音されている。 結局、濁音にこだわる理由もないので今後は清音の「ベルクソン」を使うことにしよう。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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