テーマ:思ったこと 考えたこと(831)
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一昨年30年住んだ家を売ることに決め地獄の引越を敢行した。そのゴミの量たるやあまりの量に最後は業者に処分してもらった。意外だったのは、衣類ゴミの量だ。ファッション・センスゼロで目立ちたい欲もあまりなく衣類はほとんど買わないタイプの人間であるにもかかわらず、大きな黒のゴミ袋に(自分の分だけで)20か30袋を寄付や廃棄することになった。季節ごとに新しい洋服を買う世の平均的な人の場合は大変な量の衣類ゴミが出るに違いない。
もちろんこれは衣類業界の戦略がここ数十年そう仕向けたことだ。新しい技術と安い労働力で叩きだされる低価格・低品質の商品をバーゲン台に山積みし消費欲を煽り立てる、一方で季節を細分化し目新しいデザインを続々投入し衣替え回数を増やすことで消費を間断のないものにする。低価格製品とファッション・サイクルの細分化は、消費者の買い替え率を加速させる、と同時に、新品の方が中古より安いので中古衣類の市場が縮小していく。こうして消費は拡大しゴミが量産される。 ゴミを適切に処理さえすれば消費の拡大は(当然、雇用も拡大するし)悪いことじゃないのでは?とネオリベラリズム的発想の人は肯定的に評価するかもしれない。ところが、靴を含めた衣類産業(ファッション産業、アパレル産業)の環境破壊への<貢献>度は意外と大きい。環境の負荷に関する統計を幾つか挙げてみよう。 綿の生産には比較的多量の淡水が必要で、一枚の綿シャツを生産するのにおよそ2700リットルの水を必要とする、これは人が2.5年間で消費する飲料水の量に匹敵する。また除虫薬と除草薬の全消費量のそれぞれ24%と11%は綿の生産に使われている。(注1) ポリエステルなどの化繊の生産は、水も土地も綿の生産ほど必要としない。そのかわり、温室効果ガスの総排出量では綿の2倍以上と推定される。2015年の推計では、年間総排出量は7,060億キロで、石炭火力発電所185基分に相当する。(注1) マイクロファイバー(極細繊維)を含む衣類を洗濯すると相当の量のマイクロファイバーが落ちるらしい。それが汚水処理場で十分に除去されないと海に流れ込む。推定では毎年50万トンのマイクロファイバーが流出している。これはペットボトルに換算すると500億本分に相当するという。(注3) 衣類業界全体(靴を含む)では、世界の温室効果ガスの内およそ8%を排出していると推定される。衣類生産・流通サイクルの内、繊維と糸の生産そして染色・仕上げのプロセスがもっとも排出量が多く、衣類業界の排出量のおよそ79%を占める。(注2) このまま衣類業界が成長を続け、現在の消費行動が変化しないと仮定すると、2030年の温室効果ガス排出量は全体の50%に達するかもしれない。(注3) 環境破壊・汚染を少しでも食い止めようと思ったら、我々消費者はどうすればいいのだ?ファッション業界の一部も環境汚染については認識していて、最近はサステイナブル(sustainable)ファッションへの転換を謳う会社が増えているようだ。そういった会社の商品を購入するというのも一つの方法だ。 サステイナビリティ(sustainability)という概念自体は古くからあって、世界でも日本でも森林資源、漁業資源、農耕地を枯渇させないために獲ることと再生させることのバランスに注意が払われてきた。このバランスを維持するという方向性を今風のキャッチフレーズで表現するとサステイナビリティ、持続可能性ということになる。この概念を衣類業界に持ち込んだのがサステイナブル・ファッションだ。要するに、原料の取得、繊維・糸の生産、染色・仕上げ、梱包・流通という生産過程のすべてで環境を保護し社会正義に適った方法が取られているよ、という宣言であり運動なのだ。しかし、実際にどこまで実行されているかというのは、現在のところ製造者側の自己申告でしかない。有機農産物に政府のお墨付きが必要なのと同様、サステイナビリティを確認する仕組みが創られないと機能しないだろう。それを目指した非営利団体もいくつかあるようだが。 しかし、サステイナブル・ファッションが普及するにはまだ時間がかかるだろうから、環境保護を考えるのなら当面あまり低品質・低価格のものを頻繁に購入することは避けた方がいいだろう。一番手っ取り早いのは、古くても今着ているもので我慢することだ。 注1 The Apparel Industry’s Environmental Impact in 6 Graphics、by Deborah Drew and Genevieve Yehounme - July 05, 2017、World Resources Institute、オンライン https://www.wri.org/blog/2017/07/apparel-industrys-environmental-impact-6-graphics 注2 Measuring Fashion: Environmental Impact of the Global Apparel and Footwear Industries Study、Qunatis、2018、PDF文書 注3 How Much Do Our Wardrobes Cost to the Environment?、September 23, 2019、The World Bank オンライン https://www.worldbank.org/en/news/feature/2019/09/23/costo-moda-medio-ambiente お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
【処分が20袋??】 私の分だけではそこまでいかないかな~~って思います・・無駄な衣料は山と有るんですけれども★
思うに・・所詮どれだけ保管出来るのかなのでは無いかと思いますね~~日本は家が狭いですからね!! それにしても安い衣料とか・多量に作ってほしくも無いのにね~~消費者は★ 買い物に行っても(こんなん誰が買うの?)って思いますが・・誰も着ないのでは(買わないのでは?!)勿体ないし★無駄過ぎ★★ 着たきりは出来ませんが ファッションよりは着心地の楽さで選ぶようになりました。 結果買う物が少なくなりました☆ (2020.01.23 23:35:10)
そうか、アメリカの家は質はともあれ広いものが多いですから、それだけ保管できたということですね。確かに我が家は部屋数はたくさんありましたが、みんな物置でしたね。30年間あまり捨てずにきたわけだ。
>ファッションよりは着心地の楽さで選ぶようになりました。 結果買う物が少なくなりました ほんとうにそうです。ピタッとしたジーンズとかはもう絶対に着ません!格好はもうどうでもいい。父が70歳ごろ、僕が野暮ったい格好をしているのを見て、最初は馬鹿にしていましたが、その内自分自身が古着とかを買ってアメリカ化してました。 (2020.01.24 04:27:44) |
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