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アメリカ時間7月9日、米最高裁(Supreme Court of the United State, 略してSCOTUS)が、トランプ氏(一部は彼の家族の財務情報も含む)の財務情報開示に関して二つの重要な判断を下した。
たとえ大統領であろうと財務情報開示を拒否することはできないとする、一つは民主党多数の議会そしてもう一つは連邦地検ニューヨーク郡の検事たちの要求に対して、裁判という手段で抵抗してきたトランプ氏とその陣営、その対決の結果は、僕の解釈では引き分けだ。 一方で、大統領と雖も絶対の免責で守られているわけではないと最高裁が判断したことは、原則としての開示要求側の勝利だ。しかし、実質的あるいは短期的に見ると、トランプ側の勝利である。なぜかというと、今年の11月の大統領選までにトランプ氏の財務情報が国民の目に触れることは、時間的に見て恐らくないだろう。同様に、11月までにトランプ氏が脱税あるいは政治資金規正法違反などの罪で告訴されることもないだろう、と予想できるからだ。つまり、財務情報を開示を強いられる前に、そして会計上の罪で告訴される前に、トランプ氏は大統領選を迎えることができ、あわよくば勝利することができる。再選されてしまえば、今まで同様、嘘と権力の濫用であと4年を乗り切ることができる。そう読めば、この最高裁の判断は原則論で負けたもののトランプ氏側の実質的な勝利ということになる。つまるところJustice delayed, justice denied、遅すぎた正義は、正義が拒まれたと同じことだ。 二つの最高裁判断について簡単に紹介しておこう。判決を精読したわけではないし、法律的な知識も不足しているので、誤読があるかも知れない。 一つは下院(民主党が多数を占める)の3つの委員会から出された、トランプ氏の財務情報などを開示せよと要求する4通の召喚状(に対してのトランプ陣営からの法律的な挑戦)に関する判断だ。召喚状は、トランプ氏や彼の関与する組織の資金や会計を扱う、ドイツ銀行(Deutsche Bank)、Capital One、Mazars USAなどの企業に出されている。 議会の召喚状に対する最高裁の判決は非常に注意深く書かれている。というのも、議会からの召喚状に対してここまで徹底的に拒否した大統領は、ほとんど前例がないらしく、前例がない分最高裁は慎重にならざるを得ない。大統領府と議会は三権分立のカギとなる機関であり、その権力のバランスが崩れることを最高裁は望まない。よって、召喚状に応じるべきかどうかについては、開示要求の目的と内容による。どういう情報開示が妥当かについて最高裁が原則を提示するから、具体的な召喚状ついてはその原則に基づいてもう一度下級裁判所で争え、と判決を下した。つまり差し戻しである。 もう一つは、ニューヨーク州ニューヨーク郡の連邦地方検察が、トランプ氏の財務会計を行っているMazars USAにたいして出した召喚状に関してのものだ。召喚状は、現在進行中の刑事事件、例のトランプ氏が関係を女性たちに口止め料を支払った、その事件に関連して出されている。結論だけ言うと、トランプ氏はこの召喚状には応じなければならないと判断された。トランプ氏の主張した大統領の免責(immunity)は認められなかった。たとえ大統領でも法律の上に立つことはできない、というのが最高裁の結論である。 なぜトランプ氏はこれほどまでに財務情報の開示を拒むのか?トランプ氏の父親の時代から行ってきた数々の脱税が明るみに出るから、トランプ氏と海外(特にロシア)の企業や政治家との財務的なつながりが暴露されるから、トランプ氏が自分で吹聴するほど経済的に成功してこなかったことが国民に知られてしまうから、などの憶測が飛び交っている。このうちのどれか(あるいはいくつか)が真実であると仮定すれば、それが白日の下に晒されることはナルシシストのトランプ氏には耐えられないことだろう。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2020.07.11 05:34:54
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