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アメリカでの超過死亡とCOVID-19の関連についてCDCのレポートが出ているので、要約してみる。( CDCのレポートのリンク)
「超過死亡(excess death)」とは、歴史的平均に基づく死亡者数に比べて何らかの事情(現在の文脈ではCOVID-19の影響)で死亡者数が増加した度合いを表す数値。どのように算出するか、その方法については本稿の最後にまとめる。 レポートを発表したのはアメリカ連邦政府のCDCという機関、正式名称はCenters for Disease Control and Prevention、日本語Wikipediaによると邦訳はアメリカ疾病予防管理センターとなっている。クイズに出そうな点が二つ、一つは略語のCDCには反映されていないPrevention(予防)という単語が末尾に付いていること、もう一つ、CDCはおよそ15,000人が従事する巨大組織なので中にはいくつものセンターと呼ばれる部門があり、名称に入っている「センター」は複数形になっている。CDCはセンターやオフィスの集合体である。 レポートの結論を先に言うと、今年の1月26日から10月3日のおよそ8か月間のアメリカの超過死者数は224,173から299,028人と推定される。 超過死亡者数の推移の図をレポートからコピーした。細かい点は無視して二つの波を見てほしい。3月後半から5月後半にかけての第一波、7月中旬から8月下旬かけての第二波がはっきりわかる。 超過死亡者数が過去の平均の死者数に比べてどのくらい多いのか、年齢グループ別にパーセント増加率をリストする。 25歳未満: -2% 25-44歳: +26.5% 45-64歳: +14.4% 65-74歳: +24.1% 75-84歳: +21.5% 85歳以上: +14.7% 人種・民族グループ別の同様の比較も載せる。(アメリカの統計はrace・ethnicity別にとるのが慣例で、この場合のethnicityの用語に該当する主グループは「ヒスパニック」である。スペイン語を話す祖先をもつ人たちのことで、ラテンアメリカからの移民が大部分を占める。ヒスパニックの中には人種的に白人、黒人、アジア系などがいるが、人種の如何に関わらずヒスパニック・グループに算入される。以下、ヒスパニック以外の人種はすべて「非ヒスパニック」とする。またAI・ANはアメリカンインディアンとアラスカネイティブの略。) 白人: +11.9% 黒人: +32.9% ヒスパニック:+53.6% アジア系: +36.6% AI・AN: +28.9% その他: +34.6% これらの数字から読み取れることは少なくとも三つある。 まず、公式な発表ではCOVID-19が原因で亡くなった人の数は216,025(10月」15日現在)とされているが、このレポートの推計からすると実際にはもっと多い可能性がある(224,173から299,028)。どうして公式発表がレポートの推計を下回るか。たとえば、死亡診断書を書く場合に、COVID-19による死亡であってもそれを見落とせば(ウィルス検査が不正確など)公式の発表ではCOVID-19に数えられない。というようなことが考えられる。 二つ目、年齢グループ別の数字から明らかなように、COVID-19による影響は高齢者だけではない。25歳未満のグループを除いたすべての年齢グループで、過去の平均に比べた死者の数が15パーセントから25パーセントくらい増加している。 三つ目は、白人(11.9パーセント増加)以外の人種・民族グループの死者の数が軒並み30パーセント以上増えている点だ(AI・ANは28.9パーセント)。特にヒスパニックの53.6パーセント増加がどうして起きているのか解明される必要がある。貧困率に関係するのか、文化的な慣習に関係するのか、この時点でははっきりしていない。 最後に、このレポートで使われた推計方法について、重要と思われるものだけ見ておく。 超過死亡者数を出すうえで基準になっている過去の平均死者数は、2015年から2019年までの週ごとの死者数をもとにして、統計モデルを使って季節変動などを調整して出された期待値である。統計的な期待値なので推計誤差をともなう。 超過死亡者数を算出するには、<実際の>死者数から過去の死者数をもとに出した期待値を引く、その際一番ありそうな期待値(平均)と最大でもこれくらいだろうという期待値(95%上限値)の二つの場合を考慮した。算出された超過死亡者数のうち299,028は平均期待値を引いた場合、224,173かは上限期待値を引いた場合である。 上の段落で<実際の>と括弧を付けたのは、死亡者数の統計は常に時間的な遅れがあり、遅れ分を埋めるために統計的な処理をしているため、厳密には実際の数字ではない。また、この遅れの度合いは死亡統計を管轄する地域(全部で53ある)によって異なり、よって遅れを埋めるための調整は地域ごとに行われる。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2020.10.22 20:42:41
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