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一語楽天・美は乱調の蟻

2021.01.02
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「自分は音楽家ではない」と自認していたはやり歌作家・筒美京平が、海外のヒット曲のおいしい部分を日本に移植していたことは、いくつかのインタビューで明言していることなので、驚くべきことではないのだろう。しかし、僕がベスト5に考えていた「東京ららばい」(すでに第4位にランク済)と「たそがれマイラブ」(これは2位にと)の2曲に部分移植があったことは、まるで知らなかった。

「東京ららばい」のイントロが、アニマルズの1965年ヒット「悲しき願い(Don't Let Me Be Misunderstood)」に似てることは前々回で指摘した。ところが、例の京平友達に新たに聞かされたのは、1977年にサンタ・エスメラルダがカバーした「悲しき願い」に「東京ららばい」がよく似ているという話だった。

ユーチューブでサンタ・エスメラルダを聴く

何ということだ、イントロだけではなく「東京ららばい」のフラメンコ調はここに由来していたのだ。上に載せたユーチューブのリンクで4分40秒あたりで聴ける間奏部分での、リズムセクション(パルマあるいは手拍子とコンガか何かの打楽器)とフラメンコ・ギターの掛け合い、これも「東京ららばい」に巧みに取り入れられていた。この枠組みの中に京平さんのメロディが入っていたとは。

そして大橋純子の「たそがれマイラブ」だ、彼女の抜群の歌唱力とシティポップの洒落たサウンド、この曲についてこんなブログを見つけてしまった。
もうイントロからいいんだなあ。さすがは日本が誇るメロウ・マエストロ、筒美京平。弾力性に富んだギターリフや反復性が癖になるリズムパターンがその数ヶ月前に出たカーリー・サイモンの「You Belong To Me」(オリジナルはマイケル・マクドナルド在籍時のドゥービー・ブラザーズ。77年作)の影響下にあることは、この辺の洋楽事情をかじったファンなら容易に指摘できそうなポイントですが、当時はほら、そんな知識もないからさ。松尾潔さんのブログ
知らなかったよなー、カーリー・サイモンの「You Belong To Me」というのは聴いたことがなかった、彼女の「You're So Vain」は知っていたんだけど。早速、ユーチューブで聴いてみると、松尾さんは控えめに書いているんでしょうが、これは「影響下」というよりもう少し強い表現をしてもいいかもしれない。

ユーチューブでYou Belong to Meを聴く

ベースの8分音符でラシドド#レ(Amのキーに移した)で始まり、その後のリズムがタンタンタタタが「たそがれマイラブ」のイントロに似てはいるが、微妙に異なっている。「たそがれ」では、ラシドド#レの代わりにミソソ#ラに移してかつ8分音符を一つ減らしてはいる。「You Belong」のベースが頭から入っているところを、「たそがれ」では裏拍子から入っているためだ。加えて、ベースの落ち着くところが、「You Belong」ではDmの和音(サブドミナント)だが、「たそがれ」ではAm(トニック)という違いがある。「たそがれ」のベースのイントロは頭だけで、そのあとはエレキギターとユニゾンでコードを変え、それに合わせてメロディを移して進んでいく。更に、「You Belong」の方は歌が始まるとDm-E7-Amというコード進行が繰り返されてごく普通に進行するのに対して、「たそがれ」ではAm-Dm-Am-E7(1度目)、Am-Dm-G-C(2度目)というイントロの後、主旋律「今は夏・・・」がB7で始まり「そばにあなたの匂い」がE7-Amで落ち着く、というかなり凝ったことをしている。

もちろん「たそがれ」の曲構成は「You Belong」よりずっと凝っている、AABAという紋切りのパターンではなく、最初のAの次に来るのは同じコード進行ではあるがAのヴァリエーション、A'の4小節、そしてBの4小節が来て、再びAのコード進行にもどるがまた別のヴァリエーションA''を挿入してサビに流れ込む。シンコペーションがあちこちにちりばめられている。A'の「幸せな夢に」では「ゆーめーに」や、Bの「白い稲妻連れて」でも「(いな)ずーまーつ(れて)」など。このあたりは京平さんの真骨頂で軽やかさを際立たせている。サビではよく見かけるコード進行、(Amのキーで言うと)Dm7-G7-Cmaj7-Fmaj7-Dm6-E7-Am、を使っている(たとえば、「別れの朝」のサビ)。

アイディアを「You Belong」から借りてはいるが、総体的に見て「たそがれ」は筒美京平の曲になっている。それも傑作と言っていいと思う。

ただ問題なのは、僕自身の複雑な気持ちだ。「東京ららばい」や「たそがれマイラブ」のどこを僕が好きかというと、「ららばい」のフラメンコ調やイントロ、あるいは「たそがれ」のイントロと基調のリズム、これらが大きな比重を占めていることは間違いない。この部分が海外の曲のコピーだとすると、僕はいったい何を愛してきたのか、という、まるで自分の愛してきた女性が実は整形していたのだとわかった時のような、混乱に陥れられる。僕は筒美京平の音楽を愛しているのか、彼が参考にした元の海外のヒット曲を愛しているのか、あるいは彼のコラージュの能力を愛しているのか。

筒美京平の曲をあれこれ聴き、インタビューを見、についてのブログを読み、彼の素晴らしさ(たとえば歌い手の声に合わせて曲を作る、どうやったら売れるかを考えて常に進化し続ける、ヒット曲作家の限界も認識していた、など)がよく分かった。と同時に、彼の作った個々の曲について評価するより、そのコラージュ、編集、編曲の能力に光を当てる方がずっと面白い、というように見方を変えた。僕のベスト5も一応第2位まで来たが、その先は1位だ2位だというより、「魅せられて」のイントロのエーゲ海編曲、「人魚」のサビの格調、「木綿のハンカチーフ」の青春小説に合わせた紋切り型ではない構成、「雨だれ」のピアノの合いの手、「飛んでイスタンブール」でトルコ人もびっくりの「イスタンブール」のアクセント「私たち」を岩崎宏美のコンサートの最後で歌われた時に感じる一体感の創出、「野生の風」で今井美樹を最大限に輝かせるゆったり感、「お帰りなさい」や「心の指紋」でシャンソン歌手・クミコが歌う新境地、などなど、これらの部分、発想、切り口の数々を味わうことにしようではないか。






最終更新日  2021.01.02 07:32:42
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