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「懐徳堂で学んだ蟠桃と仲基」を書いた時に、日系アメリカ人のナジタ・テツオという人の「懐徳堂:18世紀日本の『徳』の諸相」を参考にした。そのナジタ氏が2021年1月11日に84歳で他界していた。驚くことに(日米の時差の関係で)その翌日に僕がブログを公開していたことになる。ひょっとしたら僕が彼の本を読みながら文章を書いていた時に亡くなったのかも知れない。奇しくも、という言葉を使いたくなる。御冥福をお祈りする(RIP)。
ナジタ氏は日系二世で両親は広島県出身、漢字の表記は「奈地田」らしい(日本語版ウィキペディアによる)。生まれたのはハワイ州のハワイ島、退職後はハワイ島に戻っていて、亡くなったのもハワイ島のワイメア(カムエラとも呼ばれているようだ)という町だそうだ。吉田玲雄の「ホノカアボーイ」という佳品(映画にもなった)があったが、その舞台のホノカアはワイメアから20キロほどのところだ。 ナジタ氏の専門は日本思想史で、邦訳されているものには「原敬―政治技術の巨匠」(読売選書、1974年)、「明治維新の遺産―近代日本の政治抗争と知的緊張」(中公新書、1979年、講談社学術文庫、2013年)、「相互扶助の経済」(みすず書房、2015年)などがある。1969年から2002年の退官までシカゴ大学教授を務めた。 英語で1987年に「Visions of Virtue in Tokugawa Japan: The Kaitokudo Merchant Academy of Osaka」として出版されたこの本、邦訳が出たのは1992年で、訳者は近世・近代思想研究でよく知られている子安宣邦(こやすのぶくに)氏。僕が読んでいるのは子安氏の邦訳版だ。邦訳の数章を読んだ限りでは、研究書らしく仮説を詳細に裏付けしていく充実した作品で、訳もかなり緻密に訳されている印象を受けた。子安氏の「あとがき」には、訳は数人の研究者(?)が担当し、子安氏が原稿と校正刷りの段階で修正・補訂した、とある。 シカゴ大学ニュースのナジタ・テツオ氏についての追悼記事 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
全くの偶然なのですが、来年度より一年生を対象に教えることになる「歴史総合」の教え方をどうするかについて話していた時に、同僚から、「原敬―政治技術の巨匠」(読売選書、1974年)を紹介されました。どういう文脈でこの本が登場したのかはややこしくなりますから記しませんが、原敬という人が、確かに複雑であることはざっとさらっただけでもわかります。とにかく「明日の授業をどうするか」で手いっぱいではありますが、図書館で探してみたくなりました。
「偶然」というのもいいものです。 (2021.05.14 23:40:04)
まろ0301さんへ
まろさんとは以前も何か偶然があったような。偶然があると嬉しくなりますね。ナジタ氏の文章は、訳の所為なのか読む人間が悪いのか、読みやすいものではありません。ただ丁寧に訳しているなとは感じた次第です。内容についてはまた書こうと思っています。原敬の本、もし読んだらまた感想を聞かせてください。(ちなみに時々お世話になる東京都中央区の図書館を検索してみたら、ありました。) (2021.05.15 02:59:41)
cozycoachさんへ
西宮図書館には、ナジタ・テツオの『原敬』読売新聞社 安田士郎訳 1975 がありました。読売選書 1974 の次の年です。とにかく借りて読んでみます。読み終えましたら、また報告させていただきます。 (2021.05.15 16:18:07)
まろ0301さんへ
ナジタ氏の懐徳堂の本を読み進むにつれて不満が募ってきました。ナジタ氏はほとんど原典を牽かないのです(ここまでのところ)。すると、何を以て彼が次々と断定的な文章を書いているのかわからず、そのため立ち止まることがしばしばで、なかなか読めません。結局彼の主張をそのまま鵜呑みにするしかないのかな、と考えます。まあそれはそれでいいのですが、僕の好みではありません。原敬についての文章はより論理的であることを願っています。 (2021.05.15 16:31:18) |
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