くれーじーくえいる ぶろぐ

2013/04/08(月)19:55

日本のミニチュア特撮の底力を堪能しよう

作品色々見聞録(79)

<←下方からアオリで撮ってみた、前売券特典の巨神兵のカプセルフィギュア。残念ながら蓄光素材のレアカラーではなかったようです(笑)>  アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』等で知られる庵野秀明氏を"館長"に迎え、数々の映画やTVで使用されたミニチュアやデザイン画等の資料の展示を通して日本の"特撮"の神髄を紹介する企画展『館長庵野秀明 特撮博物館 ミニチュアで見る昭和平成の技』。その全国巡回展の最初となる愛媛での展示が本日より愛媛県松山市の愛媛県美術館にて始まりました。開催期間は6月23日までです。なお、愛媛開催に続く第2会場として今年11月から新潟県での開催が決定しています。  すでに巨神兵カプセルフィギュア付前売券を確保済の管理人は、本日1000過ぎに早速松山まで出かけて見に行ってきましたが、実は単に早く見るのだけが目的ではありません。今日からの開催に合わせて、開催を主催する南海放送の本町会館にて松山展オープニング企画『オリジナル特撮短編映画「巨神兵東京に現わる」座談会』が開催されることになっており、管理人も事前申し込みをすませて聴講する予定なのです。  その前にまずは本展を見物するわけですが、本日は1100頃から本展の"副館長"を務める樋口真嗣監督と、『ウルトラマン』のフジ隊員役で知られる女優・桜井浩子氏によるサイン会が館内で開かれるとのことで、そちらもきっちり押さえておきました。おかげで両氏のサインを手に入れるために2,700円もする図録を買っちゃいましたけどね(苦笑)  展示の方は、主にこれまでの東宝特撮映画や円谷プロのウルトラマンシリーズ等で実際に使用された各種のミニチュアやデザイン画等の資料をメインとしており、その中には『メカゴジラの逆襲』で使用された2代目メカゴジラ、『ガメラ2 レギオン襲来』のガメラ、『ゴジラvsデストロイア』のゴジラの実物の着ぐるみもありますが、メカゴジラの方は流石に40年近い年月が経過しているせいか劣化ぶりが凄かったです。また、倉庫風にレイアウトされたスペースには過去のゴジラシリーズ等で使用された飛行機や兵器等のミニチュアが雑然と揃えられ、映画で見た兵器のプロップを実際に見られるというのは実に感慨深いですね。しかし、84年版『ゴジラ』でアップシーン等に使われて話題になったサイボットゴジラが頭部だけ骨組みの状態で残っていたのには少々哀しいものがありました(苦笑)展示の中では『快傑ライオン丸』等で知られるピープロ制作作品についても紹介されていますが、一方で仮面ライダーシリーズやスーパー戦隊シリーズ等の東映特撮作品については触れられておらず、この辺は版権やら何やらの都合もあるのかなと思ったり。  そして、展示の前半まで一通り見た後は、お待ちかねの特撮短編映画『巨神兵東京に現わる』の上映を観覧。そもそも"巨神兵"とは宮崎駿氏の代表作である『風の谷のナウシカ』に登場する巨大人型生体兵器で、作中においてかつて機械文明を滅亡させた"火の七日間"を引き起こしたとされる存在です。かつて劇場版ナウシカで庵野氏がアニメーターとして巨神兵のシーンの作画を手掛けた縁により、宮崎氏の許諾の下、本展覧会の目玉企画として制作されたこの映画は舞台を現代の東京に置き換えて"火の七日間の始まり"を描いたような内容になっており、声優・林原めぐみによる抑えたモノローグと相まって何とも言えない終末感に満ち溢れた世界観になっています。何といっても、前田真宏・竹谷隆之の両氏によってリファインされた巨神兵のエヴァンゲリオンを彷彿とさせるデザインと、劇場版ナウシカでお馴染みの「薙ぎ払え!」を実写特撮で描いた描写は大迫力の一言に尽きます。  映像的には"CGを一切使わない"という制約の下で「ミニチュアでもここまでできるのか」と思わせるほどの緻密な仕上がりになっており、上空から東京を俯瞰する映像すら実景ではなく模型(森ビルが所有する大型都市模型を使用)というのには驚きました。しかし、冒頭の実景を除いては動く人間を一切出さないというコンセプトの下、巨神兵を呆然と見上げる人々の姿を写真の書き割りで作るのはともかく、巨神兵に向かって吠えかかる犬までぬいぐるみ改造の装演というのは少々やりすぎな感もしました(笑)その後の座談会でもこの辺の裏話は大いに笑いを誘っていました。その他、従来のような着ぐるみ演技ができないデザインである巨神兵を文楽にヒントを得て外部から装演するとか、従来のように石膏製のミニチュアビルを火薬で吹き飛ばすのではなく現代のガラス張りのビルを火薬を使わずに崩壊させるアイデアとか、アナクロ的に思われがちな特撮技術に新しいアイデアを取り入れた部分もあり、本展の目玉企画に相応しい意欲的な実験作であるといえます。また、鳥居の向こうに見える巨神兵の姿とか、巨神兵のプロトンビームで奧から地面ごと吹っ飛んでいく街並みとか、往年の東宝怪獣映画のどこかで見たようなワンシーンが散りばめられているのも実に巧みです。ちなみに、爆発音が昭和時代の東宝特撮映画やウルトラシリーズで使われていたSEだったのが個人的に気になりましたが、後で座談会の席上で樋口監督に直接訊いてみたところ、どうやら音響スタッフの趣味だったようです(笑)  しかし、当初の絵コンテで巨神兵が収められた施設の描写があったりした所を見ると、個人的には是非長編映画として改めて作ってほしいと思う反面、長編映画として作るのに耐えうるストーリーを作るのは難しいんじゃなかろうかとも思ったりするわけです。また、CGなしでもここまでの映像が作れるということは、逆に考えると今やミニチュアセット等に予算をかけなくてもCGで同等以上の映像が作れることを改めて浮き彫りにしているわけで、この辺に今の日本のミニチュア特撮の置かれた現状が窺えるともいえますね。  ひとまず本展を見終えた後は一旦現場を離れて市内で昼飯を食って時間を潰し、1400から南海放送本町会館にて開催される座談会の聴講に赴きました。この座談会では映画を監督した樋口真嗣氏と(株)特撮研究所の尾上克郎氏・三池敏夫氏の3氏を迎え、前半は世界と日本の映画史における特撮の歴史について紹介、後半は『巨神兵東京に現わる』の企画から制作に到るまでの裏話が語られましたが、前半の世界と日本の特撮史については本展でも一コーナーを設けて紹介していいのではと思うほどの興味深い内容でした。また、プロジェクターで紹介する資料に使われている往年の特撮映画の映像やら細々したワンカットやらが一々ツボにハマって場内は終始爆笑の渦でした(笑)  上記の通り昼からサイン会があったため、展示の終わり間際は少々駆け足で見るハメになってしまったのが少々心残りになりましたが、一番楽しみにしていた短編映画『巨神兵東京に現わる』はしっかり見ることができたのでひとまず満足です。東京での展示は見られなかったので、それと比較して規模的な大小の差はわかりませんが、個人的には子供の頃に見た怪獣映画やウルトラシリーズで画面を彩ったSF兵器のミニチュアを実際に見ることができただけでも充分に楽しめました。ただ、今回はやはり少々駆け足ですませてしまったので、その内何とか暇と金を作ってもう一回くらい見に行った方がよさそうです。

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