カテゴリ:映画の話
■世評高い映画です。クリント・イーストウッド監督。 イラクとの戦争で活躍した「伝説」と呼ばれるスナイパーが主人公。実在の人物です。 なにしろこの人物、スナイパーとして160人の敵を殺害しています。アメリカでは大変な英雄らしい。 彼の自伝をもとに映画は作られていて、彼の言う「この世には羊と狼と番犬しかいない。自分は狼から羊を守る番犬になる」「蛮人から同胞を守った。敵を殺した行為は神にも説明できる」という主張をそのままなぞっています。 ■ところが映画はこの人物から一定の距離をとっており、彼の主張がいつしか空回りしていること、自身が人格に一貫性を持たせるために相当無理をしていることを描きます。 要するに、彼の単純な愛国心が偏狭なものでしかないこと、彼自身が戦争の犠牲者だったことを炙りだすわけです。 ■まあ、はっきり言って、このあたりの描き方はステレオタイプです。 表の単細胞な人物像も薄いし、裏の相対化もありきたりですね。。。 主人公に相応の演技力があればよかったのでしょうが、残念ながらそれもありません。 イーストウッド監督の特徴ですが、テーマを前面に押し出すことをせず、淡々としたドラマ表現として裏の事情を見せていくので、嫌味には感じませんでしたが。 ■ところが、アメリカ本国では、大ヒットした上で「戦争を正当化している」という批判が起きているそうですね。 それがようわからん。どこが戦争の正当化だ? この分かりやすい図式の映画を戦争の正当化だと観るのは、相当単細胞な人か、あるいは相当ひねくれて深読みする人たちではないか。 あえて言うなら、こんなステレオタイプな反省で、この巨大な問題を総括するな!という批判でしょう。 ■そんなわけで、世評ほど衝撃を受ける内容ではありませんでした。 ちなみにイーストウッド監督の落ち着いた作風は今回も健在で、盛り上がりもない変わりに、最初から最後まで緊張感が落ちません。 当初予定していたスピルバーグ監督なら、もっと盛り上げる場面を作ったでしょうが、どこかで破綻していたでしょうね。いつものように^^; 以前観た「チェンジリング」といい、イーストウッド監督は、実話ベースの物語を描くのは上手いなーと思います。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
March 27, 2015 11:22:26 AM
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