MAMA's murmur

2013/09/06(金)01:51

僥倖 [9]

男と女の世迷い言(創作)(91)

☆☆ これは、『創作』のカテゴリーです。「成田山詣」から始まる続きものです。ある男とある女、ある男に食らいついて離れないおばちゃん、その他の絡みあ。ドロドロしたお話しです。☆☆ チェーン店のお好み焼き屋は夕飯時とあって、待ち合いには3組の客がいた。 20分ほど待たされて席に通されるとすぐに、ラブリーの子供達が合流した。 独立したての長女もちょうど遊びに来ていたので計5人の夕食になった。 「もんじゃもんじゃもんじゃ!」 「めんたいもちチー!」 「相変わらず賑やかですな。」とはしゃぐ子供達に目を細めるウィニー。 みんなビール、ラブリーだけがソフトドリンクをオーダーした。 「中生3、コーラ1で。ぽんぽこぽん!」 「え?なに、今の…」とウィニーとラブリーは顔を見合わせた。 「ここのチェーンは『ぽんぽこぽん』が返事なの。」と娘の一人が言った。 「オーダーする度に『ぽんぽこぽん』って言うんだよ。居酒屋の『喜んで』みたいなもんだよ。あ、マミー達はチェーン店はあんまり行かないからわかんないか…。」 「へぇ…、あなた知ってる?」 「『喜んで』は知ってたけど、最近も言ってるのかな…あれはバブル期の悪しき伝統みたいなもので、最近流行らないね。でも『ぽんぽこぽん』には驚いた。」 3つ目のもんじゃを焼き始めたところでウィニーが言った。 「みんなに発表せねばならないことがあります。」 一瞬、他の4人がしんとする。 「改まって、なに…?」 何かを発表することなど、ラブリーも聞いていない。 「子供達には言っておいたほうがよいのでは?」 「まだ早くない?」 子供達3人が不思議そうに顔を見合わせる。 「籍でも入れるの?」 「まあ、そういうことにもなると思うんだけど…実は…」 「なになに?」 「早くしてよ、焦げちゃう。」 「別に反対はしないよ。」 「実はお母さんは…」 「だからなに?」 「にんしんしました。」 テーブルの上を天使がターンしながら通り過ぎた。 静寂。 回りのテーブルの鉄板を擦る音、グラスのぶつかる音、ガヤガヤざわざわというはっきりとは聞き取れない話し声、笑い声… ラブリー達のテーブル以外では時間が時間通りに時を刻んでいる。 「も一回言って?」と末娘。 「やだ、聞きたくない。」と長女。 あんぐりと口をあけた長男。 「あかたんができました。」 ラブリーの一言でこのテーブルも再び平常の時を刻み始めた。 「産むの?」長女が真剣な面持ちで聞いてきた。 「実はね、俺達、ずっと不妊治療に通ってたんだよ。」 「知らんかったわ。」と末娘。 「それって、お金かかるんでしょ?」と長男。 「排卵なんとかとか、使ったわけ?私、双子がいいな。」と長女。 「五つ子は多過ぎるよ、身体も弱そうだし。で、何人なの?」と長男。 「みんな、キョージュに子供がいないの知ってるわよね?それでマミーはどうしてもあかたんがほしかったの。でも治療に行ってる時はできなかったの。」 「あきらめて、治療はやめたんだよ。」 「そしたら…神様にお任せしたら、できたの?」 「そういうことね。」とラブリーはニッと笑った。 「じゃあ、産まなきゃダメだよ。」 「ああ、そのつもりだよ。だから籍もきちんとしようと考えてる。」 「じゃあ、乾杯だね!」 「反対意見はないかな、俺でいいですかねぇ?」 「いいも、なにも。マミーが選んだ人なんだから。ただし、子供達を代表してお願いがあります。6ヶ月になったら、染色体の検査だけはちゃんと受けてください。」としっかり者の末娘が言った。 「それは俺達も同意見だよ。避けられる不幸は避けるに越したことはない。」 「あなた達にも迷惑かけちゃうしね。」 「そういうわけで安定期に入るまではお母さんのことを気遣ってほしいんだ。」 「了解です。俺も注文つけていい?」と長男。 「俺さあ、味方がほしいんだよね。今度は弟がほしい。」 「喜んで、ぽんぽこぽん!」ラブリーとウィニーが同時に言った。 [つづく]

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