2008/03/16(日)15:00
『4ヶ月、3週と2日』 (2007) / ルーマニア
原題: 4 LUNI, 3 SAPTAMANI SI 2 ZILE/4 MONTHS, 3 WEEKS AND 2 DAYS/4 MOIS, 3 SEMAINES, 2 JOURS
監督・脚本 : クリスティアン・ムンジウ
出演 : アナマリア・マリンカ 、 ローラ・ヴァシリウ 、 ヴラド・イヴァノフ 、 ルミニツァ・ゲオルジウ
鑑賞劇場 : 銀座テアトルシネマ
公式サイトはこちら。
<Story>
1987年の冬のある日、チャウシェスク政権下のルーマニアで、大学生のオティリア(アナマリア・マリンカ)は寮のルームメイトのガビツァ(ローラ・ヴァシリウ)とせわしくなく動き回っていた。
寮を出たオティリアはホテルへ行くが、予約が入っていない事を知り、仕方なく別のホテルを取る。
またガビツァの代わりにある男(ヴラド・イヴァノフ)に会う事に。
実はガビツァは妊娠しており、オティリアはその違法中絶の手助けをしていたのだ。
しかし思うように事は進まず、オティリアの苛立ちはつのっていく。
4ヶ月、3週と2日 - goo 映画
<感想>
この日の2本目。 シャンテから移動して鑑賞。
日曜の最終回だったためかそんなに混雑はしていませんでしたけど、まあまあの入り。
ここでしか上映してないからでしょうか??
重いテーマということは重々承知で観てきました。同じ女性としてこれは観なければいけないかなあと思いまして。
始めはシチュエーションがわからないままストーリーが進む。
全編にわたる、何ともいえない重苦しい無彩色な映像と、
どことなく投げやりな登場人物たちの言動に、チャウシェスク政権下の閉塞感を感じ取ることができます。
この時代、女性たちは中絶は禁止。
そして3人~4人以上子ども達を生むことが強制されていました。
国力増強のため、それこそ女性たちは「産む道具」だった時代。
今からわずか20年前、オティリアとガビツァのいる大学の女子寮にいた女子学生たちは、
どこかうつろで先に夢も希望もない様子でした。
そして彼女達の間でも、望まない妊娠に対しての中絶は秘密裏に行われていたようです。
(C)Mobra films 2008
もし違法な中絶が見つかったら罪に問われる時代だけに、
どうやってそれを行う医者を見つけるのか、そしてどこで中絶するのか、
それは死活問題だった。
どこに行っても監視されている時代にそれをやってのけるのは至難の業だったに違いない。
望まない妊娠をしてしまったルームメイトのガビツァ(写真右)の手助けをするために東奔西走するオティリア(写真左)。
中絶場所として指定されたホテルの予約も、医者との合流もうまく行かないことだらけで、
それは全て当事者であるガビツァの責任のはずなのに、
ガビツァは責任などないといった風・・・。
それはないだろうと思うのは日本的な感覚なのかもしれません。
それぞれの失敗はやがて、オティリアに、一生かかっても消えない心の傷を残すことになる。
そこまでして助けてくれたルームメイトに対して謝罪しないどころか、
指示を守らず、自分勝手な行動に走るガビツァ。
一体これはどうなっているんだろう?
オティリァはガビツァを非難こそすれ、彼女を決して見捨てないのは何故だろう? と観ていくうちに、
彼女たちが置かれている環境がそうさせるんだなと思いました。
結局、明日は立場が逆転するかもしれないわけです。
自分が中絶することになるのかもしれないから。
そうなった時に助けてもらうために、殺伐とした選択をしないといけないわけで。
自己保身に走り(まあ、バレたら大罪なんだからしょうがないとは言え・・・)、
助けるどころか女性を蹂躙した闇医者ベベ、
そしてオティリアの恋人の、保守的で身勝手な考え方などを取ってみても、
たった20年前のルーマニアの女性たちには絶望感しかなかったのでしょう。
そんな事実を、言葉少なに、
暗い映像でドキュメンタリータッチに描いた作品でした。
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今日の評価 : ★★★★☆
(どうしようもないチャウシェスク政権下の事実、そして太古から続いている女性への偏見と蹂躙。
そしてそれに懸命に立ち向かおうとしている姿がありました)