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テーマ:映画館で観た映画(8342)
カテゴリ:洋画(わ行)
原題: MEIN FUHRER - DIE WIRKLICH WAHRSTE WAHRHEIT UBER ADOLF HITLER 監督・脚本 : ダニー・レヴィ 出演 : ウルリッヒ・ミューエ 、 ヘルゲ・シュナイダー 、 シルヴェスター・グロート 、 アドリアーナ・アルタラス 、 シュテファン・クルト 鑑賞劇場 : ル・シネマ 公式サイトはこちら。 <Story> 1944年12月、連合軍の進攻によりナチス・ドイツは劣勢に陥っていた。 そんな中、宣伝大臣ゲッペルス(シルヴェスター・グロート)は、新年に行われるヒトラー(ヘルゲ・シュナイダー)の演説を成功させ、国民の戦意を高揚させようと試みる。 しかしヒトラーは心身共に衰弱し、自信喪失状態。 そこでゲッペルスは、かつてヒトラーにスピーチ指導をしていたユダヤ人俳優グリュンバウム(ウルリッヒ・ミューエ)を収容所から呼び寄せる。 戸惑う彼だったが、他に道はない。 敵を教える苦悩の中、事態は意外な方向へ…。 わが教え子、ヒトラー - goo 映画 <感想> この日2本目。 昨年、自分の鑑賞映画で第1位だった『善き人のためのソナタ』に出演し、絶賛されながらも、若くして昨年逝去したウルリッヒ・ミューエ。 彼の演技が大好きなので、遺作ともなるこれは鑑賞したいと思っていました。 第2次世界大戦末期、ヒトラーに威厳を取り戻して年頭の演説を成功させるために、演説の指南をした人物が実際にいたらしい。 その設定をユダヤ人に変えたというのが本作品。 ナチスに対抗する勢力側から描かれた映画を観ることは多いのですが、こうして内部事情をさらけ出すようなものは初めてです。 戦局の悪化に伴い、独裁者だって自信喪失したりするのはごく自然なんですが、如何にしてそれを周囲に、国民に悟られないようにしていくのかは、戦意高揚のためにはどこの国だってするものでしょうね。
勝利のためなら手段を選ばない。例えそれが、迫害しているユダヤ人の手を借りなければいけないとしても、ヒトラーが国民を高揚させられるならば。 互いの憎悪を利用させる、ゲッペルスの策略も、人間心理の痛い所を突いています。 ユダヤ人にとっては、憎しみの象徴のようなヒトラー。ですがグリュンバウムは彼に、愛への渇望を見て取ります。 「こんなに愛に飢えているのに・・・」 家族と暮らせない自分たち民族も同じく愛に飢えている。 飢えさせた張本人を救うことが、自分たち家族の愛につながる。しかし民族的には到底それは我慢できない・・・。 グリュンバウムの葛藤が始まります。 グリュンバウムは家庭人として家族を守りたかったと同時に、民族としての誇りも失いたくなかった。それがあのラストにつながっていくわけです。 彼にとっては辛い選択であっただろうし、そうしたとしても果たして家族が安泰だったかどうかはわかりませんが・・・。 両方の狭間で悩みながら、だけどヒトラーだって同じ人間だったということを彼は飲み込んで、自分1人で全てを背負って行ったのでしょう。 彼の任務が終わった後、一体彼はどうなるのかと、この映画を観ながら自分は考えていて、わかってはいるんですが無慈悲な立場を見るのはちょっと辛かったです。 コメディタッチの場面もたくさんあったんですけどね。 それは専らナチスの矛盾を突いたものとなっていました。 エンドロールで、今のいろんな年代のドイツ人達に、「ヒトラーをどう思うか」と訊ねています。 小さい子は「知らない」、年寄りは「言いたくない」「話したくない」と。 そして「グリュンバウムって知ってる?」という質問には、ほぼ100%が、「知らない」「何それ?」という反応でした。 そのくらい歴史に埋もれてしまっている事柄なのですが、こうして脚色して考えてみるとなかなか考えさせられるものがありました。 ウルリッヒ・ミューエの演技。やっぱり好きですね。 彼自身の生い立ちがもう、ある意味現代の東欧史が色濃く影響しているだけに、考え方や演技などにも自然と彼の姿勢が表れているような感じです。 もっと長生きしていただきたかった。 合掌。
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知らなかったです なくなっていたなんて残念。
きっと、ああ!おもしろいと思う作品ではないと思ってましたが、観たいと思ってました それを聞いたらさらにぜひ観に行かなくちゃ。 (2008.10.06 22:07:47)
こんばんは~
そうなんです。昨年お亡くなりになりました。 こういう映画にしては珍しくコメディー系なんですよ。 彼の最後の演技をご覧ください。やっぱり惜しい人を亡くしたと感じると思います。 (2008.10.07 03:46:00)
ココまでナチをおちょくったのは初めてじゃないでしょうか?
個人的にはヒムラーの固定腕がツボでした ミューエさんはやっぱり上手いですね~ もっと色んな作品を見たかったです (2008.10.07 20:48:51)
こんばんは^^
>ココまでナチをおちょくったのは初めてじゃないでしょうか? >個人的にはヒムラーの固定腕がツボでした いろんな「張りぼて」と言いますか、ヒトラーをいかに盛り上げていくかが滑稽なまでにこれでもかと出てましたね。 >ミューエさんはやっぱり上手いですね~ >もっと色んな作品を見たかったです ----- はい。 大変残念ですね。 惜しい人が亡くなりました。 (2008.10.07 21:14:42)
ドイツ物、ナチス物が好きなので、こういう切り口のお話も新鮮で良かったです。
エンドロールのインタビューには私もビックリ。 ドイツにおいても、だんだんヒトラーが忘れられつつあるんですね~。 (2009.02.07 18:32:15)
こんばんは^^
>ドイツ物、ナチス物が好きなので、こういう切り口のお話も新鮮で良かったです。 私もついついチェックしてます。このジャンル。 いろいろな想いがあって、そこから様々なアプローチの映画が作られますね。 >エンドロールのインタビューには私もビックリ。 >ドイツにおいても、だんだんヒトラーが忘れられつつあるんですね~。 ----- そんなに簡単に忘れられるものなのでしょうか? でも戦後60年以上経つと、戦争体験も風化しますよね。哀しいですがそれは日本でも同じなのかも。 (2009.02.07 22:03:53)
ウルリッヒ・ミューエさん・・・私も大好きです。
彼の出演作は「善き人」と「ファニーゲーム」とこれしか観てないのですが なんというか・・・苦労してきた人生の重みが 人柄になって表れているようなかたでしたね。 ほんともっと長生きしてほしかったです。 この作品も彼の遺作というのでなければ手に取りませんでしたが 観てよかったです。 こういう視点からのヒトラーもの,というだけでも面白かったですが やはりミューエさんの演技は感動を呼びますね。 ラストは哀しいですが,静かなカタルシスも感じました。 (2009.06.07 22:53:32)
こんにちは~
>ウルリッヒ・ミューエさん・・・ >苦労してきた人生の重みが >人柄になって表れているようなかたでしたね。 >ほんともっと長生きしてほしかったです。 東独のご出身ということで、波瀾の人生だったようですが、それがかえって俳優としての彼の魅力にもつながっていたような気がしました。 『善きソナ』とこれしか観ていないのですが、もっと彼の演技を観たかったなあ。。。 合掌。 >こういう視点からのヒトラーもの,というだけでも面白かったですが >やはりミューエさんの演技は感動を呼びますね。 >ラストは哀しいですが,静かなカタルシスも感じました。 ----- 実際にこういう形でナチスと関わりを持った人は稀だと思いますが、逆の視点で作ったところは非常に興味深かったです。 ミューエ氏ならではの演技の味だったと思いました。 (2009.06.08 08:09:22)
ナチスを扱った作品でした。
コメディタッチではあるけれど、静かに見えてドラマがあって・・・ 観終わって暫く経つのに、余韻がかなり後まで消えていません。 『ヒトラーの贋札』も、それまでとは違ったタイプの作品だと思い、もちろんこれとは違うアプローチなんだけど、 主人公が究極の選択の中で葛藤してゆくところなど、 似た視点で作られていると思いました。 ウルリッヒ・ミューエの作品、本当にもっと観たかったですね。 でも、本当にいい作品に出演されていて、 わたしたちを含め、きっとずっと忘れない方々が多いでしょうから、 それがせめてもの慰めかもしれません。 (2009.09.25 21:19:54)
こんにちは~
>これまでに観たことがないナチスを扱った作品でした。 >コメディタッチではあるけれど、静かに見えてドラマがあって・・・ 人道的にいけないいけないと叫ぶだけではなくて、それをいろんな角度から眺めることができた映画でしたね。 >主人公が究極の選択の中で葛藤してゆくところ 戦争という極限状態だからこその設定になってしまいます。 >ウルリッヒ・ミューエの作品、本当にもっと観たかったですね。 >でも、本当にいい作品に出演されていて、 >わたしたちを含め、きっとずっと忘れない方々が多いでしょうから、 >それがせめてもの慰めかもしれません。 ----- 私も彼は『善きソナ』で知りました。 こんなに素敵な俳優さんがいたなんて、生きてたらもっと秀作に出てくれたかと思うと残念です。 確かに忘れられない俳優さんですね。 (2009.09.27 17:15:27)
rose_chocolatさん、こんにちは~♪
ウルリッヒ・ミューエ、本当に良かったですよね~。つくづく惜しい人を亡くした・・と思いました。 「善き人・・」の時よりも、なんとなくお元気そうなお顔に見えたんですが・・残念です。 仰る通り、コメディタッチながら、ナチスの矛盾を、ヒトラーのオカシサを上手く突いて作ってありましたよね。こういう切り口で、こんな風に描いてあると、面白くもあり、悲惨さが別の形で上手く伝わり、良く出来た映画だったなぁと思いました。 (2010.01.20 09:03:18)
こんばんは~
>つくづく惜しい人を亡くした 本当に。 映画界の損失です。 もっとたくさん彼を観たかったです。 >コメディタッチながら、ナチスの矛盾を、ヒトラーのオカシサを上手く突いて作ってありましたよね。こういう切り口で、こんな風に描いてあると、面白くもあり、悲惨さが別の形で上手く伝わり、良く出来た映画だったなぁと思いました。 ----- 真正面から残虐なことを取り上げた映画は多くありますが、こうして別の視点からシニカルに取り上げたのも、彼らの惨さを浮き彫りにさせていました。 (2010.01.20 21:07:12) |