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テーマ:試写会で観た映画の感想(678)
カテゴリ:洋画(あ行)
原題: EL ORFANATO/THE ORPHANAGE 監督: J・A・バヨーナ 出演: ベレン・ルエダ、フェルナンド・カヨ、ロジェール・プリンセプ、 ジェラルディン・チャップリン、マベル・リベラ 試写会場 : 一ツ橋ホール (2008年12月20日公開) 公式サイトはこちら。 <Story> 海辺にある孤児院で、仲の良い友達と幸せな子供時代を過ごしたラウラ。 あれから30年、ラウラは夫の医師・カルロスと7歳の息子・シモンと共に、 長い間閉鎖されていた懐かしい孤児院を、障害を持つ子供たちのための施設として再建したいという夢のために、買い取り移り住んでいた。 シモンは、その神秘的な館の中で創造力を膨らませ、独自の空想の世界を楽しんでいた。 だが、施設の開園を間近に控えたある日、入園希望者を集めたパーティの間に、シモンが忽然と姿を消してしまう…。 シモンを探すうちに、ラウラはこの館に潜む目に見えない何かを感じ始める――。 (cinemacafe.netより) <感想> 試写状を譲っていただくことができ、行って来ました。 これはギレルモ・デル・トロ監督プロデュースということで、 『パンズ・ラビリンス』は未見な私としては、テイストがわからなかったらどうしよう・・・ とちょっと心配でしたが、そんなこともなく、映画に引き込まれていきました。 もう設定からして怖そうです。 孤児院、古びた洋館ですもん。 フィルムの感じも、いかにもこれから何か起こりそうだよ。。。 という雰囲気です。
子どもの持つ無邪気さ、残酷さ、したたかさは、子ども特有の純粋さと掛け合わせれば、 大人では想像もつかないような行動になってしまうことが間々ある。 それが、この物語の遠い発端なのであるのだけれど。 「見えないものが見える」という感覚は、それ自体があまりにも現実離れしているため、 大人であれば笑い飛ばしたり、ごまかしてすり替えててしまいがちだが、 その奥に、スピリチュアルな世界を汲み取ることができるのも、 子どもならではの「研ぎ澄まされた勘」なのだろうか。 「霊」というものを考える時、 それは、「念」そのものだといつも思う。 この世に生きているものの念、そして死者の念。 念じて、それが叶えばいいのだけれど、 叶わなかった願いは、その念自体が乗り移ってしまうような「超常現象」のようなもの、 言葉では説明できないようなものも、 この世の中にはあると、私は個人的には思っている。 それにしても。 こと、子どものこととなると、母親というものは変貌するのだなということを、 この映画でまざまざと見せつけられてしまう。 実際に私自身、母親であるのだけれど、 果たして、子どものためにどこまで自分を投げ出せるかと問われると、 正直、答えに窮してしまう。 でも、実際に子どもが困っていたら、絶対に見捨てないで助けてやろうという気持ちはもちろんある。 その場合も、どこまで助けてやればいいのか考える。 手を出し過ぎてもいけないし、肝心な時に肝心なことがフォローできてなければ意味がない。 ラウラにはラウラの事情があって、シモンをフォローできなかった。 でもそのできなかったフォローこそが、シモンが最も必要としていたものだとするならば。 噛み合わなかった、たった一瞬の気持ちのズレが、 その後の悲劇へと結びついて行ってしまう。 なぜこんな事態になったのか。 子どもがトラブルに巻き込まれたら、親は当然としてその時点まで遡る。 記憶をたどって、子どもが必要としているものを探しに行く旅。 それは、実際に子育てしている人ならば、自然と誰でもやっていることだろう。 だがしかし、あまりにも子どもばかりを深追いするあまりに、 "point of no return"、帰還不能な地点まで行きついてから、 初めてそれが行き過ぎだったことに気がつくのも、親のやってしまいがちなことでもある。 もしかしたら、自分がそんな自体に陥ってしまって、 親子ともども引き返せなくなっていることにすら、 子どもに夢中になっている時にはわからないものかもしれない。 私はどうなってもいい・・・。 子どもさえ助かれば。 そんな想いが、女には、動物の本能として備わっている。 「あなたは強い母親よ。シモンのためにどこまで行けるかよ」という、 女霊媒師(→ チャップリンの娘さんだそうです)の言葉。 果たしてどこまで、子どものために自分を犠牲にできるのか。 見えないものを見て、子どもたちの叫びを聞いてしまったら、 もう後には戻れなくなってしまうのだろうな。。。 と、 本能としての自分と、現実の自分との境界について、考えさせられた作品でした。
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こんばんは~
>タイトルはなにかメルヘンチックなものかと思ったら、少々怖そうな映画なのですね~!! ----- かなり、怖いです。 寒気がしながら観てましたよ。。。 (2008.11.26 21:26:46)
こんばんは~
>楽しみにしている映画です >「パンズ・ラビリンズ」もおもしろかったですしね >早く行きたいな♪ ----- 天国の口さんはきっとお好きだと思います。こんな映画。 深くてちょっと切ない。でも怖いですよ。 (2008.11.28 03:07:58)
相変わらずいつも沢山先取りで観てますね♪
これ気になってるの、早く観たいー♪ ★の数多いですね、観たらまたおじゃまします。 ラースのレビューも待ってますね。 (2008.12.03 23:16:49)
こんにちは~
>相変わらずいつも沢山先取りで観てますね♪ いえいえmigさんほどでは。。。w >これ気になってるの、早く観たいー♪ >★の数多いですね、観たらまたおじゃまします。 私はなかなかよかったと思いました。ちょっと怖かったけど^^; >ラースのレビューも待ってますね。 ----- はーい、書いたらまたお邪魔しますね。 (2008.12.04 11:51:19)
早速きました~♪
>言葉では説明できないようなものも、 この世の中にはあると、私は個人的には思っている わたしもそう。 霊的な世界の存在あると思ってます。 色んな部分がよく出来てる映画でしたよね~、 本当、母親の愛の力強さ。 凄いです。 もう一度観たいなぁ。 (2008.12.21 14:06:07)
こんにちは~
>早速きました~♪ ↑にも、コメントお書き下さってましたものね。この映画を楽しみにする気持ちってわかります。そしてその通りでしたね^^ >>言葉では説明できないようなものも、 >この世の中にはあると、私は個人的には思っている > >わたしもそう。 >霊的な世界の存在あると思ってます。 理論理屈だけでは説明できないものってあると思っています。 よくある、超常現象のようなものも、元をただせば人間の「念」そのものなんじゃないかと。 この世にいる間に叶わなかった死者の念が、死してなお、人を動かしているように思えてなりません。 >色んな部分がよく出来てる映画でしたよね~、 >本当、母親の愛の力強さ。 >凄いです。 私自身母親ですし、子に対しての想いはもちろんあるのですが、 究極の場面になった時に、一体どのくらい、その想いは作用するのかなって思いました。 プラス面に働くのならよいのですが、時と場合によっては、大きなマイナスに作用しそうな気もしてね。 その部分での、一種「畏怖」に似た想いも感じました。 >もう一度観たいなぁ。 ----- わかります。じっくりと分析したいような感じですよね~。 (2008.12.21 16:14:29)
チャップリンの娘が演じた霊媒師は
本当にキーパーソンでしたね。 彼女なしではこの映画は成立しなかった ように思えますし、それをチャップリンの 娘が巧く演じていました!! (2008.12.22 16:46:03)
こんばんは~
>チャップリンの娘が演じた霊媒師は >本当にキーパーソンでしたね。 あの言葉が全てでしたね。 >彼女なしではこの映画は成立しなかった >ように思えますし、それをチャップリンの >娘が巧く演じていました!! ----- お父さんの面影もしっかりとありましたし、堂々とした役でしたね。 演技を拝見したのは初めてでしたが、素敵な女優さんでした。 (2008.12.22 20:35:16)
これ実はホラーって知らなくて観に行ってしまいましたの。
結構怖かったですよね。何度か指の間からスクリーンを観ちゃいましたわ。 >私はどうなってもいい・・・。 子どもさえ助かれば。 そんな想いが、女には、動物の本能として備わっている... 同感です。子供が助かるなら命も捧げるでしょうね。 チャップリンの娘ジェラルディンのオカルトおばさん似合ってました。 (2008.12.30 21:14:12)
>こと、子どものこととなると、母親というものは変貌する
全くですね。 しかしながら、これは神が彼女に課した宿題のようにも思えました。 そう、永遠の子らに会うべくシモンが遣わされたのだと。 私も同列3位に選びました^^v 今年はたくさんTBでお世話になり有難うございました! また来年も宜しくお付き合いくださいね~♪ (2008.12.31 21:46:31)
こんばんは~
>これ実はホラーって知らなくて観に行ってしまいましたの。 >結構怖かったですよね。何度か指の間からスクリーンを観ちゃいましたわ。 地下にぽっかりと穴が開いているのを見つけた時はもう、「うわーーー」って思いましたね(怖 >>私はどうなってもいい・・・。 >子どもさえ助かれば。 >そんな想いが、女には、動物の本能として備わっている... >同感です。子供が助かるなら命も捧げるでしょうね。 >チャップリンの娘ジェラルディンのオカルトおばさん似合ってました。 ----- そこまでしたら帰れなくなるってわかっていても、本能ではそうしてしまうんでしょうね。 すごく衝撃的でした。 (2008.12.31 22:25:31)
こんばんは~
>しかしながら、これは神が彼女に課した宿題のようにも思えました。 >そう、永遠の子らに会うべくシモンが遣わされたのだと。 >私も同列3位に選びました^^v これほど残酷な宿題ってないような気もしますよね。 そこがこの映画の何とも言えないよさでもあり悲しさでもあり。。。 でも評価したいです。好きです、この映画。 >今年はたくさんTBでお世話になり有難うございました! >また来年も宜しくお付き合いくださいね~♪ ----- こちらこそありがとうございました。 ランキングお伺いしますね^^ (2008.12.31 22:29:46)
rose_chocolatさん、こんにちは!
こちらはお子さんを持っている女性は感じ方が違うでしょうね。 「腹を痛めた」子供に対する思いというのがあるとおもうので、やはり男性とは違って、あのラウラの必死な行動というものへの共感性というのがあるでしょうね。 それでも僕にも起こったことを知ってしまったラウラの絶望感はひしひしと伝わってきて、ラストは彼女が幸せと感じるならばそれがいいのだろうと思いました。 (2009.01.01 12:47:26)
こんにちは~
>こちらはお子さんを持っている女性は感じ方が違うでしょうね。 ・・・かもですね。 >「腹を痛めた」子供に対する思いというのがあるとおもうので、やはり男性とは違って、あのラウラの必死な行動というものへの共感性というのがあるでしょうね。 共感、というのとはちょっと違うのかな。。。 子どもを助けたいと思うけど、果たしてどこまで自分を捨てられるのかっていうのは考えてしまうかもです。 でも実際にそういう経験をしてみないとわからないのかもしれないですね。なるべくなら、ないに越したことはありませんけどw >それでも僕にも起こったことを知ってしまったラウラの絶望感はひしひしと伝わってきて、ラストは彼女が幸せと感じるならばそれがいいのだろうと思いました。 ----- あの映像を見ている限りでは、それもそれでその人の幸せなんだなってわかります。 ラウラにとっては、現実の生活とか旦那さんよりも、子どもの方が絶対的に大事な存在だったんだもんね。 (2009.01.01 16:52:08)
お邪魔しま~す(^^ゞ
ブロガーさんの人気が高いこの作品、rose_chocolatさんも年間ベストにいれたほどのこの作品なんですが、私にはいまひとつだったみたいです(^^ゞ パンズ~ほど、インパクトはありませんが、すごい 作品だと、よくできているミステリーだとは 思うのですが・・・ 体調のせいかもしれないので、DVDになったら またチャレンジ?します(笑) (2009.01.17 00:10:45)
おはよ~
そうでしたか・・・。 これ、確かに重たいですしね。 この雰囲気的にもう×、っていう方もおられるかもしれないですね。自分もどっちかっていうとホラーはNGですし。 体調は映画鑑賞に大いに関係あるかもしれません。疲れている時は特に(笑 お互い休養を取りましょう!! ^^ (2009.01.17 07:42:22)
最近はスピリチュアルなことでアドバイスを送られる方が番組を持つような時代になっていますが、果たしてあの方たちがこの映画を見たらどのような感想を持たれるんでしょうね。
この映画を見たら、本当の意味での「見る」ということがどういうことなのか分かったような気がしました。 (2009.01.18 15:43:37)
こんにちは~
>最近はスピリチュアルなことでアドバイスを送られる方が番組を持つような時代になっていますが、果たしてあの方たちがこの映画を見たらどのような感想を持たれるんでしょうね。 まあ予想ですけど、それなりに解釈なさって何かおっしゃるとか・・・? 笑 >この映画を見たら、本当の意味での「見る」ということがどういうことなのか分かったような気がしました。 ----- 思うのですが、スピリチュアルなものって、自分自身でしか解決できない問題が多分にあると感じます。 ですので、いくら人にアドバイスを乞うたところで、結局は答えは自分でしか出さないんじゃないかな。 ラウラの結論ってそんなものを感じました。 (2009.01.18 16:01:36)
こんばんは~
お元気でしたか?? >確かに気持はわからないでもないんですよね~。 >でも、なんつ~かちょっと切なすぎでした。 ----- なるほどー。 上にみなさんお書きなのですが、これって、観る人が置かれる環境とか、体調によってもかなりとらえ方が違ってきそうですよね。 万人がハッピーとは感じられないから・・・。 テーマ的にはもう、仕方ないですね。これだけ重たいと。 (2009.01.21 20:43:51)
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本作では母の悔恨と子の願望が結末の幸せな光景を齎したものだとは思いますけれども、よくよく考えてみるとラウラとシモンの母子にとっては悲劇として扱われるべき出来事の連続です。彼らがナニカに魅入られたとするならば、本作に現れる幽的はあどけない笑顔を浮かべて近づいてくるけれども、なかなかどうして恐ろしい存在ではありませんか。 (2009.07.26 19:39:11)
こんばんは~
ご連絡ありがとうございました^^ >ラウラとシモンの母子にとっては悲劇として扱われるべき出来事の連続 すごくこの映画って、観る人によって様々な受け止め方があるなあと思います。 最後は幸せだけどよく考えると悲劇。 特に旦那さんにとってはたぶんそうなんだと思います。 だけどラウラにとっては、幸せだったのかなあとも思えるんですね。 シモンにとっては、どうだったんでしょう? ママと一緒にいるから幸せなのか、お友達と一緒にいるから幸せなのか。 どちらなのでしょうね。 >彼らがナニカに魅入られたとするならば、本作に現れる幽的はあどけない笑顔を浮かべて近づいてくるけれども、なかなかどうして恐ろしい存在ではありませんか。 ----- 現実には、魅入るようなものに出会わない方が、幸せなのかもしれないですね。 (2009.07.26 21:49:10)
どこまでできるか、できてしまうのか、引き返し不能のポイントはどこか・・・
この作品に限らず、子育てをしている時の母の気持ちと行動は、 みんな1人1人違う上に、その評価は結果論になる場合も多く… とっても難しいものには違いありませんね。 とにかく、やってみるしかないのですから。 この作品の場合は特に、 ラウラの生い立ちだからこその判断や感情だったでしょうし、 いずれにせよ、想像するだけにしても難しいものがありますが、 いざとなったら、自分でも説明のつかない行動に出る可能性もある気がします。 (2010.01.11 22:56:04)
こんばんは~
>どこまでできるか、できてしまうのか、引き返し不能のポイントはどこか・・・ >この作品に限らず、子育てをしている時の母の気持ちと行動は、 >みんな1人1人違う上に、その評価は結果論になる場合も多く… >とっても難しいものには違いありませんね。 >とにかく、やってみるしかないのですから。 この作品に対してのblogerさんはじめ、皆様の評価が実に様々な理由が、そこなんだと思います。 とても主観的なことに対して、ある1つの答えを投げかけているのですから。。 >ラウラの生い立ちだからこその判断や感情 それは大いにありましたね。 >いざとなったら、自分でも説明のつかない行動に出る可能性もある ----- そこは、母親が持つ「狂気」なんだと思いました。 こればかりは私にも想像がつきません。。。 (2010.01.11 23:03:56) |