|
テーマ:映画館で観た映画(8183)
カテゴリ:洋画(は行)
原題: FROST/NIXON 監督・製作 : ロン・ハワード 脚本・原作・製作総指揮 : ピーター・モーガン 出演 : フランク・ランジェラ 、 マイケル・シーン 、 ケビン・ベーコン 、 レベッカ・ホール 、 トビー・ジョーンズ 鑑賞劇場 : TOHOシネマズシャンテ 公式サイトはこちら。 <Story> ウォーターゲート事件で失脚したニクソン大統領(フランク・ランジェラ)。 その辞任中継の視聴率の高さに目をつけた人気テレビ司会者・フロスト(マイケル・シーン)は、ニクソンへの1対1のインタビュー番組を企画。 ニクソン側も扱いやすいフロスト相手のインタビューを名誉回復の機会ととらえ、法外なギャラで出演契約を結んだ。 フロストは事件に対する謝罪の言葉を引き出すべく、 ゼルニック(オリヴァー・プラット)とレストン(サム・ロックウェル)をブレーンに迎え、質問の練り上げ作業に入るのだが……。 ![]() フロスト×ニクソン - goo 映画 <感想> 第81回アカデミー賞作品賞ノミネートだから、ということだけで観に行ってしまうと、実話だけに、このテの話題に関心がないとこの映画はかなり辛いかもしれません。特に冒頭、当時のニュース映像で背景を説明してくれている部分に、この映画のスタンスを感じました。 一応事件は知ってはいますが、こう次から次へと人物名が出てくるとわからなくなる。アメリカ近現代史のかなりディープな部分をわかっていれば平気なんでしょうけど。 この対談のことは知りませんでしたので、当時の実際の映像があるといいんだけどなーなんてYouTubeで見たけどなかった。 ニクソン役のフランク・ランジェラが、あまりにもニクソンに似ていない(!) どちらかと言いますとレーガンタイプ、あるいは角度によっては平泉成さんっぽく見えちゃったり。なのに彼は舞台版もずっと演じているんですね。 彼曰く、「似ていないことはあまり気にしていない」そうですので、問題はルックスではなくてどう演じるかなんでしょうね。 ルックスついでに、ニクソンがケネディとテレビ対談した時に、汗をかいたり何だりで視聴者受けが悪く、結果ケネディに負けてしまったのは有名な話なのですが、生いたちから彼はいろいろとコンプレックスを持っていたようです。 この映画の対談シーンで、細部にまで撮影に制約を加えるセリフなどからも、彼が非常にナーバスになっている様子が窺えます。 一国の大統領まで務めた人物でさえもコンプレックスに支配されている。。。。 ビットモカシンを履き、夜な夜な美女を伴ってパーティー三昧の対戦相手に、無骨な大統領は自らの生き様を思わず振り返ってしまったように思えました。 人に好かれる生き方。 いくら実直でも誠実でも、好かれていただろうか。 他人の生き方が軽薄に見えたとしても、もしかしたらその中にも自分の人生の幅を広げるチャンスがあったのではないかと。
対するフロスト。初めはひと山当ててやろうか?くらいの動機だと思うんですが、ブレーン入れてさあいよいよ・・・なのにあんまり彼が懸命になっている様子が感じられず。老獪な大統領に押されて自信もなく、それを忘れたいかのようにパーティーに明け暮れる姿は結構見ていて痛い。 しかし生き残りたいと思った瞬間からフロストの表情が一変していきます。それまでの怠惰を取り返したいと本気で思った時。通じるものがあるんでしょうね。そこからはご存じの通りなのですが。 ボクシングのラウンドに例えていた様子が面白かった。 途中はダラダラと接近戦だったりパンチを打って来てもよけて打たせないようにしていても、休憩の時のセコンドや客席の言葉だったり、あるいは試合中にチャンピオンに言われた一言が闘志に火をつけてしまうこともある。そしてストレート見舞ってダメージ与えて、フックも決めて、次第にチャンピオンを追い詰めていく。 殴られても煙にまかれても食いついて。そして決定的な一言を引き出すことに成功する。仕舞いにたたみかける様子も試合のようでした。 そんな一連の流れに対して、フィクションも交えながら状況の変化を追って行った。心理戦としては面白い映画だったと思います。 長く政治を行っていると、旧い感覚で行っていることと今世論が求めていることとのギャップがわからなくなっていって自滅していく。政治家としてはままあるパターンです。たまたまそれが大統領であったということで。 情に厚いことが墓穴を掘るのはどこかの国の政治家ほぼ全員にも言えそうな気もするけど。 ケヴィン・ベーコン(→ 彼もフットルース以来なんで何かすごい嬉しかったんですけど)が演じた役など、そんな「情にほだされちゃう側」の曖昧さだったり正義だったりするんだけど・・・と感じました。 先に辞任したブッシュ前大統領も、キャスターと同様の対談を行いましたが、その中で彼は在任中の悪政に対しては謝らなかったそうです。 そういう無責任さを見るにつけ、観ている側は、フロストや彼のブレーンみたいに「きちんと謝ってもらいたいから」っていう想いも出てきて当然ですよね。
今日の評価 : ★★★★
[洋画(は行)] カテゴリの最新記事
|