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テーマ:試写会で観た映画の感想(675)
カテゴリ:洋画(さ行)
原題: MIRACLE AT ST. ANNA 監督 : スパイク・リー 原作・脚本 : ジェームズ・マクブライド 出演 : デレク・ルーク 、 マイケル・イーリー 、 ラズ・アロンソ 、 オマー・ベンソン・ミラー 、 ジョン・タトゥーロ 試写会場 : 一ツ橋ホール 公式サイトはこちら。 <Story> ニューヨークの郵便局で働く定年間近の局員が、ある日窓口で切手を買いに来た男性客をいきなり銃殺した。 男の名はヘクター(ラズ・アロンソ)。 前科や借金などもなく、精神状態も良好の実直な男だった。 家宅捜査の結果、彼の部屋から長きに渡って行方不明となっていたイタリアの貴重な彫像が発見された。 一向に犯行動機を口にしないヘクターだが、やがて重い口を開く。 謎を解く鍵は第2次世界大戦真っ只中の1944年、イタリアのトスカーナにあった。 [ 2009年7月25日公開 ] ![]() セントアンナの奇跡 - goo 映画 <感想> 予告でインパクトがあって、重た目ですが気になっていた作品。 試写で鑑賞してきました。 2時間40分。 これは覚悟して観ないと。 話としては、第2次世界大戦中のイタリア・トスカーナ地方で行われた戦闘を下敷きに、そこで出会った少年との交流を描いている。そして全体に黒人へのリスペクトを散りばめている。 スパイク・リー作品というと、詰め込んでいるという印象があるのだけど、この映画もこれだけの要素が存在するので、勢い長尺。 軍隊における黒人兵士への差別は有名だが、この第2次世界大戦は今よりももっと悲惨なものであることがわかる。 常に最前線で戦うのは彼ら。 偵察や、実験としての戦闘(→ このような戦闘があるというのも嫌な話ですが)に携わるのも彼ら。 戦場においてさえ、人権や戦術よりも人種差別主義を優先させる白人指揮官の元、死体の山を築いていかねばならないような戦闘は本当に胸が痛い。 つまらない主義のために、貴重な命を無駄に散らすことの浅はかさを見る。 自分たちを守るため、国のため、彼らは参加する。 だが、ふと気がつく。 「自分たちは、アメリカにいるよりも外国の方が自由になれる。本当の自分でいられる」と。 当時の差別はシビアなものだっただけに、黒人差別がないイタリアでの日々が彼らには自由な空気のように思えたのだろう。 アンジェロとの出会いをきっかけに、彼らには、戦時下という限定された空間ながら、自由な交流が生まれていく。 いつ起こるかわからないナチスの攻撃、そして敵か味方かわからないパルチザンとの腹の探り合いを抱えつつも、レナータとの駆け引きをするあたりは、トスカーナでの日々を愛おしんているようにも思える。
1944年8月12日、イタリアのトスカーナでナチスが罪のない大勢のイタリア市民を殺害した「セントアンナの大虐殺」のシーンも、現場となったセントアンナ教会で再現されている。ひざまずく市民、そして出撃を前にひざまずく兵士たち。 同じ祈りを捧げるにしてもその先にある光景が全く違うだけに、観ている側も切なくなってくる。 ナチスの、人道的に容赦ない攻撃にさらされていく地獄のような現実の中で、1つくらい奇跡と呼べるものがあってもいいのではないか。 アルトゥーロとアンジェロのピュアな表情が、この地獄に救いをもたらしてくれるように感じてしまってもおかしくはないようにも思えてくる。 彼らの存在は、極限状態にある兵士やパルチザンでさえも、人間としての普通の想いを取り戻させてくれている。 史実と、黒人兵士たちへのリスペクト、そしてひたすらにアンジェロを助けたいという想い。3つの要素をうまく絡めていると思う。 時間がいささか長尺だが飽きさせず、それを感じさせない。 最初の場面をよく覚えておくことが非常に重要。 ここの記憶が映画の最後まで持つと、途中の種明かしは簡単にわかるし、冒頭とラストのつながりの美しさが感じられ、より一層感慨深い作品となるだろう。
今日の評価 : ★★★★
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