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テーマ:映画館で観た映画(8180)
カテゴリ:洋画(さ行)
原題: CROSSING OVER 監督・脚本 : ウェイン・クラマー 出演 : ハリソン・フォード 、 レイ・リオッタ 、 アシュレイ・ジャッド 、 ジム・スタージェス 、 クリフ・カーティス 、 アリシー・ブラガ 公式サイトはこちら。 <Story> ロサンゼルス、移民・関税執行局(I.C.E.)のベテラン捜査官マックス・ブローガン(ハリソン・フォード)は、不法滞在の移民たちを取り締まりながらも、彼らの境遇に同情していた。 メキシコから不法入国してきた若い母親のミレヤ(アリシー・ブラガ)は、息子をアメリカに残したまま、メキシコに強制送還されてしまう。 女優を目指しオーストラリアから観光ビザで入国クしたクレア(アリス・イヴ)は、グリーンカードを手に入れるため、偶然出会った移民判定官の男(レイ・リオッタ)に身を任せる…。 ![]() 正義のゆくえ I.C.E.特別捜査官 - goo 映画 <感想> この日の2本目。 これも上映館少ないですね。 せっかくなので一緒に鑑賞してしまいました。 つい最近も『扉をたたく人』などのように、9.11以降の不法滞在者や、移民を描いた映画が増えている。 裁定や待遇を巡ってやはりいろいろな葛藤が生まれてしまうが故なのかとも感じる。 この映画は、ICE捜査官であるマックスを中心に、いくつかのケースをオムニバスがかった方法で配置していっている。 テロ防止のためにアメリカが取っている対策について、いろいろなメディアを通じて、かなり厳しいものであることは伝わっている。 目的遂行のためには時として人非人的な対応をする政府。 それが家族離散であろうが、永遠の訣れであろうがお構いなしに。 もう少しどうにかならないものか? と、蚊帳の外から見ているこちらは思うのだけど、その甘さの隙を突いてよからぬことを企む輩もいることもまた事実。 そして何とかして、どうにかしてグリーンカードが欲しいという人たちの気持ちを逆手に取って悪事を働く者も、数多存在する。 そんな現状に、マックスは理不尽なものを感じていたと思いたい。 でも実際には、マックスのような人情をお持ちの捜査官はあまり(というかほとんど)いないのが現状なんだろうなーという見透かしはあるかな。
だからタズリマのケースに関しては本当に胸が痛くて。 彼女があの場所で、あの主張をしたことは大変は勇気が行ったことで、だけど思春期のまっすぐな気持ち故にどこかでそれを表現したかったのかもしれない。 しかしながら、それがどのような結果をもたらすかについては思い及ばなかったのではないだろうか。 そこまで冷酷な仕打ちをするの? 3歳で合衆国にやってきた少女の生活を全て奪うって。 でもそれがアメリカの掲げる「正義」であるのだから、脅かすものに対しての万全の策を取らないといけないのはわかる。 タズリマは彼女の正義を貫き、合衆国は合衆国の正義で応答した。 それだけと言えばそれだけ。 だが彼女たちが流した涙が大地に沁み込んでも、その熱さまでは伝わらない。 そこが物悲しい。 個人的にジム・スタージェスくんは好きなので、彼ってこれに出てたんだ! と気がついた時は嬉しかった(笑) 『アクロス・ザ・ユニバース』で見せてくれたお得意の歌もちゃんとある。 しかも彼が作詞作曲したのもあるじゃないの! 何気に大サービスだったりして。 このジムくんの設定が今一つわからなかったので調べたら、南ア出身のユダヤ系移民だった。 これにはなるほどと思う。 アメリカへ移民を希望しているのは、何も中南米系、アジア系に限らず、同じ英語圏の国の人達ももちろんいる訳だから。 これはオーストラリア出身のクレアにも当てはまる。 使用言語は同じ英語だし、一見見分けもつかない彼らは「目に見えない移民」と呼ばれているらしい。 だからと言って、審査が甘くなるわけではない。 自国民以外に対しては厳格に対処していく。 なのでグリーンカードの偽造などはかなりまずい。 そこを利用する卑劣な人間も大勢いる。 困っている人、そしてそれをビジネスチャンスとして群がる人も絶えることはない。 全部で7つの移民のケースがこの映画には語られている。 そんなにまでしてアメリカ人になりたいのか? そう訊いたらたぶん彼らは全員Yesと答えるだろう。 母国では得られないものを目指して彼らはやってくる。 お金であったり、地位名声であったり、安定した生活であったり、将来性であったり。 帰化したとしないでは雲泥の差が存在する。 ただし帰化したと言っても、元の民族としての誇りを失うことはない。 それどころか、己のアイデンティティを見つめて次代に引き継ぐために、大事にしていきたいと思うのではないだろうか。 それが悲しい結果で現れてしまったのが、ハミードたちのケース。 合衆国に移民としてやってきた世代と、合衆国で生まれたアメリカ国民とのギャップを改めて思わせる。 「人種の坩堝」とはよく言ったもので、言葉にすれば本当に簡単であっけなく聞こえる。 だがしかしそこにあふれる想いは人それぞれ。 エピソードの合間に挿入されるハイウェイの画像は、行き交う人々の様々な想いを示唆し、ラストのアメリカ-メキシコ国境ゲートでの映像の、車の流れるスピードの落差に、祖国を諦めてアメリカという国へ賭ける人々の希望をひしひしと感じる。 正義を貫くために、その想いを受け止める幅が格段に狭まってしまったアメリカという国。 『扉をたたく人』同様、ここでも星条旗の重たさがのしかかってくるようでした。
今日の評価 : ★★★★☆
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