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2009/11/23(月)07:22

『ゼロの焦点』 (2009) / 日本

邦画(か行・さ行)(89)

監督・脚本 : 犬童一心 原作 : 松本清張 出演 : 広末涼子 、 中谷美紀 、 木村多江 、 西島秀俊 、 鹿賀丈史 、 杉本哲太 、 崎本大海 、 野間口徹 、 黒田福美 、 本田博太郎 公式サイトはこちら。 (TOHOシネマズ1か月フリーパス鑑賞 4本目) <Story> 見合い結婚で夫・憲一(西島秀俊)と結婚した禎子(広末涼子)。 しかし結婚式から七日後に、夫は仕事の引継で勤務地だった金沢に出かけ、そのまま行方不明となる。 夫の過去をほとんど知らない禎子は、憲一の足跡をたどって金沢へ。 憲一のかつての得意先の社長夫人・室田佐知子(中谷美紀)、そして社長(鹿賀丈史)のコネで入社し受付嬢をしている田沼久子(木村多江)。 2人の女性との出会いが事件のさらなる謎を呼ぶ。 夫には自分の知らない別の顔があったのだ。 やがて新たな殺人事件が起きる。 ゼロの焦点 - goo 映画 <感想> 松本清張原作は未読ですが、文芸ものはまず押さえる方針なので鑑賞。 『おくりびと』 『ヴィヨンの妻 ~桜桃とタンポポ~』と、日本の文芸調作品に続けて出演中の広末涼子さん主演。 『電車男』『自虐の詩』の中谷美紀さん、そして『ぐるりのこと』の木村多江さんと、女優競演でも話題性が高い映画です。 広末さんの声が甘すぎるのが、いつも彼女が映画に出てくると気になってしまう部分でもあります。 本作も予告では妙に可愛らしく話すシーンがあり、かなり気になってはいましたが、少し表情が抑え目に演出されているせいか、声のトーンも同じく抑え気味で、そういう意味では映画の本質から浮きまくるということはなかったように思いました。 新婚早々夫が失踪する新妻なので、やはりあまりにも甘い話し方ではいけないですからね。 ここでは彼女の持つ初々しい感じがうまく作用しているようにも思いました。 賢明に新生活に慣れようとして、そして思いもよらない事態にも懸命についていこうとする健気さとでも言うのでしょうか。 その雰囲気づくりには成功しているように感じました。 彼女を見て憲一が「生まれ変わりたい」と思えるような新しさ、希望というものを、広末さんのキャラを生かして滲みだすことができていました。 また中谷さんの演じ分けもまさに女優というべきものがありました。 1つの作品の中で対極の側面を演じる強さが彼女にはあります。 そして木村さんも、久子の持つ「諦念」という言葉を演じていったのではないでしょうか。  原作もぜひ読んでみたいところですが、こういう状況の人達は戦後の混乱期にはかなり多く存在していたようにも思います。 佐知子や久子のような境遇に限らず、あのころは生きるためならなりふり構っていられない、必死に生きている人たちはたぶん多かったのだろうと。 そして、そんな過去を消してしまいたい、できることならばその期間を空白にしてしまいたいと願うこともあるだろう。 あの時に戻って生まれ変わりたい。。。 そんなこともあるのでしょうけど、そうはできないのが人間の悲しさ。 展開が何となく原作を読んでいなくても見えてきてしまうものがあり、そして犯人も消去法で考えると絶対にその人しかあり得ないので、あとはその人がどう出てくるかを見ていればよいのですが、犯人が犯行を重ねるに至るまでの切ないほどの気持ちは、あの時代ならではのことなのでしょうね。 どんなに努力をしても消せない過去、たった一言で覆ってしまう境遇、今よりもっと苛酷だったに違いないと思います。 絶対に自分の持っている物を渡したくないという執念は、たぶん犯人も憲一も禎子も同じだったと思います。 あなたは私の夢を奪った。。。 禎子のセリフは、そのまま犯人のつぶやきでもあったに違いないからです。 作品全体を通じてのトーンなどは落ち着いていて、当時の雰囲気をよく出しているとともに、内容の暗さをも暗示させている。 当時の風俗なども再現できていて、小道具などでもわかるのだけど、昔ながらの正統派の「お見合い」などでもずいぶん今とは感覚が違うなと思う。  女優陣もそうですが、俳優陣もまた、その頃の人間の気質というものをよく研究していたようにも感じられました。 松本清張ファンはまた違うご感想かもしれませんが、とりあえず原作の持つ雰囲気はクリアしているように感じる。 ********************************* 今日の評価 : ★★★☆   

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