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テーマ:映画館で観た映画(8348)
カテゴリ:洋画(さ行)
原題: COCO CHANEL & IGOR STRAVINSKY 監督 : ヤン・クーネン 出演 : マッツ・ミケルセン 、 アナ・ムグラリス 、 エレーナ・モロゾヴァ 、 ナターシャ・リンディンガー 、 グリゴリイ・マヌロフ 観賞劇場 : 109シネマズMM横浜 公式サイトはもうないので、movie walkerより。 <Story> 1913年のパリ。 ロシア・バレエ団の革新的な《春の祭典》の初演は酷評にさらされる。 作曲家イゴール・ストラヴィンスキー(マッツ・ミケルセン)は打ちのめされるが、観客の一人ココ・シャネル(アナ・ムグラリス)は、その独創性に注目する。 7年後、ロシア革命によって亡命したイゴールとその妻子にパリ近郊の別荘を提供したのは、デザイナーとして成功を収めたものの最愛の恋人を事故で亡くしたココだった。 高い芸術性と創造力に秀でた2人は激しい恋に落ちる。 シャネル&ストラヴィンスキー - goo 映画 <感想> 『ココ・シャネル』、そして『ココ・アヴァン・シャネル』と続いてきた、シャネル生誕125周年&創業100周年企画の3作品のうちの最後の作品。 予告からかなりツボな感じがして、絶対に公開日に観ようと思っていましたので、確実に予約してお出かけしました。 2002年にカール・ラガーフェルドから白羽の矢を立てられ、シャネルの香水「アリュール」の宣伝に抜擢されてから、アナ・ムグラリスはシャネルのミューズとして君臨している。 モデル業の傍ら、『そして、デブノーの森へ』でも、その美しさを存分に発揮して女優として活躍している。 そんな彼女がシャネルを演じるなんて! これはもう期待度半端じゃないんですけど。
そしてオープニングに流れる、カレイドスコープたちが繰り広げる様々なパターン。 いつまでも尽きることのない映像ははまるで、ココからあふれだすイメージのよう。 最初に「春の祭典」に出会った時、時代を先取りしてしまった斬新さと不安定さに、ココは魅せられたのかもしれない。 自分と同じテイストを持つストラヴィンスキーに会った時、彼女の心は既に動き出したのだろう。
前2作では延々と描かれていた、ココとボーイのエピソードは本作にはない。 (もし同じ作りだったら本当に幻滅したところでしたが) その代わり、あらかじめココの人物像を知っておかないと、この映画の流れにはついていけないかもしれない。 余分な説明やお飾りは本作には一切なく、流れていってしまうので。 その代わりに用意されているのは、大人目線の恋。 ボーイを亡くしたココが、今すぐに求めたもの、それは自分と同じ匂いがするストラヴィンスキーの情熱だった。 こんな時には、余計な言葉は似合わない。 ただ互いの求めるままに駆け抜けるだけだから。 その2人の情事を嗅ぎつけてしまうストラヴィンスキーの妻、カーチャ。 身体が弱いということは、別の部分を強くさせる。 すなわち身体的に動かさなくてもよい部分。 その1つが聴覚なのだろう。 ピアノの共鳴からそれを悟るのも、正直辛かったに違いない。 自分には絶対に出せないであろう、ココの類稀なる魅力。 その悔しさを十分わかりながらも自分も一歩も引かない強さ。 女は土壇場に立たされた時はこうして強くなってしまう。 自分にも他人にも妥協しないココ。 それは仕事や生活のみならず、恋愛に対しても全く同じ。 相手にも自分と同じスタイルを求め、そしてそれが叶わないとその恋は終わる。 「私は自分の力で成功をつかんできた」という自負は彼女の支えであるだけに、それを台無しにしたストラヴィンスキーのセリフは、同じ目線で生きていく相手ではないと判断させるに十分な一言であった。 所詮現実に生きるのが男なのかもしれない。 ところが、そんな結末を迎えたにも関わらず、ココがストラヴィンスキーに見せる優しさは、スタイルを愛する者同士として応援したいという、彼女なりのクールな優しさであった。 ストラヴィンスキーの長女に送った服にもそれが現れている。 大人の女性になるとは、こういうこと。。。 それをいち早く知ったあの長女は、たぶん幸せだったように思う。 ココの、商品に対してのこだわりも細かく描かれている。 消費者として商品がどのように開発されてきたかが今1つ説明が不十分だった前2作に比べると、シャネルNo.5がこの恋と無関係ではないとわかるのもまた、彼女ならではのエピソードと感嘆する。 恋をするといろいろなものが高揚する。 感覚であったりひらめきであったり。 ココもストラヴィンスキーも、刺激し合うことでお互いに作品を生みだしていく。 互いの存在がインスピレーションを掻き立てていっている。 創造者とはそんな荒々しさがないといけないし、支持されて行くのだろう。 ココの優しさ、厳しさ、エレガント、そして官能。 前2作にはなかったものが本作にはある。 ホテル・リッツに横たわる老いたココの空虚な表情や、エンドロール後の無言の映像にまでそれを感じ取れれば、本作を存分に味わい尽くせるだろう。 そのためにはココの人となりをあらかじめおさらいしておく必要はある。 前2作で復習してからぜひ本作を観賞していただきたい。
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評論家さんが「現実に沿おうと気を使ったのか、人間洞察の点では踏み込みが甘く、ちょっと残念」と某新聞に書いてました。踏み込みが甘い評で残念(笑)アート系感性のある人に観てほしい映画でした。
(2010.01.17 10:43:29)
こんにちは~
>観客を選ぶ映画 そう。 まさにそうですね。 わからない人にはわからなくてもいいような気もします。 本作がすごく響いた自分は光栄です。 >評論家さんが「現実に沿おうと気を使ったのか、人間洞察の点では踏み込みが甘く、ちょっと残念」と某新聞に書いてました。踏み込みが甘い評で残念(笑) シャネルのことをあらかじめ知っていて、そしてそれに自分なりに呼応するものがないと、この作品は難しいかもしれません。 まあ感性は人それぞれですから、その評論家さんには合わなかったのでしょう。 >アート系感性のある人に観てほしい映画でした。 ----- アート系、文芸系映画はほとんど観ておりますので、かなり納得しました。 (2010.01.17 12:20:28)
早速見に行かれたのですね。
私も見に行く予定で前売り券を購入してあるのですが、 早くて来週になるかな? ココ・シャネル映画の掉尾をなす映画ですが、 実は私はストラヴィンスキーの方が好きで、 そこからこの映画に関心を持ちました (ベネチアにあるストラヴィンスキーのお墓参りをしたことがあるくらいです) ある程度ココの人となりを理解していないとついていきにくいのでしょうかね? ココ・シャネルがストラヴィンスキーの創作を援助していたとは、 音楽史的にはビックリな話なので関心を持ったのですが。 ちなみに、他の二作品は見たことがありません。 (2010.01.17 15:37:45)
こんばんは。
私も観ていて、前2作を見といて良かったと思いました。(内容の良し悪しは別として。)最愛のボーイを亡くした後だからこそのストラヴィンスキーだと思いますし。 彼女の人となり、特にストラヴィンスキー同様に、最初は異端視されながらも、己の力で人生を切り開いてきたという強烈なプライドは、そこに来るまでにどんな生い立ちだったのかを知らないと理解しにくいでしょうからね。 話そのものはそう込み入ったものではないですが、シャネル、ストラヴィンスキー、カトリーヌこの3画関係の裏側でそれぞれが抱える心情が面白かったです。 個人的にですけど、3人のココのなかではアナが一番美人だったなぁって。(笑) (2010.01.17 20:16:27)
こんばんは~
>ココ・シャネル映画の掉尾をなす映画ですが、 >実は私はストラヴィンスキーの方が好きで、 >そこからこの映画に関心を持ちました >(ベネチアにあるストラヴィンスキーのお墓参りをしたことがあるくらいです) クラッシックがお好きな方は、また違う方向からこれを楽しめると思いますね。 >ある程度ココの人となりを理解していないとついていきにくいのでしょうかね? あまり説明がない映画ですし、知識が全然ないと、シ観客が置いていかれるシーンもありますので、できれば前の2作品を観賞してから行かれますとより分かりやすいと思います。 どうしてココがストラヴィンスキーに惹かれたのかが、よりよくわかりますので。 音楽史的には確かに興味深いところですね、 感想お聞かせ下さい。 (2010.01.17 21:03:48)
こんばんは~
そうそう。 前の作品観てないと、流れが途切れるところありますもんね。 どっちかだけでも観ておくと違います。 ボーイの部分なんて一言で終わりですからね。 ココの人生もおさらいしておかないと、どうしてあのように「寛大だけど厳しい」のかがわかりませんし。 >特にストラヴィンスキー同様に、最初は異端視されながらも、己の力で人生を切り開いてきたという強烈なプライドは、そこに来るまでにどんな生い立ちだったのかを知らないと理解しにくいでしょうからね。 人並みでない人生だからこそつかんだものは大きい。 そこに至るまでに血の滲むような努力と才能があった訳ですよね。 >話そのものはそう込み入ったものではないですが、シャネル、ストラヴィンスキー、カトリーヌこの3画関係の裏側でそれぞれが抱える心情が面白かったです。 >個人的にですけど、3人のココのなかではアナが一番美人だったなぁって。(笑) ----- カトリーヌ? エレーナ? どちらでもいいんですが(笑)、緊迫感と意地のぶつかり合いな関係は映画の核でしたね。 そしてやっぱりココは顔ですか?(笑) アナ・ムグラリスはモデルでもあり女優でもあるんですけど、個性的な美人ですね。ある意味凄みがあります。 (2010.01.17 21:36:11)
あけまして、おめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。 昨年より、シャネルを扱った作品が目白押し。 先秋、母がけがをして以来、映画から遠のいてしまいましたが、この映画がやってきたら、なんとかして、観にいきたいものです。 シャネルという類いまれな女性を、それぞれの角度で描く作品たちに触れることによって、どんな女性なのかとわくわく推察できそう。 彼女もまた、時代が生み出した人なのですね。 (2010.01.18 08:52:25)
マイナー度が高いですがその分、好きな人にとっては充分見ごたえがある作品でした。
当時ふたりは業界は違っても今尚残る傑作を産みだしたのですよね。 奥さんカーチャも鋭い嗅覚ですたりのことを感じとっていたところも見どころでした。 TBさせてくださいね。 (2010.01.19 13:31:58)
昨年はいろいろと、心のこもったコメントをありがとうございました。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。 映画館に行けない時期もありますよね。 シャネル3作品、DVDになっているのもありますので、ご鑑賞ください。 本作のようなテイストは私は大好きです。 >シャネルという類いまれな女性を、それぞれの角度で描く作品たちに触れることによって、どんな女性なのかとわくわく推察できそう。 >彼女もまた、時代が生み出した人なのですね。 ----- 3作品とも、それぞれのシャネルで、楽しめましたよ^^ (2010.01.19 20:31:38)
こんばんは~
>マイナー度が高いですがその分、好きな人にとっては充分見ごたえがある作品でした。 そうです。 ツボに入るとこれはものすごく響きますね。 >当時ふたりは業界は違っても今尚残る傑作を産みだしたのですよね。 >奥さんカーチャも鋭い嗅覚ですたりのことを感じとっていたところも見どころでした。 ----- どこまでがフィクションかが不明ですが、こうして映画化されたということは、それなりのエピソードがあったんでしょうね。 恋をすることによって、それぞれのジャンルで活躍できるようなインスピレーションを授けられるとするならば、それは興味深いところです。 カーチャの鋭い指摘も、なるほど・・・ ですね。 (2010.01.19 20:34:09)
rose_chocolatさん、こんばんは。
この作品大阪では春公開のようだけど まだ公開日が決まっていないんですよ~。 シャネルシリーズではこの作品が一番好評のようですね。 モダンなシャネルという雰囲気ですね。 (2010.01.22 00:10:17)
rose_chocolatさん、ぼんそわー。
いやー、高評価で嬉しいですー。 私は最近、ついーと読むのでお腹がいっぱいで、ブログ巡回して人のレヴューを読むことをあまりしなくなったんですが(上のまっつあんこさんの言葉を借りれば、踏み込みが甘い評を読むのにウンザリしちゃうこともしばしばなのでw)、rose_chocolatさんは大好きとおっしゃっていたのでやってまいりました。 そして、同感、共鳴。 妻の心情の辛さなども、台詞以外の部分で丁寧に描写していたのが印象的でした。 そうそう、聴覚によって悟るというのがまた痛々しいのですが、描写としてはエクセレント。 エピソードてんこもりの去年の二作とは違って、物語がシンプルな分、とことん映像や音楽でクールに表現されていたのがよかったですー。 (2010.01.23 03:17:14)
こんにちは~
>いやー、高評価で嬉しいですー。 思わず満点にしちゃいました~★★★★★ >ついーと読むのでお腹がいっぱいで、ブログ巡回して人のレヴューを読むことをあまりしなくなった ついったーもblogもとなると時間ないですよね。 >(上のまっつあんこさんの言葉を借りれば、踏み込みが甘い評を読むのにウンザリしちゃうこともしばしばなのでw) あはは・・・ 同意。 私もレビュー読みに行くのは気心知れた方だけになってます。 あとはTBいただいた方だけ。 時間ないのが一番の理由なんですけど、踏み込みが甘い評とか表面だけの評とかだと、時間の無駄みたいな感じがして。 時間も仕分けしないといけませんからね(笑) ・・・って、疲れているときとかは自分も恐ろしく感想を省略してはいますけど~ >そして、同感、共鳴。 >妻の心情の辛さなども、台詞以外の部分で丁寧に描写していたのが印象的でした。 >そうそう、聴覚によって悟るというのがまた痛々しいのですが、描写としてはエクセレント。 それだけで観客に悟らせるのを成功させたのは、表現としてベストですよね。 聴覚だけで気がつくことって案外多そうですし。 >エピソードてんこもりの去年の二作とは違って、物語がシンプルな分、とことん映像や音楽でクールに表現されていたのがよかったですー。 ----- これでもかこれでもかとエピソードだけ持ってこられても、ホントお腹いっぱ~いになっちゃいますからねえ。。。 なので本作のテイストは大好きです。 (2010.01.23 08:15:23)
rose_chocolatさん、こんばんは。
トラックバック&コメントありがとうございました。(*^-^* >自分には絶対に出せないであろう、ココの類稀なる魅力。 その悔しさを十分わかりながらも自分も一歩も引かない強さ。 女は土壇場に立たされた時はこうして強くなってしまう。 ある意味ストラヴィンスキーよりも妻のほうが 同じ女性だからこそ、ココの魅力は客観的に理解出来る。 だからこそ、芯はブレないのでしょうね。 (2010.03.23 23:19:51)
こんにちは~
>ある意味ストラヴィンスキーよりも妻のほうが >同じ女性だからこそ、ココの魅力は客観的に理解出来る。 >だからこそ、芯はブレないのでしょうね。 ----- 女性の、同性を見る目ってシビアだったり冷ややかだったり しますよね。 カーチャはある意味、先を予見していたのかもしれません。 その時は感情的になったとしても、後から考えると意外と冷静な計算ができるのも、女性の怖さでしょうね。 (2010.03.27 16:38:05)
だいぶご無沙汰していましたが
お祝いコメントをありがとうございました! 私もこの作品大好きです。 これが最後に観れてよかったわ~ 前2作でシャネルの人生をサラッと理解して 本作では彼女の真髄を味わうことができたって感じです。 前2作のシャネル役の女優さんとは違って アナには威厳が感じられました。 まさしく大人の恋ですね。 芸術家同士の恋は,破綻しても泥沼にはならないものなんですねぇ・・・ (2010.08.19 20:39:30)
こんばんは~
&おめでとうございます! 遅くなりましてごめんなさいです~。 >私もこの作品大好きです。 >これが最後に観れてよかったわ~ そうそう~。 これがいちばんアーティスティックで面白かった。 >前2作でシャネルの人生をサラッと理解して >本作では彼女の真髄を味わうことができたって感じです。 その本質みたいなのがちゃんとあってよかったですよね。 >前2作のシャネル役の女優さんとは違って >アナには威厳が感じられました。 >まさしく大人の恋ですね。 >芸術家同士の恋は,破綻しても泥沼にはならないものなんですねぇ・・・ ----- アナ・ムグラリスはシャネルのミューズですからね。。。 厳しさもあってさすがという感じ。 真打登場ってところですね。 シャネルの恋、ここまでビターだと、カッコいいけど、それで彼女はよかったのかな? とも思ってしまうのです。。。 (2010.08.22 02:44:22)
roseさん、こんにちは!
roseさんはこの映画、とっても気に入っちゃったのね?他のブロガーさんちでのコメントとかも偶然拝見させて頂いちゃった。どこがどうって、ただ感覚的に好き!って事ありますよね~。 私もこの調度品とかファッションとかインテリアとか全体的な映画のムードが素敵で好きだったわ~。 あとラブシーンにしても好みだったんだ~☆ ところで、私は、デブノーは未見なの。 見てみようかな・・・。 TB今日はダメだったみたい・・。 http://latifa.blog10.fc2.com/blog-entry-900.html (2010.09.14 14:04:45)
こんにちは~
やっぱり3作品の中ではこれが1番でしたね。 前2作品と違って、いちいち繰り返さなくてもわかりますし、何よりスタイリッシュ。 インテリアも素敵だったなあ。 『デブノー・・』はねえ。。 人によりけり、と言っておきます(汗) (2010.09.15 10:36:32) |