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テーマ:映画館で観た映画(8350)
カテゴリ:中国・香港映画、その他の映画
原題: APART TOGETHER 監督 ワン・チュアンアン 出演 リン・フォン 、リサ・ルー 、シュー・ツァイゲン 、モニカ・モー 公式サイトはこちら。 コピーに、「中国と台湾を隔てる悲しい歴史に翻弄された二人の夫と妻」とあるのですが、 これをきちんと理解するには、第2次大戦後の中国史や、 台湾との問題を押さえておかないといけないのでしょうね。 国共内戦について wiki 最も、この映画においては、そんなに中台のあれこれは描かれてはおらず、 むしろその歴史の流れによって運命を変えられてしまった人たちからの目線が中心ですが。 あまりにも簡単に善民(シャンミン)が玉娥(ユィアー)の希望を認めてしまい、 燕生(イェンション)とも友好的な関係を築いてしまうのにはかなり拍子抜けしましたけど、 そこには、台湾建国時の混乱や、動乱によって生じた影響、 携わったり残された人たちの様々な心情を加味する必要がある。 善民は玉娥を不憫に思ったのだろうし、そしてお腹に建国(ジュングオ)を抱えた玉娥はそうするしか生きる道がなかった。 愛だの恋だのと言っている余裕はなかったはずです。 そこからお互いに、後ろ指を指されながら、理不尽だと思いながらも必死に生きてきた。 だから、「そこには愛はない」と玉娥が言った時も、それに対して真っ向からなじるということは善民にはできなかったのでしょう。 それ以上に40年という歳月を、玉娥は尽くしたはずです。 また、自分の裏返しとしての燕生の苦労も、善民はわかっていたと思うのです。 それにしても、建国はかなり燕生には冷淡だったかなとも思いました。 関係ないとは、かなりなお言葉です。 父親の苦労を汲み取ろうとする意思がないのはもともとなのか、それとも後天的に建国に植えつけられてしまったものなのか。 その理由は映画の中では明らかにはならないのですが、その冷淡さや、 他の子供たちの自己主張なども併せての原題の中国を描き、 中台間の動乱が起こった頃に中国人が持っていた良さが失われてしまったことを強調したかったのではないだろうか。 ナナを除く子孫たちが非常にドライなのはその象徴でしょう。 新しい住居に来なくなってしまった子どもたちもまた、歳月と共に変わって行く中国社会の象徴でもありますが、 愛のために生きると決めた玉娥の、今後の人生に結果として横たわる深い絶望も考えていかないといけないように思います。 愛と言っても、博愛もまた愛であると自分に言い聞かせることでしか癒せないように感じました。 しかしながらそれをどこかで運命として、流していくような覚悟も、玉娥のなかには存在していたと思います。 食卓を家族で囲むこと。 しかしながらその胸中には裏腹の想いも同時に乗せているはずで、 外での食事が台無しになるシーンにも重ねられている。 原題にもあるとおり、"together"であるのにも関わらず、実際は"apart"だったのは、 今まで築き上げてきた自分の家族だけではなかったということです。 いくら歳月を重ねても、越えられないものは越えられない。 それに耐えられるかどうか。 この描き方が、どうしようもない現実を浮き彫りにしています。 20年前に設定にしているところがまた、リアルでもありました。 欲を言えば、もっと中台問題に踏み込んでもよかったかもしれません。 監督は『トゥヤーの結婚』(未見です)のワン・チュアンアンですが、 中国での制作ということを考えると、この着地点はギリギリの線だったようにも感じました。 あくまでも家族の問題が焦点ですし、これでよかったと思います。 今日の評価: ★★★☆ 3.5/5点 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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玉娥が生きてきた40年間というのは、別に男尊女卑と言う訳ではないでしょうが、極普通に女性が自分の思い通りには生きられない時代だったのですよね。今同じ状況があっても、今の女性だったら違う生き方をしたでしょうし。その彼女が好きに行きたいという気持ちは誰にも止められないのだろうなと思いました。
ただちょっと不思議だったのは、玉娥の家に手紙が届いたってことは、燕生は彼女の家の場所を知っていたってこと?つまり連絡ぐらいは取ろうと思えばいつでも取れたんじゃいのか?ってこと。 何だか突然訪ねてきて、突然連れ帰りたいみたいな話の流れになっているので、そこらへんもうちょっと上手くできたんでないの燕生さん、なんて思ったりもしました。玉娥や善民はともかく、そりゃ家族は反対しますよね、そこに歴史に翻弄された事実があったとしても、自分の実の母親ですもん。 (2011.02.11 20:48:50)
こんばんは~
>極普通に女性が自分の思い通りには生きられない時代だった それも確かにそうだったんですけど、その大きな要因が「戦争」ですよね。 単に思い通りにならないということに輪をかけていました。 生命の危険がある訳だからね。 >燕生は彼女の家の場所を知っていたってこと? そこら辺の説明って一切なかったですよね(笑) まあ、仲介の組織かなんかから知ったとか考えるのが自然ですかね。 本作の場合、問題は説明ではなくて、 運命を変えてしまった時代の流れってことだと思います。 なので、ディテールにはあまりこだわらなかった気もしました。 現在の家族は確かに反対すると思うけど、玉娥の「女心」が何か切なくてね。 「女は、灰になるまで女」、です。 (2011.02.11 23:25:34)
rose_chocolatさん、こんばんは。
>欲を言えば、もっと中台問題に踏み込んでもよかったかもしれません。 特に、こういう複雑な時代背景が絡む物語は検閲も厳しいでしょうし、 思うがままに描けるとは限らないのかもしれないですね。 (2011.02.27 23:46:22)
これ、わたし的にはすごくよかったですー。
中国映画って、チャン・イーモウとかを見始めた頃は好きなものが多かったんですけど、ここ数年は中華圏の映画に好みのものが少なくなっていて・・・。 でも、この監督作品とは相性がいいみたいで、すっかりやられましたー。 へんに泣かせる仕様じゃなく、声高に社会問題を嘆くんでもなく、ただ日常を生きる感じがよかった。 (2011.02.28 00:31:28)
こんにちは~
>これ、わたし的にはすごくよかったですー。 そのようですね。 上海蟹も美味しそうでしたねー。 >中国映画って、チャン・イーモウとかを見始めた頃は好きなものが多かったんですけど、ここ数年は中華圏の映画に好みのものが少なくなっていて・・・。 >でも、この監督作品とは相性がいいみたいで、すっかりやられましたー。 >へんに泣かせる仕様じゃなく、声高に社会問題を嘆くんでもなく、ただ日常を生きる感じがよかった。 ----- 私はこの監督はお初なんですけど、『トゥヤーの結婚』でしたっけ? 見逃しちゃったからDVDかなあ。 たくさんの内容を、難しい着地点で全て納めていて、そこはすごいですね。 体制にも配慮しないといけないでしょ。 エンドロールなんて、「これはまさしく中国の映画だ」って思ったもん。 中国、たくさんのものを抱えてて、複雑でもあり奥が深くもありと今回も感じました。 (2011.02.28 05:54:13)
こんばんは~
そうそう、体制にも配慮しないと映画製作ができなくなる。 それを考慮しつつも、言わんとすることは全て入れてきたということで、この監督は素晴らしい技量の持ち主だなと感じました。 (2011.02.28 05:55:48) |