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2011/02/26(土)08:49

『トスカーナの贋作』 (2010) / フランス・イタリア

洋画(た行)(63)

原題: CERTIFIED COPY 監督: アッバス・キアロスタミ 出演 ジュリエット・ビノシュ 、ウィリアム・シメル 鑑賞劇場 : ユーロスペース 公式サイトはこちら。 「夜にたどりつけない男と女」という、 何ともまんまな(失礼)コピーが当てられちゃってったんだなあと、今さらながら 思ってしまいました。 ネタばれもそうですが、そう言いきってしまってもねえ・・・。 と。 「本物を証明する意味で、贋作にも意味はある」 がモットーのジェームズ。 その講演に参加した「彼女」(→ 役名はない)との絡みを描いていくのですが・・・。 役名がない、というところがもう、この映画のテーマと深くかかわっているようで、 文字通り「存在しない」ような存在、つまり本物ではない象徴としてそこにある。 2人の会話がいつの間にか、どこから真に受けていいのかを分からないように仕組んでいくのも、この監督の技なんでしょうね。 観客の方が「あれ? 今見てるのは真実? そんなこと言ってた?」と 煙に巻かれてしまいそうな感じですしね。 ずーっと夢の中の風船を追いかけるような感覚で映画を観て、 最後の最後に、現実はこれなんだよと突き付ける。 結局は、現実と願望とのボーダーラインを決めていく訳ですけど、 映画全体がトリックのような雰囲気なんです。 「彼女」の詳しい現状についてはあまり伏線はなかったけど、 人が抱える願望、こうなってほしいという想い、 それが叶わないながらも、強く持ち続けるあまりに、 世界までもが変わってしまうような錯覚を起こすこともあるのかもしれない。 結局そこは偽物の世界でしかないのですが。 その「念」が動かしていくものを覗けるとしたら・・・? という、過程として考えても面白いかもしれません。 その対象に選ばれてしまうのは、いいのか悪いのかわからないけど。 そういう意味で本作、実験的だなと感じました。 監督の遊び心なのかしら。 キアロスタミ作品は初鑑賞なんで、ずいぶん観念的だなとも思いましたが・・・。 その実験を、トスカーナの美しい風景や、ビノシュの妖艶な様にうまく絡めています。 ルージュの赤はカッコよかった。 あの赤、ブライトじゃなく少しダークというか、茶色がかってて大人の赤でしたね。 観客までもが迷い込むような感覚に陥らせる当たり、なかなかうまく組み立てていると感じます。 今日の評価 : ★★★☆ 3.5/5点

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