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カテゴリ:日々思うこと・・・
久しぶりのブログ。 帰国してから1年が経つのが信じられない。 この一年一体何をしたかというと、実に何もしていない。 私は濁流の中に投げ込まれた小石で、 たまたま、通りすがりの船の船底の板の隙間に引っかかって止まり、 どこに向かっているのか定かではないまま身を任せているような、 そんなふぬけた、手ごたえのない、とらえどころのない一年だった。 流れの速い川はひっきりなしに私を挑発しながら、 あっという間にするりと横を遮ってどんどん下流へと流れてゆく・・。 帰国してまもなく、仕事の関係で新しい土地に引越しをし、今、そこに住んでいる。 森に囲まれた、自然環境に恵まれた土地だ。 私はしばし、全てを忘れ、自然を楽しむことに没頭した。 夏はとれたての新鮮な野菜が手に入り、 いつでも道端で小さな野花を摘んで部屋に飾ることができ、嬉しかった。 暑い日は森の中で寝転びながら、本を読んで涼んだ。 森の中は初めて聞くような、懐かしいような色々な音がし、 色々な生物が生きづいているのに驚かされた。 冬はマイナス二桁の世界。しかし樹氷が煌めく大地は幻想のようで、目を奪われた。 早朝、クロスカントリースキーをはいて森の中を冒険した。 心が落ち着かない時は、集中してピアノが弾ける練習室に閉じこもった。 高名な腕の良い鍼灸師さんがいて、時間がある時、教授してもらえることになり、 ちょっとした希望が見えてきた。 週末には、できるだけ足を延ばして、山や湖に遊びに行った。 友達も良く訪ねてきた。私もたまには、友達を訪ね関東や関西に出かけた。 そうやって、この一年、私は、失われた何かを取り戻すように、 ひたすら、貪欲に、日本の四季を満喫することにのみ集中した。 ![]() 春はしっとり靖国神社の夜桜能を観賞・・・ ![]() 花より団子・・・お花見弁当のレベルの高さにもびっくり・・☆ ![]() 地味だけれど清楚できりりと美しい蝦夷桜・・ ![]() 初夏・・昔良く行った湖畔のロッジ。変わらずに私を癒してくれる風景・・ ![]() 夏の鎌倉・逗子。セミの声、じわっと肌ににじむ湿度・・年少時代の思い出 ![]() 美しい和歌山城の日本庭園・・・みんみん蝉がつくつくぼうしに変わる頃 ![]() 高い空・・澄みきった空気・・なにもない原っぱ・・地平線 ![]() 秋は地元の湖でカヤックをしたり、温泉に行ったり。 ![]() ゆっくりと秋が幕を閉じ・・ ![]() 一面雪色に染まる・・・ 日本の自然は美しく、高級な日本酒をちびりちびり飲んでいるかのように、 じわじわと五臓六腑に沁み渡った。 今でも、私はすべての瞬間を、その彩りや香りを、肌に触れた空気の粒子を、 鳥や虫の声を、静けさや安らぎを、五感の全てで覚えている。 これほどまで自然に夢中になれたのは久しぶりだった。 そしてそれ以外のことは、たいがいどうでもよくなった。 だいたいが、日本という社会が、すべて忘れてしまいたいほど、 どうしようもない時代に突入していることは明らかだった。 そしてそれは流れだと言うことも知っていた。 主流に身を任せてしまう怠惰な私達。流れをせき止めることもできない。 どこかで助けを求める声が聞こえていながら、 そこにピンポイントで辿り着けないようなもどかしさ。 問題の本質に、手の行きとどかないことに対する苛立ち。 そんな自分が情けなく、安泰すらも自らの手で壊したくなる衝動に駆られる。 ロラン・バルト的表現を使いて言えば 「大蛇の舌の上で安住しながらも、その大蛇を撃ち殺そうとする」ものかもしれない。 自然は、そんな失望すら忘れさせてくれるレメディ。 ただし、忘れてはいけない。諦めてもいけない。 私の物事の焦点や関心は、もはや自分自身ではなく社会に向けられている。 穏やかな気持ちになりながらも、 私の心の中はいつになく研ぎ澄まされて覚醒されている。
最終更新日
Feb 6, 2013 08:25:15 AM
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