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Cymruのお喋り

Cymruのお喋り

RS異聞記2 3

ホールにお化けが出たという話はすぐに邸中に広まった。

この度の騒ぎで”蒼き氷の女神”ことちぇるをはじめとする
主だったクルネスのメンバー、
”紅涙の女神官”ことCymruをはじめとする
アウグの教会に属するビショたちが、
皆公社からの召集で留守になってしまったため、
食料庫が空になる危険を覚悟でカムロは天空邸に留まっていた。

ダメルの事件以来、σ/(=・x・=)\火力になる!
と一から鍛えなおすため邸を訪れていたディオと2人、
ホールの中をうろうろうろ。

「お化けいなぁ~い;;ディオつまんなぃ~~~!!!」

”Diolch・・・”

(=^‥^=)σお化けいるじょ♪

”わ、わらわは、お化けではないぞ^^;;;”

「えっ?・・・」ディオはきょろきょろと辺りを見回す。

”おお、御子もご一緒かぇ”

(=^‥^=)ノ

ホールに居たはずの2人は
何やらキラキラとした空間に浮かんでいた。

”お元気そうでなによりじゃ^^”

2人の前にはベージュのドレスに身を包んだ年配の女性。

ディオは彼女の顔をまじまじと見つめると何事かに気がつき、
両手で口元を押さえ一歩下がると、目上の者に対する正式な礼をした。

「先代のブロヌ様でいらっしゃいますわね。私はDiolchと申します。
お目にかかれて光栄に存じます」

”堅苦しい挨拶はいらぬぞ。
それに今のわらわはわらわであってわらわではない”
ブロヌはにっこりと微笑んだ。

「???」

”本当のわらわは永遠に14歳の可憐な乙女じゃ!”

本人的には可愛く投げキッス(はあと)

シィ~~~ン・・・

ブロヌは重々しく咳払いをして続けた。

”今のわらわはふうの記憶が生み出したもの。
そして・・・”

ブロヌは両手を頭上にかかげると目を閉じ、水晶球を呼び出した。

そこに映るのは、すやすやと眠る赤ん坊と
何やら探している様子のワンコ。

「・・・まさか・・・」ディオの大きな瞳が更に大きく見開かれる。

~(= ^・・^)=o お手だじょ♪

「マートンお兄ちゃん?!」

”ああそうじゃ、そして赤ん坊の方はジェイドという名の娘。
そなたたちが救った骸骨だった子じゃ。
この子が誘拐され、マートンが探しておる”

さすがのディオも呆然と立ち尽くしていた。

”どうやら誘拐犯のWIZも実態ではないようじゃ。
なにやら巨大な思念が作り出した残像が
闇の力を集めて動いているようじゃな”

ブロヌは水晶球を両手で包み込む。
そこに映し出されたのは、

「ミル様?!」

”アウィン殿も映っておるが・・・スルーかぇ^^;;;”

/(=・x・=)\ノ

”何の因果か、ジェイドの誘拐に、異世界からの迷い人が巻き込まれたようでのう。
最初に申したとおり、ジェイドもマートンもふうの記憶が生み出した存在じゃ。
特にジェイドはディオ、そなたがふうに渡した砂からの記憶で生まれている。
ふうが手一杯な今、彼らをこの世界に繋ぎとめ、
巻き込まれてしまったアウィン殿とミルティク殿を救えるのはそなたたちしかおらぬ”

亀の甲より年の功。

まあ、他にいろいろ心当たりもあったが、とりあえずこの2人には
そう言っておこう。とブロヌは考えた。

(=^‥^=)ノ/(=・x・=)\ノ

なんだかワクワクしてきた2人は、事の重大性は認識せずに
この話にのった♪

------------------------------------------

ミルティクは立っていた。
意識はあった。
周りは闇。
聞こえるのは己の心臓の鼓動のみ。
指一本動かせない。

ここはどこなのだろう。私は何故ここにいる?

ミルティクは記憶を呼び覚まそうと意識を集中した。


浮かんできた情景---

薬草園の事務室の簡易ベットで休んでいたミルティクは
押し寄せる瘴気にハッと目を覚ました。

他者の余計な思念が勝手に彼に入り込むことを防ぐための結界を
緩め、外の気配を伺う。

”見つけたぞ、石だ・・・城のはずれのあの建物だ、行け!”

ミルティクの中に殺気に満ちた声が流れ込んできた。

城に異変が起こっている。そして、その原因はおそらく・・・

肌身離さず大切にしているこの石。

一族の欠陥品と呼ばれている自分が、
唯一他者から認められた証のこの石は、
ミルティクにとっては命にも優る宝物。

石と己に何十にも結界を張り、
城全体を覆う状態異常魔法への抵抗薬を飲むと
ミルティクは薬草園へ移動した。

瘴気が立ち込めているのは城内のみ。
城から出てしまえば・・・

「誰だ?!」

---------------------------------------

背後からの声にビクリとし、立ち止まる。
これほどの結界に護られているミルティクを認識するものがいるはずなど・・・

振り返った先に立っていたのは、
黄金色に焼けた肌、アメジストのような紫の瞳と、
軽くウェーブがかかったような栗色の髪をした見事な体躯の戦士。

初めて対面したときはミルティクが頭ひとつ大きかったのに
今は彼と並ぶほどに成長していた。

「アウィン様!」5年ぶりに見た生涯の主に結界を緩め、膝まづく。

「お前は・・・ミル?か」

「ご記憶賜り、光栄に存じます」

これだけの魔法をかけられた城内で
抵抗薬も飲まずに動いていることが
アウィンの戦士としての能力の高さを証明していた。

「どうかこれをお使い下さいませ」
懐から予備の抵抗薬を出し、素早く手渡す。

先刻、無意識に緩めた結界のせいで敵に探知されたことはわかっていた。

「ありがとう」
この状況下で快活に微笑むとアウィンは迷うことなく薬を飲み干した。
「おっ・・・体が楽に動く♪ミル、君って本当に素敵だ!」

”変わっていない・・・この方こそ・・・”

不覚にも涙すら込み上げて来たその時。

「ミル、危ない!」

上空から襲ってきたガーゴイルを両手剣で一刀両断し、
振り向きざまにもう一匹を葬り去った。
が、そのすぐ後にいた敵がミルティクに覆いかぶさろうとした刹那、
アウィンは片手を剣から離し、左腕でミルティクを庇う。

アウィンの腕に深くくい込む爪。
鍛えられた筋肉が躍動し、それを何とか払いのけると右手の剣で敵を切り裂く。
傷を受けた左手は見る間に紫色に腫れ上がり、
アウィンは顔を歪めながら、右手だけで更に襲い来る敵と戦い続ける。

「アウィン様・・・」
ミルティクの瞳が恐ろしい勢いで膨張し、深い銀色に輝き・・・
いつかどこかで読んだ古代魔法の呪文がスラスラと口をつく
「古よりの盟約により我願う、我に流れる統べての血潮よ熱き力となりて具現したまえ。
地深く眠る太古の力よ、我の血潮にその力、より添わせたまえ!」

城内のあちらこちらに無数の黒い点が湧き上がり、
次の瞬間、恐ろしい勢いでマグマが噴き出した。
城じゅうを徘徊していた敵と空中で待機していた敵のほとんどが黒こげとなり消滅した。

「ばかな!この国にこんな魔力を持つものなどいないはず」
紫の多肢生物は唸り声を上げ、噴き上がってくるマグマから身をよじった。

「ミル、やめろ!私は大丈夫だ、ミル!!!」

大地はミルが開けたホールだけでは足りないといわんばかりに轟きはじめていた。

生まれてこの方、押さえつけられていたミルティクの魔力は、すでに彼の手を離れ、暴走し・・・


そこで記憶が途切れていた。

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次に浮かんだ情景。


体を覆っては離れてゆく波に揺り起こされた。
頬にはねた水は塩分を含んでいる。

”これが海か?”
砂漠に囲まれた祖国では書物の中にしかなかった海が目の前に広がっていた。


記憶がふっと途切れる。

次に思い出したのは傷を負ったアウィンの肩を担いで
森の中を彷徨っていたこと。

何かの油を採りに来たというビショがアウィンの傷を回復してくれた上
白い丸いもので古都に送ってくれたこと。

古都でアウィンのマント止めについていた宝石を売って金にし、
宿を探していた時に出会ったクラレに世話になり・・・

”そうだ、アウィン様は?!”

必死に意識を集中し、”耳”を送る。
さらに意識を飛ばしアウィンを探そうと精神を集中。
”チャージング・・・ダブルチャージング・・・”
この世界に来てから古都西にいるWIZたちから見よう見まねで学んだ
魔法を使うための呪文。”フォーベガーチャージング”

体が自由になった?!

「あの状態でフォーベガーチャージングまで使うとは・・・お見事です」

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そこは何かの研究室のようであった。
無造作に置かれたたくさんの書物。
束ねて窓辺に吊るされている植物の中には
ミルティクがその名を知っているものもあった。
大きな机の上には、なにやらくねくねと伸びた管。
その先にはビーカー。
棚には沢山の瓶。
ラベルに書かれている文字は読めなかった。

目の前にいるのは白衣を着た、どこにでもいそうなWIZ。

「大変な目に遭われましたね」WIZは気さくに声をかけると椅子を勧めた。
「何か召し上がりますか?」

「いえ・・・」部屋にもWIZにも怪しいところはなかった。
無言詠唱、相手に催眠術をかける。

「おやおや・・・これは美しい見掛けによらず無粋な」
テレポーテーションで移動し、それをはずすとWIZはにっこり微笑んだ。

「美しい?そんなことに何の意味があるのですか」
ミルティクはWIZを睨みつけた。

「醜いよりは美しいほうがいい。そうでしょ?」

「体が弱くろくに戦えない・・・存在価値がない者に美醜などなんの意味もない」

「おやおや、困った方だ」
WIZは近くの椅子を引き寄せると静かに座った。

「あなたの記憶を拝見したのですが・・・」
WIZは微笑みながらミルティクを覗き込む。
「あなたは本当にそうは思っていない。
あなたはちゃんとわかっている。
自分は正当に評価されていない。と」

「それは・・・」

誰にも必要とされず、存在自体を忌み嫌われる子供。
容赦なく浴びせられる否定の言葉に押しつぶされそうな毎日。

人と接することを極力避け、人目につかぬ場所で
書物に読みふけることが唯一の楽しみであった。

本の中に広がる世界には腕力はなくとも魔法力で活躍する人々がいた。
砂漠に囲まれているダグザ国では見ることが出来ない海があり、
雪が降り、大河が流れ・・・

自分がもし、本の中のような世界に生まれていたら・・・
空想は広がり、やがて、現実に戻る。

そう、いくら夢想したところで、自分にはなんの価値もないことに
変わりはないのだから。

どうしようもなく湧き出してくる現実への憎悪。周囲の人間への嫌悪感。
それを少しでも外に出せば、尚疎まれることがわかっていた。

何をされても何を言われても、ただニコニコと微笑んでいた
ミルティクの意識の奥底に澱のように溜まったどす黒い想い。

WIZは立ち上がると困惑しているミルティクの後ろに回り耳元で囁いた。
「困った顔も実に美しい・・・」

そのまま、ミルティクが着ていたロングコートを脱がし、
ドアの近くにかけてあったミスリルコートを着せた。

体力が飛躍的に上がった。

「あなたが虚弱体質?!とんでもありませんよ。
WIZの体力をあの脳みそまで筋肉の連中のそれと比べること自体狂気の沙汰。
正に笑止千万!」

更に自分がはめていた指輪をはずしてはミルティクのそれと付け替えてゆく。

「あなたには素晴らしい素質があります。それに実によく勉強していらっしゃる」

恐ろしいほどに魔力が高まり始めていた。

「最近は教養のない魔法使いやワンコが増えて・・・本当に嘆かわしいことです」

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「ヘックショ~ン・・・誰かオレの噂してやがるのかな・・・」

派手にくしゃみをした反動で落ちた左腕をすばやく修復しながら
マートンは鼻を・・・たぶん鼻だろうなというあたりを啜った。

スマグの噴水前に戻ってみたものの
剣士とWIZの姿がない。

「ちっ、とんずらしやがったか・・・」

”違うよ(ぱたっとぱたっと)”

「ん?」キョロキョロと見まわす。

”ここだよ(ぱたぱた)”

普段よりだいぶ低い位置で、
ふらふらと飛んでいるぱたっこが近づいてきた。

「・・・お前話せるのか?!」

”君、自分が骸骨だって忘れてるでしょ♪(ぱたぱた)”

「あっ・・・この姿だとお前らと話せるんだ♪」

”最近嫌な感じの奴らがスマグにうろうろしてるんだけど(ぱたっとぱたっと)
特に陰険なWIZ2人組がいてさ(ぱたぱた)
さっきもそいつらが剣士さんたち石にして連れてったんだ(ぱたっとぱたっと)”

よくみるとぱたっこは怪我をしている。

「やつらにやられたのか?!」

”うん;;”

マートンは腰から黒いサイコロを取り出した。
「6出ろ!」
マートンの言葉に頷くように小さく跳ねて地面に転がったサイコロは
6を空に向け止まる。

「よっしゃぁ~やっぱオレって以下略!」
叫んだマートンの姿がWIZに変化した。

素早く杖を振り、ぱたっこにアスヒをかける。

すっ~といつもの高さまで舞い上がったぱたっこがマートンの肩に止まった。

「大丈夫か?」

元気に一回転して見せたぱたっこは、しきりに噴水の方に羽を向ける。

「ん?」

”鞄、君のでしょ?(ぱたぱた)」

「おっ!」落ちている鞄は確かにマートンのもの。
「見張っててくれたのか?」

ぱたっこはもう一度くるりと回転して見せた。

「あり、オレって本当にラッキー♪」
鞄を拾うとワンコに変身。

「またな^^」噴水の周りに残っていた2人の匂いを確認して
マートンは走り出した。

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「昔どこかの世界にガリレオという男がいたそうです」
WIZはにこやかに語りかけた。
「彼曰く
『言葉や属性こそ、事物の本質に一致すべきであり、
逆に本質を言葉に従わせるべきではない。
というのは、最初に事物が存在し、
言葉はその後に従うものだからである』と」

王立図書館に篭っていた頃、
ミルティクもその名前を目にしたことがあった。

「あなたは無知な連中の言葉のせいで、
本質を曲げられてしまっていた。全くひどい話だ」

「もう・・・いい・・・やめてください」
弱々しい声でミルティクは呻いた。
思い出したくないことが多すぎる。

「あなたは優れた人物です。
あなたがそれを否定するなんて、あなた自身が気の毒だ」
WIZはミルティクの耳元で囁いた。
「あなたの本当の力を解放してみませんか?」

”本当の力?そんなものが私にあるのか・・・”

確かめたかった。
その誘惑は抗いがたく、ミルティクは我知らず頷いていた。

「それではこちらへどうぞ」
WIZは舌なめずりをしてミルティクを誘った。

五芒星の中心に立つミルティク。

小さな炎が、彼の周りをゆらゆらと照らしていた。

”さあ、はじめましょう”

------------------------------------------

スマグの西側にある古びた建物の奥。

壁にびっしりと並んだ本棚の前で
マートンは途方に暮れていた。

あの2人の匂いがここで消えていた。

”時間制限があるってのに・・・ったく”

と、
いきなり尻尾をつかまれ、引っ張られた。

~(= ^・・^)=o お手だじょ♪

「まさか・・・」慌てて振り向く。

/(=・x・=)\v

「って・・・お前たち?!」

σ(=^‥^=)カムロだじょ♪/(=・x・=)\ディオです(はあと)

「お前らどうしてここが?」

「ぱたっこさんが案内してくれたの(はあと)」

ディオが指差す先に、嬉しそうに一回転するぱたっこがいた。

「・・・あり・・・」不覚にも目頭が熱くなるマートン。

「マートンお兄ちゃんだけじゃ、どうにもならないから
お手伝いしてあげるね(はあと)」

~(= ^・・^)=o おかわりだじょ♪

「しめるぞ、おめえら」(-_-X)

(=^‥^=)σ開けるじょ♪

カムロはトコトコと本の前に移動すると

o⌒◇)<炎炎炎炎炎炎炎炎炎炎

「お、おいっ!!!そりゃやばいだろ・・・ん・・・?!」

こんがりと焼け跡がつく本の中に、全く火を寄せ付けない部分があった。

(=^‥^=)σみっけだじょ♪

「よっしゃぁ!」
マートンはWIZに変身。自分にエンヘイをかけワンコに戻る。

※o(^‥^=)ノフレー※\(=^‥^=)/※フレーヽ(=^‥^)o※フレーだじょ♪

ドカッ・・・ド~~~ン

鈍い音がして、先程カムロが指差した辺りに空間が広がった。

「全弾命中~」/(=・x・=)\v
「ディオね、今ボトル姫なの(はあと)」

「・・・オレの出番が・・・」(-_-X)

「お兄ちゃん、早く!」

ガックリとうなだれ溜息をついてから
マートンはディオとカムロの後を追った。

それを見送ってぱたっこはもう一度一回転すると
ふっと姿を消した。

----------------------------------------

”出でよ、6元素!”
WIZが五芒星に向かい漆黒の魔力を吹き込む。

火、水、風、大地、光、闇。

6つの元素はそれぞれ赤、青、緑、黄、白、黒の光となり
ミルティクの周囲を螺旋状にまわり始めた。

「わぁーーー」ミルティクは左手で頭を右手で胸を押さえ、
凍りついたようにその場に立ち尽くす。

光がゆっくりとミルティクを包み込んでゆく。

”おぉ・・・”WIZは満面の笑みで深呼吸をする。
”想像以上の闇だ。なんと心地よい”

それぞれの元素の光は膨張し、旋回し、ミルティクの姿は
見えなくなっていった。

”そんな赤ん坊はどうでもよいわ・・・お前もこちらへ来て、
この心地よい闇を喰らおうぞ”

すでにWIZではなく、
黒い水晶球へ姿を変えていたそれが呼びかけると、
ジェイドの見張りをしていたWIZは舌なめずりをして
ふっと消えた。

五芒星の中心で6色に輝く人型。
その周りをねっとりと揺らめく、2つの黒い水晶球。

”赤ん坊どもの生命力は我々の力にはならんからな・・・
この深い闇の力こそ、我々の力・・・”

チリチリと音を立て、少しずつ大きくなってゆく黒い水晶球に
悦楽にひたった表情のWIZの顔が映し出されていた。

-------------------------------------------

本棚を抜けると、そこはありふれた内装の書斎。

が、彼らが通ってきたはずの通路は消え、
3人は部屋の真ん中に立っていた。

「一方通行なんだ・・・攻撃したらまた通れるかしら(はあと)」

蝿殺しを構え、今来た辺りを攻撃しようとしているディオを
とりあえず止めて、マートンは周囲を窺った。

「おっ、ジェイドの匂いゲット♪」

床に座ってお食事中のカムロの首根っこを掴みぶら下げる。
ディオには手招きをしてマートンは進み始めた。

廊下の先は行き止まり。

「この先に間違いないんだが・・・」
嗅覚とサイコロで確信しているマートンは、壁を叩きながら入口を探す。

※o(^‥^=)ノフレー※\(=^‥^=)/※フレーヽ(=^‥^)o※フレーだじょ♪

「ディオ、壊してみるぅ~~~う(はあと)」

「下手に攻撃すると危ないからな^^;;;」

「えっ~~~つまんないぃ~~~」
地団駄踏んで振り回したスリングの先が
何かに当たった。

「えっ?!」

ゆっくりと目の前の壁が消えてゆく。

v ̄(= ̄ー ̄=) ̄ v

「オレたちやっぱりラッキー~♪」

再度、床に座ってお食事中のカムロの首根っこを掴みぶら下げると
先に飛び込んだディオを追ってマートンも先へ進んだ。

----------------------------------

「で、どうするよ、これ」

マートンは、目の前に広がる光景に肩をすくめた。

見張り役だったWIZは、自分がここを離れる際、
モンスターをテンコ盛りで置き土産にしていた。

(=^‥^=)σ1、2、3・・・いっぱいだじょ♪

σ/(=・x・=)\ディオ、頑張れる~(はあと)

※o(^‥^=)ノフレー※\(=^‥^=)/※フレーヽ(=^‥^)o※フレーだじょ♪

この状況で怖がるどころが楽しげな2人に苦笑しつつ
マートンはWIZに変身、全員に支援をかけた。

σ/(=・x・=)\ノ ディオいきま~す(はあと)

ダメルでのあの事件の時、

あのままあそこにいても、マートンの足手まといにしかならないことを
ディオが一番よく知っていた。

それまでの生活では、無難に支援リトルになれば
それで事足りると思っていた。

でも・・・

いざというとき、何も出来ないのは嫌だった。

Cymruのようなレベルの支援は姫・リトルでは不可能。
ならば・・・火力になるんだ!

3,4歳の子供たちのクラスから学びなおして、
能力とスキルを磨いた。

今ではいっぱしの知識姫。

「うそ泣き~」舌をぺろりと出してから大音量でうそ泣き。
モンスターたちのターゲットにならなくなると
「フラワーシャワー~(はあと)キャンディーシャワー~(はあと)」
華麗にステップを踏みながらモンスターたちの中に飛び込み、
花とお菓子を振り撒き始める。

その効果で、目の前のモンスターたちに大混乱が巻き起こっていた。

マートンは、キャンディーシャワーに釣られて、
モンスターたちとお菓子争奪戦をしていた
カムロの首根っこを掴みぶら下げ、安全な場所に避難させると、
シャワーの効果が現れていないモンスターを狙って攻撃を仕掛け
止めを刺す。

ディオはもう一度思いっきり「うそ泣き」でターゲットをはずすと
カムロの横に戻り、リトルに変身。

「はぁ~い、みんなぁ~楽しんでる?(はあと)
いくわよ~”レッツダンシング”♪」
ディオの歌声が響き、”レッツダンシング”スキルが発動。
強制的に踊らされるモンスターたち。

「・・・タゲはずして抵抗下げて混乱させて踊らせるのか・・・
えぐいな(遠い目)」

「まだまだでぇ~す(はあと)」 ̄(= ̄ー ̄=) ̄ v

「天空に輝く星々よ、古からの盟約によりその力我が元に・・・
ウルトラノヴァ!!!」

モンスターたちに降り注ぐ隕石の雨。
混乱し踊らされたまま、次々と倒れていく。

※o(^‥^=)ノフレー※\(=^‥^=)/※フレーヽ(=^‥^)o※フレーだじょ♪

「こりゃ楽だ。オレって本当にラッキ~♪」

全員に支援を掛け直して、マートンは最後の仕上げにかかった。

-------------------------------------

「いい汗かいたな~」

ディオが配った赤ポで乾杯してから奥に進む。

「見つけたぜ♪」マートンが黒い鼻をヒクヒク動かす。
3人の前には、繭のような白いカプセル状のもの。
中にはすやすやと眠る赤ん坊。

「間違いない。見た目は違うが、こいつがジェイドだ」
くんくんと匂いを確かめるマートン。

「かわいい(はあと)」顔を近づけて目を輝かせるディオ。

「なんの罠もないのが気にかかるが・・・」
腰から白いサイコロを取り出しふる。

「危険はなし。か・・・」

「あ、そうだ、これ・・・」
ディオはドレスのポケットから小さな瓶を取り出した。
「ジェイドちゃんに飲ませてあげると、またネクロになるんだって」

「飲ませるったって・・・」

※o(^‥^=)ノフレー※\(=^‥^=)/※フレーヽ(=^‥^)o※フレーだじょ♪

「カムロ、お前・・・なんかさっきから、
あさっての方向向いて応援してないか」(-_-X)

(=^‥^=)v

「ジェイドちゃんが武器持っててくれれば”武器変身”であそこにいけるのに;;」

ドンドンとカプセルを叩いてみるがジェイドは目覚めない。

「乗り移るスキルねぇ・・・
あっ!”ディスプレイスメント”があるぞ。
婆ぁたちの話だと、オレもあいつも実態じゃないんだろ?
要はアンデット。効くかもしれねぇ」


「ディスプレイスメント」本能だけを胴体から分離させ、相手に転移する。
転移中は瀕死状態になって攻撃を受けなくなり、相手が死ぬまで操縦できるが、
転移に失敗すると体力を著しく失う危険なスキル。

「死んじまってるってある意味、強えぇよな・・・死ぬ心配ないから
瀕死でも気にならねぇ♪」

マートンは青ポを飲み干すと、呪文の詠唱をはじめた。

※o(^‥^=)ノフレー※\(=^‥^=)/※フレーヽ(=^‥^)o※フレーだじょ♪


”ここどこかな・・・?”ジェイドの意識は外へ向かおうとする。

”よぉ♪”

見上げた先にはマートンの姿。

”お兄ちゃんだぁ^^”

ちっちゃな手足をいっぱいに伸ばしてきたジェイドを
爪で傷つけないように注意しながらそっと抱き上げるマートン。

カプセルが静かに開き、ハイハイしながら赤ん坊が出てきた。

-------------------------------------

「ジェイドちゃん?マートンお兄ちゃん???」

「オレだバブぅ~・・・ってなんだこのしゃびりかたバブぅ~」

カムロとディオは顔を見合わせ・・・大爆笑!!!

「こらバブぅ~」笑い転げているディオからなんとか瓶を奪い取ると
マートンはそれを一気に飲み干した。

つもりだったが・・・

傍目にはお座りをして哺乳瓶をくわえている赤ちゃんにしか見えない。

(=^‥^=)σお手だけじゃなくてお座りできるじょ♪エライじょ♪♪♪

ホギャ~ともフギャ~ともつかぬ声を上げつつ、なんとか飲み干したマートン。
その姿がネクロに変化したことを確認すると、自分の体に戻った。

「お前ら覚えてろよ」(-_-X)

床に両足を投げ出してちょこんと座っていたネクロの目がゆっくりと開いた。

「ジェイドちゃん?」

目をパチパチ、首を上下左右に動かしてから、
声をかけた相手をじぃ~~~っ・・・

「ディオちゃんだぁ!!!」破顔一笑。
機敏に立ち上がるとディオに飛びついてくる。
2人は抱き合ったままぐるぐる回ると少し離れて互いの手をとり
見つめ合ってニッコリ微笑んだ。

σ(=^‥^=)カムロだじょ♪

「あぁ~~~カムロだぁ~~~」駆け寄って頬ずり。

\(*^▽^*)/嬉しいじょ♪

WIZに変身し、自分にアスヒをかけながら
その様子を見ていたマートンはワンコに戻った。

「マートンお兄ちゃんみっけ♪」
ジェイドは満面の笑みで近づくと躊躇なく、マートンの胸に飛び込んだ。

下手に抱きしめると爪で傷つけてしまいそうで、
マートン傍目からみるとちんちんワンコ状態。

(=^‥^=)σちんちんも出来るじょ♪スゴイじょ♪♪♪

「カムロ、お前、褒めてないだろ・・・」(-_-X)

「ジェイドね、ジェイドね、
絶対お兄ちゃんが助けてくれるって思ってたの。
ありがと^^」
胸に頬ずりしてから顔を上げ、マートンを見つめると牙を気にせずキスする。

※o(^‥^=)ノフレー※\(=^‥^=)/※フレーヽ(=^‥^)o※フレーだじょ♪

「そこは応援するところじゃないだろが^^・・・・いてぇ;;」

いつの間にかマートンの後ろにまわっていたジェイドが
興味津々の様子でマートンの尻尾を思いっきり引っ張った。

「あっ><ごめんなさい;;」

(=^‥^=)σボサボサだじょ♪

「ほんと、ボサボサね・・・マートンお兄ちゃん、
全然尻尾のお手入れしてないでしょ!」/(=¬x¬=)\σ

思わず振り向き、自分の尻尾をしげしげと見つめる。
「風呂に入ったときはちゃんと洗ってるぞ・・・」もごもごと言い訳。

\(*^▽^*)/ふかふかふさふさワンコさんいるじょ♪
(〃▽〃)はぐはぐむっぎゅ~すりすりしてくれたじょ♪
ご飯もケーキもうめかったじょ♪(~Q~)

「ディオもそのワンコ様に会いた~い」

「ご飯?ケーキ???」ジェイドが怪訝そうな顔をする。

「えっ~~~?!ジェイドちゃんご飯食べないの?」

「そういや生き返ってから腹、減らねぇなぁ・・・」

「そっか;;ジェイドちゃんってご飯食べたりお菓子食べたりしたことないんだ・・・」

「骨んときゃ飲み食いできなかったけど、この体のときは出来るぜ♪」

「・・・マートンお兄ちゃん、お酒の臭いしてるもんね」/(=¬x¬=)\σ

「ええっとぉ^^;;;
ま、まあ、それはおいといて、ここ出たらジェイドも何か食べてみればいい」

「前、食べたけど下に落ちちゃったのがケーキよ」

-------------------------------------

ディオたちが初めて会った時---


「ここ、座ろう^^」幼女は白い砂の上に転がった。

「楽しかったね~」ディオはスカートの裾を気にしながら横に座る。

σ(=^‥^=)ハラ減ったじょ♪

「おやつにしよう♪」ディオは鞄を開けると、次々にお菓子を取り出す。

(=^¬¬^=)σ 300ゴールド以上あるじょ

「聞こえません ̄(= ̄ー ̄=) ̄ はい、あなたもどうぞ」

「これ何?」ケーキを不思議そうに見つめる幼女。

「えっ~~~知らないの?!」

こうやって喰うもんだじょ♪ (~Q~)ア~ン

「へぇ~」おそるおそる手に取り口に運ぶ幼女。

が・・・
確かに口に入れたはずのケーキがそのままストンと下に落ちた。




「ジェイド思い出した♪白くて柔らかくて上に赤いの乗っかってたやつだ^^」

「ジェイドちゃんあたり(はあと)」

※o(^‥^=)ノフレー※\(=^‥^=)/※フレーヽ(=^‥^)o※フレーだじょ♪

「カムロ・・・お前、さっきから誰応援してるんだ?」
明らかにおかしなタイミングで応援し始めるカムロにマートンは尋ねた。

ヽ(=^‥^)o※” 石さんだじょ♪

「石って^^;;;・・・あっ!石化されちまった2人がいたな」

「アウィンとミル様ね」ディオが頷いた。

「・・・片方は呼び捨て片方は様付かい^^;」

「ガキはどうでもいいもん」 ̄(= ̄ー ̄=) ̄

「へいへいへいへい・・・」溜息をつきながら2人の匂いを思い出し探す。
「微かだが・・・向こうだ!」

WIZに変身。全員に支援をかけワンコに戻ると
「・・・だから、尻尾引っ張るなって;;」

尻尾をむんずと掴んで
不安そうに自分を見つめるジェイドを背中に乗せ
ワンコ、ウサギ、ドラゴン&ネクロは、その部屋をあとにした。

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自分にもし本当に能力があるのなら
何の役にも立たない欠陥品でないのなら
それを確かめてみたい。

それは渇望だった。

この誘いの本当の目的がミルティクの魂であろうことは
容易に予測出来たが、この誘惑に抗うことは出来なかった。


6つの光が己を包み始めたとき
ミルティクは賭けに出た。

得意の結界術で光が押し寄せてくるのを止めると
両手で胸の石を握り締め祈った。

”私の本当の願いを預って欲しい”と

応え(いらえ)の代わりにあの赤い動物が
※o(^‥^=)ノフレー※\(=^‥^=)/※フレーヽ(=^‥^)o※フレーだじょ♪
と踊っている姿が脳裏に浮かんだ。

”ちなみにそこの赤い御子は、由緒あるエンシェントドラゴンの幼生であらせられますじゃ”
ふうの言葉が思い出される。

”こんな無茶な願いをそんな風に受けて下さるのですか・・・”
ミルティクはこみあげてくる想いで結界が揺らいでしまいそうなのを
必死でこらえた。

石を握り締めた手に力をこめ、深呼吸をしてから無言詠唱。
ゆっくりと離した左手でミルティク自身に、あらん限りの強力な催眠術をかけた。

意識が途切れる瞬間、石に向かって頭を下げる。
”ドラゴンの王となるお方に総てを託します。ご尽力感謝!”

結界が消え、6色の光がミルティクを飲み込んだ。

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”次はあいつの魂を喰らいたいねぇ・・・”

ミルティクから溢れ出した闇の力を喰らい
至福の時を堪能している2人のWIZは
ジェイドたちのことなど忘れ去っていた。

総ての光がミルティクと融合し、消えた。

五芒星の中心で右膝をつき、
右手を胸に左手を左膝に置いていたミルティクが
ゆっくりと立ち上がる。

「ご気分はいかがですか?」

右はプラチナ、左はルビーの輝きを放つ瞳を持つ美しき魔法使いは、
漆黒の長い髪をかきあげ、薄く微笑んだ。

黒い水晶球が鈍く光る。

ミルティクの周囲を、突然現れた数十体のモンスターが取り囲む。

敵を冷ややかに一瞥すると、ミルティクは、
杖を振りながら軽やかに一回転しつつライトニングサンダーを放った。
敵の速度が落ちたのを確認。そのままメテオシャワーを叩き込む。

彼にかすり傷ひとつ負わせられず、塵となるモンスター。

「素晴らしい・・・期待以上です」

「このようなものたち相手でお褒めいただいても
意味はありませんね」ミルティクは目を細めて杖を振る。

「これは失礼したようだ」2人のWIZは顔を見合わせて微笑んだ。

「では、あなたの望みをお聞かせ願えませんか?」

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ブロヌも言っていたように、魔のものたちが人の魂を喰らうためには
相手の望みを叶えてやらねばならない。

ミルティクが望みを口にし、それを叶えてやることが出来れば
彼の魂はこのWIZたちのものとなる。

「私の望み?何故そんなわかりきったことを聞くのですか・・・」
ミルティクはゆっくりと魔力をチャージしながら微笑んだ。
「私を押さえつけていた、力のみで戦うものを私1人の力で倒すこと。
強さだけが取り柄の輩を私の力の前に屈服させ、
私のほうが優れているのだと認めさせることです」
その口調は徐々に熱を帯び、その視線はWIZたちを通り過ぎ
遠くに向けられていた。

ミルティクの体からまた黒い瘴気が発せられる。
WIZ達は深呼吸すると悦楽の表情を浮かべた。

”「私1人」というのは余計だが・・・まぁ想定内の望みだな”
”あぁ・・・では打ち合わせどおりに・・・”

「その望み、叶えて差し上げますよ」
WIZ達はクックと笑うと先程までミルティクが立っていた五芒星に向かい黒い光を放った。

五芒星の中央でその光は人型となり、石化したアウィンが現れた。

2人のWIZが両側から印を結び、五芒星に向けるとその中心から白い煙のようなものが立ち昇る。
それが消えると、五芒星の上に生身のアウィンが倒れていた。

WIZたちはゆっくりとアウィンに近づくと彼を抱き起こし、1人はフルチャをもう1人はフルヒを飲ませた。

一瞬のうちにその場から飛びのくアウィン。
魔法攻撃がぎりぎり届かぬ距離で腰の剣を抜いた。

「これはこれは・・・」WIZの1人が口笛を吹いた。
「たいしたものですな」もう1人がにっこりと微笑む。

「ご機嫌いかがですか?アウィン様」

肩に手を置かれ、アウィンはぎょっとして振り向いた。
なんの気配もなく近寄ってきたのか?

「ミル!」一瞬で相好を崩す「よかった、無事だったの・・・」
アウィンは無意識のうちにミルティクから飛びのいた。
戦いを生業とするものの本能が、彼は危険な存在であるとアウィンに告げていた。
「お前は誰だ?!」

「これはおかしな質問をなさいますね・・・私はミルティク=ルティス。
お忘れですか?」
言葉とともに発せられた炎がアウィンを襲う。

反射的に避け、射程圏内からはずれたところで剣を構えなおした。

ミルティクの背中に大きな白い羽が見えた。
次の瞬間、アウィンを襲う雷。

ステップを踏むようにそれを避けると、アウィンはミルティクを見つめる。
「お前、ミルではないのか?」

その問いには答えず、ミルティクは杖を振り、魔力をチャージする。

「私は今、本来の力を手に入れました!」晴れやかに宣言し、
「あなたたちが私に与え続けた不当な扱いの報い、受けるがよい」
振りかざした杖の先に燃えさかる火の玉。
「ファイアーボール」
アウィン目がけて放たれる。

左右に盾をかざしその攻撃をかわすアウィンであったが
1発が鎧を直撃する。
その威力に体ごと吹っ飛び、なんとか体勢を立て直すと
片膝をついて大きく息をした。

「これは素晴らしい・・・剣を振り回すだけのあなたたちより、
確かに私のほうが上だ」ミルティクは哄笑した。

「何故こんなことを・・・」
衝撃と熱に顔をしかめながら立ち上がるアウィン。

「何故?それは愚問ですね、アウィン様」

なんとか間合いをつめようとじりじり移動するアウィンを
視線だけで追いながら杖を振るミルティク。

「あなた方が怖れ、
価値がないと思い込ませようとした力を
お見せしているだけです」

「もはや戦うしかないのか・・・」
アウィンは大きく溜息をつくと目を閉じ、
悲しげに頭を振った。

「やっと本番のようですね」
ミルティクは自分にエンヘイをかけるとニヤリと笑った。

「ああ・・・貴様がミルの皮をかぶった悪魔なら、私の手で葬ってやる」
アウィンは剣を構え、腰を落とした。

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部屋の外には---
なにもなかった。

闇も光もないただの空間。
今立っている場所から動けばどうなるのか
予測がつかない。

振り向けば、今通ってきたはずのドアも消え、
ワンコ、ウサギ、ドラゴン&ネクロは
何もない空間に立っていた。

「怖いよぉ・・・」

背中で泣き出したジェイドを
おんぶするような体勢でなだめるマートン。

「あぁ~~~お兄ちゃんの手、プニュプニュだ♪」
今泣いたカラスがなんとやら、マートンの肉球の感触に
機嫌を直すジェイド。

(=^‥^=)σマートンエライじょ♪

「・・・褒めるとこじゃないだろ」(-_-;)

※o(^‥^=)ノフレー※\(=^‥^=)/※フレーヽ(=^‥^)o※フレーだじょ♪

完全におもちゃにされている手が気になるが、
泣かれるよりははるかに気が楽なので、
我慢することにしたマートンは、目を閉じて周囲を窺った。

「匂いは向こうからだが・・・」
背中からジェイドを下ろし、カムロと手を繋がせるとWIZに変身、
ファイアーボルトで辺りを照らしてみる。

が、燃えるものも照らし出されるものもない。
ワンコに戻る。

すかさずジェイドが空いているほうの手でマートンと手を繋ぎ、
肉球プニプニ開始♪と、カムロが反対側に回り、もう片方をプニプニ~

苦笑するしかないマートン。

「鳩さんはこられるわね」
リトルに変身してなにやらゴソゴソしていたディオが、
鞄を重そうに下ろすと、全員にPOT、カムロとジェイドには
ケーキも配る。

\(*^▽^*)/ありりだじょ♪
カムロはすぐに(~Q~)ア~ン。

ジェイドも真似をしておそるおそる口に運ぶ。
そして満面の笑み。

「鳩さんケーキは日持ち優先だから味はいまひとつなの;;
あとで、も~~~っとおいしいケーキ食べようね^^」

「うん♪お約束だよ^^」

ディオ、カムロ、ジェイドは指きりげんまん。

「おい、ディオ、こんなにたくさんどこから・・・」

「”愛の伝書鳩”さんに運んでもらいました~。
お金足りなかったから、マートンお兄ちゃん宛に
請求書送るようにお願いしました(はあと)」

「・・・ヲイ・・・誰がそんなもの払う・・・」

マートンの抗議をスルーして、ディオは華麗に一回転。
「我、ここにその美しき姿求めたり、ローズガーデン!!!」

「わぁ~~~キレイ~~~」
ジェイドは両手を広げると、目の前に現れたバラ園に向かって走り出した。

「ローズガーデンが出来てる場所は動いても平気なはずよ。行こう!」

「ディオ、お前・・・」
いつの間にこんなにいろいろなことが出来るようになったんだ?!

”さすがあの婆ぁが可愛がってるだけのことはあるな・・・
ただの我儘ウサギじぇねぇってことか。
やっぱオレってラッキーじゃん♪”

この状況を楽しんでいるかのようにはしゃぎながら
ワンコ、リトル、ドラゴン&ネクロは、ローズガーデンを辿り
進んでいった。

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アウィンとミルティクの戦いが続く中、
WIZの姿を借りていた2人は、その姿を保つことを放棄していた。

おそらくは、これが実態なのであろう。

背骨が後方に湾曲し、前屈みになった真っ黒な胴体に
手足がのめりこんだような姿。

ミルティクから瘴気が放たれる度に
ゆらゆらと蠢き、それを貪り喰う。

ワンコ、リトル、ドラゴン&ネクロは目の前の光景に
呆然と立ち尽くしていた。

容赦なく襲い掛かる魔法攻撃を間一髪でかわし、
魔法詠唱の一瞬の隙を突いて鋭い攻撃を仕掛ける剣士。

それを微笑みながら避け、炎を発するWIZ。

その2人の周囲を蠢くぬらぬらとした黒い2つの塊。

「怖いよぉ・・・」涙目になったジェイドを慣れた手つきでおんぶし
肉球を触らせながら、マートンは全員を自分の後ろに下がらせ、
様子を窺う。

「これ以上、近づくな・・・あの魔法使いの範囲、ヤバイ」

闇を喰らうことに夢中で
侵入者に頓着していない黒い塊たちとは違い、
アウィンとミルティクは4人に気がついていた。

が、そちらに関わる余裕はない。

「・・・あんなの、ミル様じゃない・・・」
ディオがブルリと体を震わせて呟いた。

「ああ・・・なんかヤバクなってやがる・・・」

ヽ(=^‥^)o※”フレ~フレ~だじょ♪
流石に派手に動くと危ないと判断したらしく、
控えめに応援するカムロ。

と、カムロの体が微かに光る。

「・・・ん?なんだ今の」
カムロのお腹のあたりから霧のような赤い粒子が飛び散り---
消えた。

ミルティクはチラリを4人の方を見てから
アウィンに視線を戻し、杖を振る。

「アウィン様、あなたは先程、私が悪魔だとおっしゃった」
ミルティクは艶やかに微笑んだ。
「もし、そうならば、そうさせたのはあなたたちですね」

ミルティクがパチンと指を鳴らす。と
彼の手にはレイピアが握られていた。
素早く自分にエンヘイ。

「魔法使いなのに武器が使えるのかよ・・・」
マートンが鼻にしわを寄せて唸る。

「しっ!」ディオはそのわき腹に容赦なく蹴りを入れる。

互いに相手を見据えじりじりと間をつめてゆく。

先に動いたのはアウィン。
テレポで避けたミルティクのすぐ横の床が
ザクリとえぐりとられていた。

「全く、なんていう馬鹿力なんでしょうね」
小首を傾げて微笑むとエンヘイをかけなおして、
レイピアを構える。

アウィンも素早く体勢を戻すと、手にしていた盾を空中に放り投げた。
トワーリングプロテクター。
盾は高速回転をはじめ、生じた渦巻きが周囲を切り裂く。

「げ、やべ」慌てて首を引っ込めるマートン。

視界が開けるとそこにはファウンテンバリアに護られ
何のダメージも受けていないミルティクの姿。

「知識のない魔法攻撃など子供の手品と同じですね。
あなたも少しは学ぶべきだ!」
バリアを解くとすっと前に出た。
「ライトニングサンダー」

アウィンの剣を雷が直撃する。
そのまま地面に叩きつけられたアウィンの手から転がった剣を
テレポで近づき、足で遠くへ蹴るミルティク。

「これで終わりです」
ミルティクはレイピアをアウィンの心臓めがけて振り下ろした。

口元を押さえたディオから微かな悲鳴が漏れた。

----------------------------------

2つの黒い塊が興奮した様子で近づいてくる。

ミルティクのレイピアは、アウィンの心臓をあと少しで貫ける所で止まった。

”何故止めを刺さぬ!”怒りに満ちた思念が場に満ちる。

「つまらない。実につまらない!」ミルティクは感情のない声で言い放った。

大きく瞳を開けてミルティクを見ていたアウィンは一瞬の隙をついて
体を反転し、素早く剣を拾う。

「これが、国で5本の指に入ると讃えられた者の力だというのですか?」
ミルティクは薄く笑う。
「全く相手にならない」ミルティクは黒い塊に向かいレイピアを向けた。

「彼は本来戦士。
怪我で腕一本使いものにならない彼に勝っても何の意味もない」

ミルティクは剣を構えなおしたアウィンをチラリと見て
レイピアを下ろし俯いた。

「今殺して、あの世から”腕が使い物になっていればお前になど負けなかった”と
負け犬の遠吠えを聞かされるのは真っ平だ」

そして静かに顔を上げる。

”ふむ・・・面白い・・・”黒い塊は笑うように揺らめいた。
”折角ミルティク殿からいただいた魔力を減らすのは惜しいが・・・”
片方の塊の呟きにもう1つが続けた。
”この戦いに決着がつけば極上の闇が手に入る・・・”

2つの塊の手に当たる部分らしき所から
なにやらぬらぬらとしたものが床に溢れ、
アウィン目がけてゆっくりと移動し始めた。

”すぐに済みます。ご安心を”

その瞬間、床で蠢いていたそれは
細かい粒となり、アウィンの腕に絡みついた。

------------------------------------

反射的にそれを撥ね除けようとしたアウィンであったが、
思いのほかそれは心地良いものであった。

重く冷たいままであった二の腕に温かな感覚が戻ってくる。
盾を右に持ち替え、左で剣をふるってみる。

”いける!”久々の感触であった。

「シマーリングシールド!」右手の盾を放り投げ、戦士に変身。
両手で剣を構え、にやりと笑った。

「ご復活、誠におめでとうございます」ミルティクは口元だけで微笑み
深く一礼した。
「これで、私に倒されても言い訳はできませんね!」

白い翼と燃え盛るエンチャがミルティクを包む。

マートンがアウィンに支援を飛ばす。

それをチラリと見て、こちらに右掌を向けると
「フレイムストーム」

「やべぇ、避けろ!!!」
マートンはジェイドに覆いかぶさるように倒れこみながら叫ぶ。

だてに長くは生きていないのだろう。
危機回避能力は高いらしいカムロは
咄嗟にカーペットのように床に這いつくばって炎を避ける。

ディオも華麗なステップで身をかわすとそのままジャンプ、
「ビッグサービス(はあと)」

ジェイドを庇って受けたマートンの傷が応急処置される。

「あり♪」立ち上がり、自分にアスヒ。
青ポを飲むと全員に支援を掛けなおした。

「お前の相手は私だ!」

ミルティクの後ろに回りこみ、ジャンプしたアウィンの剣が振り下ろされる。

剣と剣との火花が飛び散る。

一撃の威力はアウィンが上。

だが、ウェイトが軽い分小回りがきくミルティクの
変幻自在の動きとエンヘイの威力の差、
魔法攻撃の射程の長さがじりじりとアウィンを追い詰める。

「・・・このままだとヤバイぜ」
両手を膝に当てて、肩で息をしながら呟くマートン。
ミルティクの牽制にジェイドたちがいる場所からでは危険だと
自分にヘイストをかけては飛び出し、
アウィンにエンヘイ、アスヒをかけて
ジェイドにドローボディーで呼び戻してもらっているマートンは
明らかにスタミナ切れ。

(=^¬¬^=)σ エラクないじょ

/(=¬x¬=)\σ じじくさぁ~い


「安らかに眠ってたのを叩き起こされたんだ。
体力なんぞあるわけねぇだろうが!!!」(-_-X)

「お兄ちゃん・・・」ジェイドがマートンのコートを引っ張る。
「ジェイド、ねむい・・・」緊張と疲れでフラフラしながら
右手で裾を握り締め、左手で目をこするジェイド。

「ジェイドちゃん、も少し頑張ってね」
リトルに変身したディオが身をかがめて
ジェイドの頭を優しくなでる。

「星々よ、古よりの盟約により、我に力、与えたまえ」
右手を高く掲げ、スティックをバトンのように回転すると
大きく息を吸い込み
「アイドルスター♪♪♪」
澄んだ歌声がその場を包む。

ミルティクが一瞬、その声に気をとられた隙に
アウィンのディレイクラッシングが襲い掛かる。

「甘い!」

床に落ちたのは一掴みほどのミルティクの髪。
そしてアウィンが手にしていた剣の先。

すれ違った2人は振り返り睨み合う。

ミルティクはすっと視線をはずし、レイピアを構えなおすと
その切っ先をアウィンの心臓に向け、走り出した。
























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