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カテゴリ:科学技術
グリーンで低エネルギーなCO2を排出しない水素製造法が求められています。
電気分解・メタンからの製造・光触媒とは異なる画期的な水素生成法について 広島大学【研究成果】世界初、水素の高効率製造法!高温・巨大施設での製法が、室温・実験室でも可能に 報じられました(2025/1/17) おおざっぱにこの方法を説明すると ボールミルという固体を粉砕する装置を使います ![]() 上図の装置はFritsch社、この実験に使われたかわかりませんが、十分な機能は有しています。 W82XD52XH48cm、容器容量は500mLまでです。 写真左側の円筒形容器にタングステンカーバイド球とチタン粉末と水を入れます。 ![]() 容器は自転しながら、台座は反対方向に回転します。 ![]() で、ガシャン・ガシャンと回転させると、水が分解されて水素が発生します。 この方法のすぐれた点は ①室温付近(30-38℃)、低圧で合成できること これまで水を分解するために高温(600~2000℃)、高圧での反応が必要とされてきたが、 この方法は反応温度は室温でスタート後、摩擦熱で38℃まで上がります。 ②小型装置(50cm程)でも可能 これまでの広大な敷地(数100メートル四方)を必要としてきたが、50cmほどの小さな装置で製造できます。 ③海水からも高効率に水素を製造できる ④オンサイト(必要な場所)、オンデマンド(必要な時)での水素製造 ①-③の特性のため実験室や水素が必要な場所で生産できるので水素運搬が不要になる (1)どのような方法か見ていきましょう。 ボールミルに水、金属粉末 (Al、Ti、Zn、Fe、Mn、Sn) を入れ、下図(広島大学の同サイトから)のように自転と回転を同時に行います。 ![]() 特にTiを用いると、水素製造の収率は1,600%に及んだ。これは化学反応式(Tiと水の酸化還元反応)から想定される量の16倍となる大過剰の水素が生成しました。 ![]() チタンが酸化される過程で水素H2が水から生成します。 ミルのタングステンカーバイドまたはステンレス球によりTiO2がTi2O3に還元し、それがさらに水から水素を生成し、これが繰り返されます。 (2)容器内の温度と圧力変化 ![]() 上図、容器内の(a)温度の時間変化、(b)圧力の時間変化、(c)生成した水素量の時間変化を示しています。 生成速度が圧倒的なチタンTiの温度変化は38℃でした。 (3)局所的に超臨界水ができている 水は高温・高圧の臨界点(374 ℃以上、22.1 MPa(218気圧))を超えると超臨界水になります。 ボールの衝突の瞬間に水は超臨界に達します。(下図、相図) 超臨界水は非常に活性が高く(強い酸化剤)、ステンレスさえ一瞬で酸化されるほどです。 超臨界水は物質を激しく酸化し、自分自身は容易に還元され、水素を生成します。 ![]() 上右図dはボールミルの回転数による水素生成速度です。 一分間700回転でかなり高くなります(さらなる回転数は不明)。 それほど高くない回転数です。 水素生成に投入するエネルギーは電気分解やその他の分解法よりかなり低くなることが期待できます。 (4)海水や雨水、河川水でも材料になる ![]() 上の図はろ過した海水(青)と蒸留水(赤)の水素生成の比較です。 小型でエネルギー消費も少なく、酸素も発生しない。 原料の水も多少汚れていても利用できる。 場所を選ばない、水素発生設備として期待できそうです。 原論文 著者名:Takuya Yamamoto,1 Sho Ashida,2 Nanami Inubuse,1 Shintaro Shimizu,2 Yui Miura,2 Tomoya Mizutani,2 Ken-ichi Saitow*,1,2,3 1. 広島大学大学院 理学研究科 化学専攻 2. 広島大学大学院 先進理工系科学研究科 化学プログラム 3. 広島大学 自然科学研究支援開発センター 研究開発部門(物質科学部) 掲載雑誌: Journal of Materials Chemistry A, 2024, 12, 30906-30918 昨年、水素エネルギーの社会・産業への利用と開発の現状について、 8回にわたり解説してきました。以下のリンクからたどることができます。 ご覧ください。 水素H2エネルギー⑧水素の貯蔵→2024/2/20ブログ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2025.10.01 10:52:42
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