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カテゴリ:コンピューター
2025年10月6日ノーベル賞医学生理学賞で坂口志文氏他2氏が受賞したのに続き、 10月8日に発表されたノーベル化学賞は 京都大学の北川進特別教授(74)と、 リチャード・ロブソン教授(メルボルン大学)、 オマー・ヤギー教授(カリフォルニア大学バークレー校)の3氏が受賞しました。 ![]() (REUTERSから引用) 受賞理由は、「金属有機構造体(MOF: Metal-Organic Frameworks)の開発」です。 MOFは、金属イオンと有機分子が結合してできた、極めて微細な孔(あな)を無数に持つ多孔性材料で、天然ガスや二酸化炭素などの気体を貯蔵したり分離したりするのに役立つ新しい材料として、環境やエネルギー問題の解決への応用が期待されています。 <吸着する> この研究で、狙った分子を大量に吸着する道が開かれました。 「(物理的)吸着」はたくさんの小さな穴が開いた固体に気体分子がくっつく現象です。 冷蔵庫の脱臭剤に使われている活性炭は匂いの分子(気体)を表面に吸着し、離さないので脱臭剤としての役目をします。 ![]() 小さな穴の表面に分子が弱い引力(分子間力)でくっつきます。 さらに、分子の運動で穴の迷路に潜り込んでしまい出られなくなる。 冷蔵庫の脱臭ばかりでなく水質浄化にも使われます。 この他に、シリカゲル(水の吸着)、ゼオライトなどがあります。 <狙った分子を吸着する> ゼオライトという吸着剤があります。 特徴的な結晶構造を持ち、細孔の大きさが特定の分子を吸着します。合成ゼオライトは細孔の大きさが0.3nm、0.4nm、0.5nm(10-9m)の分子を吸着できるといった特性を持っています。これにより、狙ったサイズの分子を吸着できるようになりました。 <もっと精密に狙った分子を大量に吸着する> 金属有機構造体(MOF: Metal-Organic Frameworks)は細穴の大きさを精密にデザインできます。 内部に非常に多くの空間(孔)があり、その表面積はテニスコート一面分にも達すると言われるほど広大です。これにより、大量のガス分子などを吸着・貯蔵できます。 1グラムのMOFで、表面積が数千平方メートルに及ぶものもあります。 北川進教授は水素や二酸化炭素を吸収・放出できるMOFを作り、「呼吸する固体」と呼ばれています。 ヤギー教授はこの細孔の大きさを自由にデザインできるようにしました。 使用する金属イオンや有機配位子の種類を組み合わせることで、孔の大きさ、形状、表面の化学的性質を自在に設計・調整できます。 これにより、特定の分子だけを選んで吸着・分離するといった「分子ふるい」のような機能を持たせることが可能です。 <それって何の役に立つの?>エネルギー問題:水素、メタン(天然ガス)の効率的な貯蔵や燃料電池の触媒 環境問題:二酸化炭素 (CO2 ) の分離・回収、有害ガスの除去、水の浄化(重金属や有機汚染物質の除去) 医療・化学:特定の薬物を必要な場所に届ける(ドラッグデリバリーシステム)、高効率な化学反応の触媒 <金属有機構造体(MOF)ってどんなもの?> ![]() (Gemini) 上の図はMOFの基本的な構造です。 図中の大きな灰色の球は金属クラスター(Metal Cluster / 金属イオン)でフレームワークの角を形成します。 青い棒で示されているのは有機配位子(Organic Linker)金属クラスター同士を結合する梁として機能します。 規則的な網目構造の内部には、細孔が(図の赤い球や緑の球がある空間)が形成されます。 この細孔のサイズや形状は、金属クラスターや有機配位子の種類によって自在に設計できます。 図中の赤い球や小さな緑の球は、この空隙に取り込まれた分子(ガス分子、溶媒分子など)を表現しています。 MOFの機能は、この空隙でゲスト分子を吸着、分離、貯蔵、または触媒作用によって変換することです。 今年は2人目の日本人受賞です。 ![]() これまでに9名の日本人受賞者がいます。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2025.10.09 16:45:59
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