南鳥島沖のレアアース①新しいレアアース源
最近、話題の南鳥島沖レアアース泥についてまとめてみます。日本の排他的経済水域(EEZ)内である南鳥島沖の深海(水深約5,000〜6,000m)には、陸上の世界埋蔵量を大きく凌駕する数百〜数千年分の高濃度レアアース泥が埋蔵されていることが確認されており、技術的な回収・実用化に向けた研究開発が進められています。今回はレアアースとは何か、南鳥島沖レアアース泥の特徴について書いてみます。①レアアースとはレアアースはスカンジウム、イットリウム、およびランタノイド系の15元素(ランタンからルテチウムまで)の合計17元素の総称です。これらの元素は、さまざまな鉱石の中に薄く広く分散して含まれることが多く、特定の元素だけを分離して取り出すのが非常に難しいという特徴があります。採算がとれる形で効率よく回収するのが難しい、という意味で「レア(希少)」と呼ばれています。②どこに使う?1)永久磁石EVの駆動モーターや風力発電機、PCのハードディスク、エアコンのコンプレッサーなど、小型で高出力なモーターに不可欠な「ネオジム磁石」の原料です。主要元素: ネオジム(Nd)、プラセオジム(Pr)耐熱性向上剤: ジスプロシウム(Dy)、テルビウム(Tb)※特にDyとTbは高温下での磁力低下を防ぐため、EVモーターに必須の重レアアースです。2) 光学・ディスプレイ・LED(発光・透過特性)液晶ディスプレイ、LED照明、レーザー機器、医療用MRI画像診断の造影剤などに使用されます。蛍光体・発光体: ユーロピウム(Eu:赤色)、テルビウム(Tb:緑色)、イットリウム(Y:赤・青色)レーザー・医療: エルビウム(Er:光ファイバー増幅器)、ガドリニウム(Gd:MRI造影剤)3) 触媒・ガラス加工・化学分野自動車の排ガス浄化用触媒や、レンズ・半導体ウェハの精密研磨剤として大量に使用されます。排ガス浄化触媒: セリウム(Ce)、ランタン(La)ガラス研磨剤: セリウム(Ce)※酸化セリウムは液晶ガラスや半導体基板の表面を滑らかにする研磨剤として圧倒的なシェアを持ちます。4)金属添加剤・電池材料金属の強度や耐熱性を高める合金添加剤や、ハイブリッド車の二次電池などに用いられます。構造材料・軽量合金: スカンジウム(Sc):航空機・スポーツ用品向けアルミ合金)ニッケル水素電池: ランタン(La)③南鳥島沖のレアアース泥の成分内訳は?科学技術振興機構が示す元素別割合が以下です。特徴・メリットは、1)放射性物質を含まない陸上のレアアース鉱石の多くはウランやトリウムなどの放射性物質を伴うため、精製時の環境負荷が課題となります。一方、レアアース泥は放射性物質をほぼ含まず、環境に優しいという特徴があります。2)酸で抽出しやすいレアアースは泥の中の魚の骨や歯に由来する「アパタイト」と呼ばれる鉱物に濃集しています。アパタイトは希塩酸などの弱い酸で容易に溶けるため、比較的容易かつ高効率に抽出可能です。課題・デメリットは、3)技術的・コスト的ハードル水深6,000メートルという極限環境での連続的な大量採掘・揚泥技術の確立、船上・陸上での脱水・分離精製プロセスの低コスト化が必須です。しかも、日本から遠い。南鳥島は、東京より南東に約1,860kmに位置し、航空機では片道約4時間を要す日本の最東端の島です。 (面積1.51k㎡、最高標高約9m)4)海洋環境保護泥を引き揚げる際に発生する濁りや海水への影響を最小限に抑える「閉鎖型循環方式」など、環境負荷低減技術の実証が求められています。次の「南鳥島沖のレアアース②」では世界の現状=埋蔵量と供給・精製量についてまとめてみたいと思います。