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カテゴリ:独り言
そして、人間の内でもせいぜい体を使って仕事をするしか能のない人間こそ、これまで述べたものたちと同じように、支配されるほうが望ましい人間、つまり生まれながらの奴隷なのです。なぜなら、生まれながらの奴隷は他人の所有物となる能力を持ち、したがって現実に他人の所有物であって、知性のある者の言うことを理解する能力はあっても知性そのものは持っていないからです。
アリストテレス 『政治学』 第5章 戦後の混乱期に生まれた。 兄弟の半分は戦時中に亡くなっていた。 父親は勉強に関していつも厳しかった。母親はいつも何かして働いていた。 小学校でラジオを作った。中学ではなにもかも理解していて、 高校では勉強することは何もなかった。 大学へは金銭的な理由で諦めた。 ある企業の流通部門への入社試験を受けた。 IQ200と診断された。 驚いた企業は製薬開発部門へ配属した。 新栄養ドリンクの発売に奔走した。 ドリンクの値段を決めるのに2ヶ月かかった。 この2ヶ月で髪の毛が残らず白髪になった。 30年間同じ職場で働いた。 階級が上がるのは有名大学卒の後輩であった。 50代になり給料が半分になった。 30年間働いた開発から流通にまわされた。 サービス残業も文句を言わずこなした。 壊れた包装機械を一人で直した。 感謝の印はビール2杯だった。 残されたものは薄くなった白髪と返ってくることのない愛社精神だった。 そんな親父を見て育った。 さて、目の前にいるスーツを着た人間たちに僕は何を言えばいいのだろうか。彼らは僕を測ろうとしている。 希望は宙に浮いたまま泡となって消え、意欲は液体となって地に吸い込まれていく。 世の中にはうまく生きる人間とうまく生きれない人間がいる。 うまく生きれる人間はうまく生きれない人間を罵倒し、否定し、自らを演出し、後者の理由を強引にでも求め結論づけようとしている。 うまく生きれない人間はどんな不条理にも耐え、ひそやかに生きようとしている。しかし、そんな不条理に負けすべてを終わらそうとする人もでてくる。 うまく生きれる人間はその子供もうまく生きれる。 うまく生きれない人間はその子供もうまく生きれない。 それは摂理ではない。定義だ。 果たして、僕は彼らに何を訴えればいいのだろう。 その一歩が踏み出せない。 踏み出す先にある失われるはずの未来を恐れている。 だから目を瞑ることにした。 ほんの一瞬でいい。 目の前に広がる混沌とした事柄を否定したいんだ。 そうしたらなにかが変わるかもしれない。 目を瞑ると暗がりの中から無数の広がりを感じた。 広がり続ける暗闇と自分を同化させるために意識を均質化させた。 すると僕は混沌した矛盾だらけの檻の中にいた。 どうやら僕は逃れられないランニングマシーンの上に乗ってしまったようだ。 どこかで空気を切り裂き僕にめがけて飛んでくる矢の音が聞こえた。 その音はまるでワニのアクビのようだった。 僕はおそらく何千年、何万年後もそこに留まって待ちつづける。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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