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一、本土決戦迫る

一、本土決戦迫る

 昭和二十年三月下旬、日本内地は空襲につぐ空襲で、米軍の本土上陸の算
ありとの情報で一億総決起が叫ばれ、沖縄では陸海軍が死闘を繰り返し、航
空基地からは連日「日の丸」の鉢巻も凛々しい若鷲の特攻機が飛び立ってい
った。しかし、遂には飛行機が不足し練習機の赤トンボにまで爆弾をくくり
つけて文字通り肉弾となって敵艦目掛けて突っ込み若桜の如く散華していっ
た。正に、祖国存亡の時であった。

 連合艦隊健在なりと信じていた国民は、最後の望みをわが第二艦隊に賭け
ていたのだ。しかし、相次ぐ海空戦で我が海軍の艦船も残り少なくなり、我
らは呉軍港に脾肉の嘆をかこちながら碇泊し、日夜血をふく猛特訓に励んで
いたのであるが、連日の敵空襲に応戦せねばならず、至近弾のために負傷者
も出る始末であった。

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