47 探偵のその後
聡美とスタッフの28番が廊下を歩きながら話している。「歩きながらですみません」「いいのいいの 私が探偵って叫んだって裕子さんに言われたわ」「お気になさらないでください」「二人で心配してくれてるのに」「大丈夫です」 28番は小さく頭を下げて去ろうとした。だが2、3歩進んでやめて聡美の所に戻った。「すいません こんなことを申し上げてよろしいかどうか」「何でも言って」「それでしたら申し上げますが 私の母は老人ホームにいるのですが」「そうなの?」「でもこの頃は食堂でごはんを食べてから自分の部屋に帰れないんです エレベーターにずっと乗ってたりして」「それ 認知症ね」 聡美は始めてその言葉を口にした。28番はホッとした顔になる。 「そうなんです でもムラがあるんです ちゃんと帰れる時もあるそうです」「裕子さんと同じね」 28番はさすがにハイとは言えなかった。だが「私は船に乗るのをここで最後にするんです でもこの船に乗らず母がいる所に行った方がよかったかもしれない この頃そう思ってきて」 「だから裕子さんのことを心配してくれてるのね」「気になるんです」「あなたがいてくれてとても助かるわ」 28番はとても気が済んだ。聡美は先の喫茶店で知人と待ち合わせをしているというのでそこで別れた。 ところが今度は聡美が28番を追いかけて来た。「スタッフさん どうしよう!?」「あら お知り合いの方は?」「もう来てるの 探偵事件の時に歌ってた人が素晴らしくて」「私たちも影で聞いてました 田村さんの歌はいつも素晴らしい」「有名人なのね ポートサイドにも一緒に来てくれて あぁ どうしよう?」「大丈夫ですか?」「だって裕子さんのことは誘ってないのに 田村さんの前に座ってるのよ」「なるほど」「どうしよう?」 そして言った。「探偵さん どうしたらいいのかしら」