62 フランスの血の色
ある波止場で寂しそうにうなづくギャビー。近くにいた刑事が「かわいそうなことだがぺぺは死んだんだ」 ギャビーは「私、帰ります」「それがいいよ」 と刑事はギャビーのキャリーバックを押して客船に乗せる。だが客船にはこっそり乗り込んだぺぺがいた。そしてギャビーを探しながら船の中をうろつくぺぺだが やがて逮捕されてしまう。手錠をかけられ、連行される。 映る波止場で離れていく客船。振り向くぺぺ。その時甲板に登場するギャビー。ギャビーに向かって叫ぶぺぺ。「ギャビー」 しかしぺぺの声は汽笛に消される。ぺぺは隠していたナイフで腹を指して倒れる。 最後に画面で終わる「fin」の文字。 船の映画館で目を真っ赤にして出てくる裕子と聡美。裕子は「『望郷』って随分古いでしょ でも白黒じゃなかった」「1930年代だってよ 私も昔見たけど何回でも泣けるわ」「そうそう。ジャン・ギャバンはちょっとパパに似てるし」「私の主人はアランドロン」「聡美さん よくゆう」「お互い様」 くつくつ笑う二人。 その後二人で船のバスに乗り込んで港から街に繰り出した。ガイドが話し始める。「大都市で南フランスの玄関口とも言われるマルセイユは粋でおしゃれな印象ですね。フランス国歌『ラ・マルセイエーズ』はこんな歌だそうです」 前の方の裕子が拍手する。「いえいえ フランス語は出来ないし音痴ですから。ただ和訳した資料がありましたので」 後ろの方の男性が「ほう。静かに聞きましょう」 女性たちのおしゃべりも静かになる。「一番です。行こう 祖国の子どもたちよ 栄光の日が来た 私たちに対して 暴政の血塗れの旗が上がった 暴政の血塗れの旗が上がった 聞こえるか戦場の 残酷な軍人のうなりが 彼らは私たちの腕の中まで来て 私たちの息子や妻の喉を掻ききって殺す 武器を持て 市民よ 軍隊を組め 向かおう向かおう 汚れた血が 私たちの田畑をうるおすまで」 ここで終わるりバスの中が静かになる。 ため息まじりにの裕子だが「君が代と随分違うわね」「ほんとに国様々だわ」 またガイドが「それでは、ノートルダム・ド・ラ・ギャルド寺院を見学します」 やがてまた女性の声がにぎやかになった。 寺院見学の後小さな魚料理の店に入った。裕子と聡美も船の何人かと座っている。同じテーブルの女性も「ノートルダム・ド・ラ・ギャルド寺院はすばらしかったですね」 聡美も「ホントに。眺めもすばらしく」 一方裕子は「ねぇ 今日はブイヤベースですって」「ブイヤベースは最初は漁師のおかみさんが売れ残った魚を煮込んだって」「さすが聡美さん もっと上等なものだと思ってたわ」 ブイヤベースが来た。裕子「すごい香り」 早速食べ始める同じテーブルの人たち。 おいしいの声。真ん中に沢山置かれたフランスパン。パリパリに焼いたフランスパンにニンニクバターを付ける。食べながら「パンとニンニクと魚とこの組み合わせがすばらしいわ」 と聡美。でも裕子は「でもフランスパンの粉がいっぱい落ちちゃう」「こういうお店では後でテーブルを払うんですって。だからほっとけばいいの」「さすが聡美さん」 テーブルの女性も「この赤と白のチェックのテーブルもいいわ」 だが「おいしいおいしい」といいながら赤ワインを飲む裕子。聡美は「魚のときは白がいいそうよ」 だが裕子は「暴政の血の色が好きよ」「あら 裕子さん もう酔っぱらってる」「イヤねぇ 酔っぱらってないわよ」 と何回も首を振る裕子。