△4 赤坂の屋台のラーメン屋
赤坂の路上の屋台のラーメン屋ののれんをくぐる圭子。「おじさん」 木のベンチに座る。ラーメン屋の浅野年雄。「ママ 今日は随分早いね」 紗喜も隣に座らせて「この子にラーメン食べさせてね 私はお酒」「いいの? ママがこんなところで油売ってて」「油売るのはおじさんの専門でしょ」「こりゃ参った」 とコップに酒を注ぐ。「この人ね 石油会社の部長さん。そしてうちの常連さん」 浅野を見つめる紗喜。 紗喜がまだレインボーに来る前のこと。スーツ姿の浅野。外国の生活 飛行機の中 レインボーでの接客中の圭子とのこと。 数年前のレインボーのトイレの前。客に言い寄られて困っている圭子。「いいだろ?」 トイレに近づいて来た浅野。浅野は茶々を入れる。舌打ちして離れていく客。「ありがとうございます」「先に口説きたかったよ」「まぁ」 浅野の腕を軽くつねる圭子。 数ヶ月前に赤坂の路上の屋台のラーメン屋に近づいてきた着物姿の圭子。バケツの水を足下にかけられる。むっとした顔の圭子。土下座する浅野。「すいません」 あわてて浅野に近づいて「大丈夫ですから」 見上げて、「ママは相変わらずお美しい」「えっ」「でも僕はロングスカートの方がもっと好きでした」「浅野さん」「もうただのおじさん」 と笑う。 今の赤坂の路上の屋台のラーメン屋で浅野はラーメンを作っている。「昔の話さ。君とは今日初めてだね」「はい。でもおじさんなんて呼べません」「そうでしょう? でも呼んで欲しいんだって」「そりゃぁ あなたたちみたいなお嬢さんから見たらおじいさんよ」「この子はそうだけど」「ママもお嬢さん」「サラリーマンのごますり根性直ってない」 と酒を飲む。「染み着いちゃったか」「そんな言い方ママらしくない」 紗喜を見つめる圭子。「気にすることないさ」 湯気が上がった丼を紗喜の前に置く。「紗喜ちゃんはいい子ね。この子といると素直になれる。浅野さんごめんなさい」 首を振って、「早く食べないと冷めちゃうよ」 食べ始めた紗喜。「おいしです」 笑顔になる。圭子は頬杖を付いて紗喜が食べている姿を見ている。「大きな高いビルのたった一つの窓が俺の人生だったな。その中で笑ったり怒ったりがっかりしたり」「私もそうよ」 浅野の顔を見る。「でも窓があることさえ知らない人が多いんだよ」 紗喜もラーメンを食べるのをやめて浅野を見る。 赤坂の全景そして繁華街の夜。酔っぱらった男性。送るホステス。酔っぱらって地面に座り込む若い女性と介護する男性。一つのビルのいくつもの窓に電気が付いている。 紗喜と圭子はラーメン台から少し離れたテーブルに座っている。二人はビルの一つの窓を見つめていた。ラーメンを作っている浅野が言った。 「世の中にはたくさんの人間がいる。色々なことを考えている。でも本当に自分と結びつく人はそうはいない。ほんの一握り。でもほかの人間にとってはいることさえ気づかない。あなたの魂が俺だけの宝物」「おじさんが宝物だって」「宝物って。ママのことでしょう?」「突然 何?」「おじさんは言ってた。宝物だって、魂だって」 浅野の声がした。「大切なのは魂よ。魂が呼ぶのよ」 考え込む二人紗喜と圭子。 赤坂のビルの一つの窓から光が輝いた。△4 赤坂の屋台のラーメン屋△5 割烹みどりhttps://ameblo.jp/5horupidaityo6/entry-12968659034.html