|
カテゴリ:こんぺいとう〜世界一周ひとり旅
やはり待合場所にはまだ誰もいなかった。と思った29番だったが一人だけ椅子に座った女性がいた。慌てて近づいて
「聡美さんという方 ご存知ではありませんか」 「スタッフさん どうなさったの? 私も聡美です」 29番はホッとして聡美の隣りに座った。凛とした美しい女性だった。29番はこれこれと説明して二人は裕子の部屋に向かった。 「でも裕子さん 私の部屋に来ないでーーいつも言ってましたよ」 「どうしてでしょう」 「私の部屋がドッチャラかっチャラって 私そんな言葉初めて聞いて笑っちゃった」 「今日は聡美さんと約束があって遅れたら悪いからと」 「あの人いつも遅れるから最初は30分前 今は1時間前」 「待ちくたびれたりしないんですか?」 「裕子さんは廊下で迷うの 同じところをぐるぐる回るの 得意じゃないみたい」 「それって」 「それって?」 廊下の向こうの方から声が聞こえた。 「聡美さん 聡美さん」 裕子だ。ドアが少しだけ開いている。 「裕子さん 廊下の声は小さく小さく」 そういうとドアが閉まった。 「あら?」 と29番が小走りで向かう。 「スタッフさん 走っちゃだめですよ」 「すいません」 聡美が裕子の部屋に近づいてドアを叩いた。 「裕子さん 支度できましたか?」 「やっと見つけたけどこれで良いのかしら?」 「ドアを開けて見せて」 「ドッチャラかっちゃらだからイヤ」 「船長さんがアナウンスしていたのに聞いてないの?」 「シャワーしてたの」 「船長さんはね 外出の際はノースリーブやミニスカートなど肌の露出した服装をなさらないようにくれぐれもご注意下さい そう言ってらしたわよ」 と聡美は29番の顔を見た。大きくうなづく29番だった。ドアが少しだけ開いた。 「じゃあ 長袖のブラウスにスラックス これで大丈夫ね 見て見て」 裕子は細いドアの隙間から廊下に出ようとしていた。29番は「わっ」といい聡美は「だめよ」と叫んだ。裕子は怪訝な顔。裕子は廊下に出てきてドアが閉まった。イヤ閉まりかけた。聡美が靴を出してとドアが閉まらないようにした。 「ヤダ聡美さん ドッチャラかっちゃらは見ないで」 「裕子さん 鍵を持たずに出て行ったら入れなくなるのよ 注意しなくちゃ」 「だって」 「スタッフさんが大変になるでしょ」 「ごめんなさい」 聡美は小さなドアの隙間から部屋の中を見た。これがドッチャラかっちゃらだ。やっと真実に気づいた聡美。もう少し開けるとベッドの脇のテーブルに写真が置いてあった。サラーラの写真。聡美は前にも見たことがあった。 「裕子さん あれサラーラの写真でしょ」 裕子は廊下から部屋に戻ったが写真を見ても首をかしげるだけだった。 「サラーラって?」 「今ついたところ」 「あー そうね」 「あの段ボールの上にスカーフがあるしょう? スカーフもいるからね 鍵とスカーフをバッグに入れて来て 私廊下で待ってるから」 そう言ってドアを閉めた聡美。嬉しそうに「はーい」 とはしゃぐ裕子。 廊下で聡美は29番をハグした。そして小声で言った。 「よろしくお願いします 私も出来るだけのことはします」 聡美はまるで女神のように見えていた。
お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024.11.05 18:29:38
[こんぺいとう〜世界一周ひとり旅] カテゴリの最新記事
|