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カテゴリ:青く踏み世界一周ひとり旅
裕子が船の部屋で支度をしていた。時計は六時。アナウンスが聞こえた。
「サンフランシスコ入港です。ゴールデン・ゲートブリッジが近くなってきました。7デッキにいらしてください」 あわててパタパタとお化粧しながら廊下に出る裕子。 7デッキでは多くの人がカメラや望遠鏡を持って撮っている。中にはビデオに収めている人もいる。裕子もしきりに写真を撮っていた。裕子に近付いてくる聡美。裕子の肩を叩いた。振り向いた裕子。 「聡美さーん」 「景色はとってもいいけど寒いのね」 「私。いっぱい着て来ちゃった。どこからどこまで私? 田舎者丸出し」 「私も同じよ。でもやっぱりサンフランシスコは憧れだもの。震えても見に来たい」 「聡美さんはサンフランシスコでご主人と知り合ったんでしょ。ドラマチック」 「あら!? 私 そんなこと言った?」 「えっ? 違ったの?」 「あっ! 違わない違わない。それより5デッキに行きましょ。今日は8人でタクシー2台ですって」 うなづく裕子。 5デッキのゲイトの近くで日本人8人が待っていた。裕子と聡美もその中に入っている。二人以外はご夫婦。その時ゆっくりタクシーが近付いてくる。タクシーの方を目にした8人が大騒ぎ。 「うっそー」 さらにきゃーきゃー騒ぐ。ぴかぴかのリムジンだった。また、パシリと写真を撮る人たち。興奮して 「聡美さん 外国映画の画面みたいね」 「運転手さんも背が高いわ~イケメンで社長さんみたい。一番リムジンが似合うね」 「日本人ってとっちゃんぼうや」 「しっ! 聞こえる」 舌を出す裕子。 向かったのは日本庭園。美しい庭園だ。 眺めている裕子と聡美。二人はもこもこした厚着のままお互いに写真を撮っていた。 次はチャイナタウン。リムジンを降りる裕子と聡美。去っていくリムジンを眺める二人。 「いい経験だわ」 「ついでにチャイナタウンでお食事」 「聡美さんがいなかったら浮かばない」 「とりあえずドルがもうないから両替しないとね」 「そうだわ」 うろうろ歩き始める二人。 「あら。昨日誰かがいってたお店」 と立ち止まる聡美。 「何?」 聡美が指さしたのは「高麗人参」の文字。 「ワオー。でも日本語通じないと高く買わされちゃうかも」 「そうね」 店から離れようとしていると店の中から顔を出す女性。 「あっ。もしかしたら日本の方ですね」 裕子と聡美も笑顔になる。 「船から降りた方が何人かいらしてて」 「私たちも」 「ここの店がとってもいいって聞きまして ね」 と裕子を見つめる。 裕子もうなづく。 「嬉しいです。どうぞどうぞ。もう見るだけでいいんですよ。日本語はたまにしか聞けなくて懐かしい。妹は中野にいますけど」 店に入る二人。高麗人参が山ほどある。 「聡美さん!! すごいね」 「テレビで見たような」 お茶を入れ始めた女性が 「高麗人参を粉にしてます。少し入れるだけでお肌がきれいになります。あ お二人とも充分おきれいですけど」 「いやですね」 とくすくす笑う裕子。 次に行った中華料理店でピータンの前菜とシーフードの湯葉巻きやチャーハンを食べている裕子と聡美。ビールをグイッと飲みながら裕子が 「それにしてもやっぱり日本にいないと日本語はあまり聞けないのね」 「やっぱり彼女は寂しいのよ」 「彼女のおかげで銀行も中華料理店も教えてもらって彼女のおかげ。日本人は仲間よね。ありがたいありがたや」 飲むビールが増える増える。 夜のリムジンの中は静かだった。眠っている裕子。そして隣の聡美だが運転手に近付いて何か話している。 船の廊下では裕子が酔っぱらっているから 裕子を連れて歩いている聡美。 「ごめん みんなはリムジンで百万ドルの夜景を見に行ったのに。私のせいで聡美さんも行けなくて」 「いいのよ」 「だって憧れのサンフランシスコでしょ。ご主人と出会ったところ」 聡美は大きく息を吐いて 「実はあれ 嘘」 「あ ここ」 「え?」 立ち止まる裕子。ごそごそと鍵を探してやっとドアを開ける。 「裕子さん 大丈夫? 一人で」 「大丈。おやすみなさい、ありがとう」 慌てて部屋に入る裕子。ドアが閉まる。 ![]() ![]() お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2026.02.09 17:56:30
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