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2018年05月10日
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カテゴリ:横川典視
木曜担当のよこてんです。

 今回は先の月曜日に行われた「装蹄技術研修会」見学会のお話です。

 競馬場での装蹄師さんのお仕事は競走馬の蹄を削って調整し(削蹄)、蹄鉄を装着(装蹄)するというものだということは皆さんもご存じですよね。
 そういうふうに書いてしまうとシンプルに見えてしまいますが、実際はその馬の脚元や蹄の状態を瞬時に判断して最適な形状に削蹄し、そして最適な形の蹄鉄を準備して装着しなくてはなりません。装蹄によって競走馬の能力がより一層引き出される事があれば、反対に故障の要因になってしまう事もあり、その一連の作業には高い技術および経験が要求されます。

 その技術を磨くために行われているのが毎年秋頃に宇都宮市にある装蹄教育センターにおいて行われている『全国装蹄競技大会』で、全国各地の競馬場等を代表する装蹄師さんたちが様々な競技で技を競い合い、また腕を磨き合います。

 今回は、全国大会を目指す若手装蹄師さん達の研修会をファンの皆さんに公開するという試み。
 これまでには学校の職場見学会などで蹄鉄づくりを実演・・・という事があったように思いますが、一般の方を競馬場内の装蹄所に招いて見ていただくというのは初めてではないでしょうか。
 自分も、一本の鉄の棒から蹄鉄が作られていく作業を見るのは本当に面白いですから、一般のファンの方以上に楽しみにしながら見学に向かった次第でありました。

 さて、今回の研修会に登場するのは3名の選手、若手装蹄師さん達。


★松田一晟さん


★及川健さん


★中村圭佑さん

 そして材料・道具類。


 こちらは蹄鉄の材料となる「鉄桿(てっかん)」。今回見学する『造鉄』は「25分間に2本の鉄桿から2個の蹄鉄を作製する」もの。大会では『単独造鉄』と呼ばれる競技に相当します。


 その鉄桿を熱する炉。1000度以上になります。



 蹄鉄を作製する道具類。左側に鎮座する一番大きな物が金床。その上に乗っているのが手槌(ハンマー)。右側に置かれている物が奥から「溝切り」(蹄鉄の地面側に溝を付ける)「目打ち」「目抜き」(いずれも釘穴を開けるためのもの)。
 鉄桿を炉で熱して柔らかくし、ハンマーで形を整えそして溝切りや目打ち・目抜きを使って蹄鉄に必要な部分を作っていく・・・というのが一連の流れです。



 監督役のベテラン装蹄師さんの合図で一斉に競技開始。鉄桿を叩くハンマーの音も同時に響きはじめます。


★いろいろな角度から叩かれているうちに徐々に馬蹄形の、蹄鉄の形になっていく



 熱しては叩き、また熱しては叩き。ただ曲げるだけでは厚みが不均等になるので「伸ばしながら叩く」事で厚みも一定に整えます。





 鉄桿、いや既に蹄鉄になった鉄の棒は炉に投じられる度に赤熱します。当然ながら素手では触れない温度ですから、手早くハンマーで叩きながら安全にも気を使わなければなりません。


★炉の炎が照り返す


★炉の中で熱せられる蹄鉄。炉の風量を細かく操作して温度を調整しつつ


★流れる汗を拭う間もなく一心にハンマーを振り続ける

 見学会が行われた月曜日は曇り空の、5月にしてはひんやりした日だったのですが、熱い炉のそばで休む間もなく蹄鉄を叩き続ける選手達の顔には汗が止めどなく流れています。


★溝切りへ

 釘穴が並ぶ溝の部分を作る。溝切りを使って綺麗な半円になるように溝を掘り、その後には釘穴を開けていきます
 競走馬に使われる軽合金製の蹄鉄(「兼用鉄」といいます)では溝も釘穴もできた状態ですが、蹄鉄を作る競技では手で刻み込まねばなりません。


★鉄唇を出す

 蹄鉄の正面側に飛び出した“突起”の部分を「鉄唇(てっしん)」といいます。兼用鉄だとこの部分も最初から形成された状態になっているのですが、競技ではここもまた叩き出しで作っていきます。蹄鉄の局面の部分を叩いて伸ばして、あっという間にできあがるのは実に見事。


★3名の中で一番の若手になる中村さんをベテランの白椛(しらかば)装蹄師が見守る

 「中村が一番経験が浅いから、腕も一番細いでしょう。まだ筋肉が付いてない」という比べ方というか言い方が興味深かった。


★最後の調整


★目に見える赤味がなくなった蹄鉄だが、水につけるとジャッと湯気が上がる


★25分経過で終了の合図。ハンマーを置きようやく汗を拭う


★できあがった蹄鉄をベテラン装蹄師さんたちが講評

 25分間で2本の蹄鉄を造り上げるスピードは凄いですが、そうして出来上がった蹄鉄を2本重ねると形がぴったり揃うというのも凄いですよね。

 実際の競技会では前肢用と後肢用を一個ずつつくるのでさらに難易度が上がりますし、「装蹄競技」といって蹄鉄を作り実際の馬に装着するまでを行うもの、あるいは「イーグルアイ競技」という、10秒間程度馬の蹄を見ただけでそれに合った形の蹄鉄を作るものがあり、それらはさらに難しくなります。
 自分も昔一度だけ宇都宮の全国大会を見学した事があるのですが、全国大会に出るようなベテラン装蹄師さんでも判断を誤ったか迷ったか、制限時間を使い切ってギリギリなんとか間に合わせて終わる・・・というシーンを見ました。ただ横で見ている分には興味深い作業も実際の競技となると半端なく難しい。


★「ここでこうやって打つのは?」「もう少し広く使った方が」とアイデアを出し合う松田さんと及川さん

 ちなみに、普段はいない“観客”を前にしての作業は緊張するのでは?と言ったところ、「全国大会ではもっとたくさんの人に囲まれながら打たなければならない。これくらいで緊張するようではダメ!」とベテラン装蹄師さん。



 この写真は自分が行った際の全国大会の模様。こうだものなあ。

 今回初めての試みとして行われた見学会ですが、この先にもまたこのような機会を設けることを考えられているようです。その際にはぜひ皆様もおいでになって、そして全国大会並みの数のギャラリーで取り囲みましょう(^ー^)。
 自分も今年は行ってみようかな、全国大会。





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最終更新日  2018年05月10日 22時56分37秒



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