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カテゴリ:大川 充夫
大川ミツオーです。 さて、わたくし先週は、笠松競馬の実況を担当するハズでした。 が、ご存知のとおり、先週の笠松競馬は、12日(水曜日)に起きた放馬事故(競走馬が競馬場や厩舎地区の敷地から外に出てしまった)を受け、こうした事象防止を徹底するため、ということで、開催自粛となりました。 残念なことです。 本当に、残念なことです。 笠松競馬場の厩舎地区は、大きく2つにわかれています。 ちなみに、二つの厩舎地区と競馬場の位置関係は、 (Google map より) このようになっています。 この件については、2年前の3月に書いた、以下の記事でも触れています。 おさらいすると、笠松競馬場の厩舎は、 『円城寺厩舎』 『薬師寺厩舎』 の2か所に集められており、薬師寺厩舎は競馬場の敷地に隣接していますが、円城寺厩舎は競馬場から少し離れた位置にあり、競馬場との往復には、専用に作られた馬道と、一部、公道を歩いて通っています。 上の地図で、赤い丸が円城寺厩舎、青い丸が薬師寺厩舎。黒い←で示した道路が、いわゆる土手の頂上を走る道です。 土手を上り下りするための馬道と、 公道を通行する馬に注意するよう呼びかける標識。 上の2枚の写真は、2年前の記事でもご紹介しました。 2年前の記事でも触れたように、笠松競馬場では、円城寺厩舎を薬師寺厩舎に統合したいという意向を持っており、即座にとはいかないまでも、いずれ公道を歩いて移動する馬をなくそうと考えています。 2013年には、公道へ逃げ出した馬が事故をまねき、一般の方が亡くなるという大変な不祥事が発生しており、この円城寺厩舎の移転・統合は、笠松競馬にとっての懸案なのです。 今回の放馬事故は、この円城寺厩舎で起きてしまったのでした。 二度とこのような事故が起きないよう、厩舎統合は急がれるべきですし、それまでの間、馬の扱いをこれ以上ないほど厳重に管理しなくてはなりません。 しっかりとした対策が求められます。 この笠松競馬場の事情とは大きく異なりますが、どこか似ている環境の競馬場について、貴重な証言があります。 事情が異なることは承知の上で、あえてご紹介します。 笠松競馬とは異なるカタチで競走馬が公道を通行していた、というより、さらに危険な条件で馬を管理していた競馬場があったことを、みなさんはご存知でしょうか。 宇都宮競馬場です。 2005年3月に廃止となった、栃木県の宇都宮競馬場では、所属競走馬の多くが『外厩』で管理され、競走馬が競馬場まで公道を歩いて移動していました。 ここで言う『外厩』は、競馬場とは別の施設で管理され調整される、いわゆる『外厩』ではありません。 競馬場敷地外に、公道に面し、民家に隣接した場所に建つ厩舎。それを『外厩舎』『外厩』と呼んでいたのです。 ここに地図があります。 平成14年に宇都宮競馬主催者が、『外厩舎』の事情を把握・説明するために作った手書きの地図です。 真ん中やや下に[競馬場]としてあり、周辺に丸でかこまれた数字と人名が書き込まれています。数字が厩舎の場所、人名は調教師名です。 実際この場所を知るひとでないとわかりにくいのですが、よく見ると左から右(地図は右がだいたい北)に線路が通り、駅もあります。大きな道路の名称や交差点の名前も書きこまれています。 つまりこれは、競馬場周辺の公道ぞいに厩舎が点在していることを表しているのです。 もう一枚の地図を見ていただいたほうが、その事実がよくわかるかもしれません。 上の地図にそろえるため、北を右にしてあります(地図中の文字が横向きになっていますがご了承ください)。 こうした状況で競馬が開催されていたのが、宇都宮競馬場だったのです。 関係者の証言をご紹介します。 まずは、宇都宮競馬場所属で、ここで言う『外厩舎』で馬を管理していた調教師さんにうかがったお話です。 この方は、宇都宮競馬場の調教師として、いわゆる『外厩舎』を2か所、管理しておられました。 そして、管理する馬とバイクとが接触し、バイクを運転していた方が亡くなるという大事故を経験されました。 「何件かあったからね、交通事故。ウチでも。同時期に。 1件は、中学生が馬の後ろからベルならしてきて、馬が蹴ったと。そしたら女の子が手にケガした。7時くらいでしょ、学校行くんだから。 バイクの事故は、朝の3時前。 悪いことに、雪が降ってきた。 ウチの厩務員が馬と一緒に道路の左側を歩いてたんだね。そこに突っ込んできたと。雪がしんしんと降ってきて、前が見えなかったんだろうって。だから馬が蹴ったとかっていうんじゃなくて、バイクが突っ込んできた、後ろから。 わたしは、警察には追突事故だって言ったんだけど、左歩いてなかったから馬側にも過失があると。厩務員は左側を歩いていたと言っていたけど、警察の調べや裁判では、左側通行していなかったということになった。 事故が起きてすぐ電話きて、現場に行ったら、そのひとは救急車で運ばれたあとだった。馬は傷だらけで。けっきょく廃馬したけどね」 あえて証言をそのままご紹介していますが、きちんと言っておきます。 厩舎関係者にどのような言い分があっても、これは亡くなった方やご家族に申し開きのできない事態です。警察による調べでも裁判でも、バイクを運転していた方に非はなかったとされています。 厩舎側にも言いぶんがあり、厩舎関係者にとってもたいへん不幸な事故ではありますが、亡くなった方に一切の責任はないということで決着しています。 宇都宮競馬の『外厩舎』は、これ以外にも多くの事故を呼んでしまっています。 「あのころねえ、立て続けに1年に2~3回事故が起こったんだ。ウチも、馬を車に持ってかれたことあるもん。ぶつけられて。 馬は即死だったよ。身体半分なかったもん。車はぐちゃぐちゃで。厩務員は大丈夫だったけど。悪いっていうか、飲酒運転だったからさ。深夜の3時に80キロだぞ、つっこまれたらたまらないだろう。 室井さんのオープン馬もやられた。 カネユタカオーも車にぶつけられて死んだし。 昔にくらべれば、住宅も増えれば交通量も増えたし。 歩道がない車道を歩いてくるのって怖いだろ。馬、人間、車っていう並びになるんだ。こういうふうに道路歩くしかないじゃん。だから人間が危ないって。馬がちょっと暴れたらすぐ人間が車のほうに寄るだろ。危なくて仕方ない」 「外厩があること自体で、事故が起きる。どんどん交通量が増えてくるし。 当然、光を反射するもの身につけたりとかさ、運転手に見てもらえるようなのつけたり。厩務員にたすきのつけたりさ。自転車と同じよ。点滅するのつけたりとか。 競馬場全部がやったんだよ。オレの事故があってからやったの。遅いんだそんなの。 ガードマンつけなさいっていうのさ。でも競馬場は予算がないっていうんだ。 外厩、栃木街道のこっちまであるんだよ、それを競馬場まで安全に来なさいっていうのが無理だ。 農水からだって毎年指導がきてるんだ。縮小しろ縮小しろってきてるんだ。 放置した県に責任がある。おきてあたりまえの事故だって。 朝もたいへんだけど、普通の日にレース使うのにいくんだからね。10レースだったら午後3時に国道通っていかなきゃいけないんだよ、交通量ある昼間に行かなきゃならないんだよ。それをガードマンなしに。途中、踏み切りもあるんだよ。 線路と線路の隙間あるだろ、そこに脚がはさまった、厩務員がいくらやっても抜けないんだ。馬だって暴れるさ。後ろから3人きたから、4人してみんなで脚をもちあげて。そしたら鉄がぬけて。鉄がひっかかってたんだ。電車きてたらパアだぞ。踏み切りくらい警備員おけよ。 それが、年間1千万の契約するだろ?それがもったいないっていうんだ」 宇都宮競馬場近くに古くから住んでいた方(廃止時は競馬場職員)は、 「わたしも割と競馬場から住まいが近い。 子どものころから、常にそこらへんに馬がいたので、わたしが小学生のころだと馬が道を歩いていたり、道に馬糞が落ちていたりというのが普通のことだったんだけど。ほかのひとに比べると、そこに競馬場があるというのが、身近なことだったんです。昔はね、そういうものだったんだよね。 競馬場が難しくなってきたのは、周りが開発されてきたりして今までの地域住民じゃないひとたちがたくさんあのへんに住むようになったりして。 昔からあそこにいるひとであれば、馬が道路歩いていたり、馬がそこにいるのが普通な状況、競馬場があるのが普通の状況だったんだけど、住宅地ができたり団地がたくさんできたりしていく中で、なかなか馬をあそこ引いて歩いたりするのが難しくなってしまった」 そうして、売り上げが落ちる中、『外厩舎』問題を解消しなくてはならないということから、競馬場の移転、せめて厩舎地区だけでもまとめたいということで、近郊に土地を用意すること二度(はじめに目当てをつけた土地は、隣接する河川改修などの問題から使えず、さらに離れた場所に、いわゆる競馬場用地を準備した)。 しかし、結局、宇都宮競馬は厩舎をまとめることができずじまいでした。 宇都宮競馬は売り上げが振るわず、県財政へ負担をかけることを避けるため廃止となりましたが、多くの関係者が廃止の要因として『外厩舎』問題をあげています。 宇都宮競馬と笠松競馬では、状況が大きく異なります。 しかし似た部分もある。 二度と間違いを起こさぬよう、安全安心を徹底してもらいたいと思います。 繰り返しますが、往時の宇都宮と現在の笠松とでは、事情が大きく異なります。 共通しているところは、競走馬が公道を歩くことがある、という点だけで、しかも程度に大きな差があります。 そこをおわかりいただいた上で、これらの証言をお読みいただければ幸いです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2019年06月24日 10時52分56秒
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