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水曜日の担当は、坂田博昭です。 まずは、前回に引き続き名古屋競馬場からのリポート。 もう1週間前のことになりますが…かきつばた記念の翌日・5月4日水曜日には、3歳馬による重賞・駿蹄賞(SP1)が行われました。 前日のかきつばた記念当日の熱狂には及ばぬものの、この日も朝から多くのお客様方が観戦に詰めかけていました。 もちろん、新競馬場の話題性もあるのでしょうが… 客層が、本当に大きく変わりました。いくら大型連休中とは言え、こんなに子供連れの家族客が多い競馬場を、私はこれまで見たことがありません。 レースの合間には、子供たちの嬌声がそこかしこで響き、レースが始まると父親に抱っこされたり肩車されて、走る馬の姿を熱心に見る子供たち。 いまだけ、かもしれません。 でも私は、競馬にとっての「何か新しいこと」が、この名古屋の新競馬場で起きつつあるのではないかと、そんなムードを感じています。 お昼が過ぎると、帰ったお客様もおられたようで、場内の滞留人数は明らかに減りました。いいと思います。もう、丸一日赤鉛筆を耳に差して、じっと競馬新聞見ながら最後まで過ごす、っていう時代じゃないのかも知れません。 新しい競馬場を通じて、浅くても良いからすごく広く、馬や競馬に触れる人々が増えること。そのことのかけがえのなさを、いま改めて実感しています。 この日の朝一番。 名古屋競馬の「王者」・岡部誠騎手の言葉に触れる機会がありました。 1レース。リュラネブラで見事1着!! 王者・岡部は…何かに大きなもどかしさを感じ続けている。 名古屋で彼の姿を見ていて、ずっとそのように感じていました。 思うようなプレーが出来ない、出来ていないことへの、何か押さえがたい思い。 いまの、名古屋の馬場は本当に難しい。 単にコースの形態が変わっただけではなく、「通っていい」場所、「通ってはいけない」場所。それが開催毎に、時には日ごとに、まれに一日のうちでも大きく変化していました。 もどかしさを感じているのは、彼だけではない。 全てのジョッキーが、そんななにか胸につかえたようなものを感じたまま、プレーをしているのかもしれません。 新しい競馬場が出来る、ということ。 それは、こういうことなんだなと。 そのことを、取材してきての1ヶ月間、私もプレイヤーの様子や言葉から、直に感じてきました。 王者・岡部の、会心の笑顔。 久しぶりに、マスク越しでもわかる彼のこんないい笑顔を見た気がしました。 「他の競馬場でも、内が重ければ内をあけているところはあるから。なにかモヤモヤするものがどうしても払拭できないのだけれど……気持ち的なものなのかも知れない。」 このレースの後、彼はそんな風に話しました。 馬場のことは、皆同じ条件。 しかし、難しい条件であることは確か。 そんな中で、彼にはとりわけ「負けてはいけない」馬がどんどん回ってくる。 うまくいくこともある。しかし、今まで以上に思い通りに行かないこともまたある。 彼の言葉から、そんな「王者」がいま立って、そして目にしている景色が、ほんのわずかですが垣間見えたような気がしました。 参加が決まっている「2022地方競馬ジョッキーズチャンピオンシップ」への抱負も、前向きに話しました。 「メンバーが素晴らしいので、様々なことを吸収したい。いつも通りの自分のプレーをしっかりして頑張ります」 その、佐賀のお話は今回の稿の後半で。 すごく強調しておきたいことがあります。 悩んでいるのは、プレイヤーだけではない、ということ。 馬場の管理を担当する、競馬場のスタッフの皆さん方にも、プレイヤーや、客側の声は届いてきています。どんな風に馬場を管理していけば良いのか。そのための研究と努力は、日夜続けられています。 「何が『フェア』な馬場の状態なのか。悩ましいところです」 内から外まで、全部同じようにただ均せば良いのか。 そうしたら、また別の意見も出るだろう。 プレイヤーは、そして馬券を買って楽しむお客様は、何を求めているのか。 「状況を作る」側でも、挑戦は続いています。 土古の競馬場とは全くレースの様相は異なり、ゴール前まで大変な混戦、接戦となるレースは、格段に多くなりました。「逃げ切った」と思った馬が、馬場の外から飛んでくる馬に捉まる、この写真のようなシーンも次々と生まれるようになりました。 改めて… 新しい競馬場が出来るということは、こういうことなのだなと。 私は取材する立場から、シンプルにそのように感じています。 メインレースの重賞・駿蹄賞(SP1) 東海地区には明確な「三冠」という概念がないのですが… この駿蹄賞が、東海ダービーを中心とする3歳主要タイトルの重賞路線の皮切りであることは間違いありません。 新競馬場に舞台を移し、距離は2000m。2コーナー付近から馬場を1周半するコースで争われました。 コーナーを回ってきて、最初のホームストレッチ直線。 ハナを主張したパピタ(1番白帽黄服)に対して アップテンペスト(3番赤帽赤服)が番手を確保 直後にレイジーウォリアー(6番黄帽紫服) タニノタビト(桃帽黄色黒色服)とイイネイイネイイネ(青帽黄色緑縦縞)は、中団馬群の内目を追随しながらレースが進んでいきました。 向正面。リプレイ映像を見て下さい。 タニノタビト・岡部誠騎手の神騎乗でした……。 内をあける馬場状態。各馬外めの良い位置を探って3コーナーに向かうところ、彼は内目にいたタニノタビトを促して加速させ、内を通って進出。仕掛けのタイミングを窺い牽制し合う先団の各馬を一気に全て交わし去り、先頭に立ちました。 結果は、大差の圧勝。 タニノタビトがまず1冠目を制覇!! ゲートに行っていた角田輝也調教師 戻ってくるバスを降りると馬を出迎え、自ら馬を引いて引き上げてきました。 こちらは、2着に敗れたイイネイイネイイネ 笠松・田口輝彦調教師(左)も残念そう。 「やれることはやりました。あれ(内を突いたタニノタビトのプレー)は仕方ない。結局大差離れているのですから、勝ち馬が強かったと言うことでしょう。」 とは、騎乗していた渡邊竜也騎手 岡部誠騎手の勝利騎手インタビューの模様は、名古屋競馬オフィシャルYoutube映像でご覧下さい。 内を突いた、あの岡部誠騎手のプレー。 実は、それまでのレースでも、彼は勝負の流れの中で何度も挑戦していました。結果に結びつかないレースも多かったけれど、こうして肝心要の重賞レースで結果を掴んだことは、決して単なる「たまたま」ではありません。 内側は、通っても良いところがあいていたのかも知れません。 あるいは、多少馬場が重いところを通るリスクを取っていたのかも知れません。それでも、勝負に行くべきと。 いずれにしても、彼はそういうプレーをする「準備」が出来ていたと言うこと。 内をあけなければならないこの馬場状態。そして新しいトラックのこの形状と特徴。 その中で、勝つために何が出来るか。 それをずっと追求していたからこそ出た、今回のプレー。 「王者」の「凄み」を見せつけられた気がしました。 勝ったから言えることですが、実際勝ったのだから。 やはり、岡部誠は「王者」でした。 5月8日日曜日。 佐賀競馬場に取材に出かけました。 元々は、佐賀皐月賞を取材に出かけようと思って、前々からエアチケットをとったりしてあったのですが、そこに後から2022地方競馬ジョッキーズチャンピオンシップがイベントとして加わり、慌ただしい取材の一日になりました。 その佐賀皐月賞 ゴール前はこのような大混戦。 1番人気のザビッグレディが、後続の追撃を凌ぎきって重賞初勝利。 飛田愛斗騎手の勝利騎手インタビューの模様は、佐賀競馬オフィシャルYoutube映像でご覧下さい。 これまでの全国交流の重賞では惜敗続きだったこの馬。 目標はあくまで、5月29日日曜日に行われる九州ダービー・栄城賞。 むしろ、目標を見据えながらのそうした敗戦を経て、強くなってきたのでしょう。 そう、みんな栄城賞に出たいんですよね…。 勝てば権利が取れた今回のレース。 負けるにしても、しっかり賞金を加算して、まず出走権を確保したい。 2着のシウラグランデ 猛然と追い上げていただけに、本当に惜しいレースでした。 3月までJRAで走っていて、佐賀転入後は開催毎に使われ4戦3勝。 ここまでたどり着いたこともすごいこと、ですが… 一歩及ばず。 栄城賞に出られるかどうかは相手待ち。
管理する手島勝利調教師は、もう一頭奮闘したオリベとともに健闘をたたえつつ、今後について頭を悩ませていました。 そう…みんな出たいんです。 栄城賞。その特別なレースに。 ゴール前の大混戦も、そんな馬を巡るひとびとの気持ちの表れでしょう。 2022地方競馬ジョッキーズチャンピオンシップ・ファーストステージは、その佐賀皐月賞を挟んでふた鞍。 ふた鞍目の7レース 名古屋・岡部誠騎手が見事1着。 4番人気のプロデューサーを、勝利に導きました。 ほんとは、こうです。 大きく離れた外から、北海道・石川倭騎手が駆るクレイジースピードが猛追 このレースも、ゴール前がアツかった! 表彰式は、昨今の情勢に鑑みバックヤードの会議室で。 岡部誠騎手が1位 2位は、5Rで1着を取った岩手・村上忍騎手 3位は、5Rで2着だった兵庫・吉村智洋騎手 2022地方競馬ジョッキーズチャンピオンシップのファイナルステージは、5月31日火曜日に浦和競馬場で行われます。
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