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2024/05/08(水)11:07

レースは変われど、盛り上がりは変わらぬ大型連休

坂田 博昭(909)

水曜日の担当は、坂田博昭です。    今回は、名古屋競馬場の大型連休の開催からリポートです。  まずは5月3日(金祝)  久しぶりに、取材に来て素晴らしい晴天に恵まれました。  1Rが始まるおよそ1時間前に開門したのですが、その直後にはもうこれだけのお客さま方がレースが始まるのをお待ちでした。  この青空。  キッチンカーが出している色とりどりの旗指物も、青空に映えます。  やはり、大型連休は名古屋競馬場が最も賑わう季節。  晴天のこの日は、朝から老若男女様々な来場客の姿がありました。  早い時刻から、思い思いの時に来て、思い思いに楽しんで帰って行く。  競馬場は、そういう「楽しみの通り道」みたいな場所でいいんですよね。  今年も、良い雰囲気でこの季節を迎えました。      怪我で昨年11月から長らく休養していた村上弘樹騎手が、この開催からレースに復帰しました。  調教中、立ち上がった馬から落ちて、右肩の鎖骨を粉砕骨折。  粉々になった骨をパズルのようにつなぎ合わせるような手術は、長い時間かかったそうです。  その怪我の治療治癒も勿論大前提なのですが… 「動かすことも出来ないので、治療中は『普通に暮らす』ことに決めました」  ここからが……今回の話の本題。  元々が、減量に苦労しながら活躍を続けて来た彼。  怪我した場所を直すのと同時に、騎手として復帰できる身体に戻していくことが、この半年間の最大の課題でした。 ​「普通に暮らしていても、体重はどんどん増えていきます。あるところで『もうやらなければダメだな』と思い、減量に取り組みました。」​  10kgはゆうに超える数字を、減量して減らさなければなりませんでした。  私たち一般人が聞いたら、もう意味がわからないぐらいのレベルの減量。  体重が60kgぐらいまで来たところからが、キツかったと彼は言います。乗れる体重になったのは、開催の本当に当日だと。 「最後、サウナに入っても、もう汗が出ないんですよね……体調もおかしくなってくるし、昨日一昨日(開催の初日2日目)は、勝つことも出来ましたけれども、内容としては自分でも不甲斐ないと思うようなレースでした。」  ジョッキーの減量は、いっぺんやれば終わりではなく、レース開催中は日々の体重調整が求められます。話を聞いたこの日も、苦労したそうです。 ​「今日も、もうどうしても無理だと思って、思い切って水を飲みました。」​  減量中に水を飲むと、体重は飲んだ以上に戻ると聞きます。  水を飲むこと自体が、勇気ある決断。 「水を飲んだら、それまでもう出なくなっていた汗が出たんですよね。身体の中で、水とか、いろんなものが循環し始めたのがわかりました。そのお陰で、今日は体調面はだいぶ持ち直しました。」  騎手を続ける以上、いまの負担重量が変わらない以上、常にこの作業とともに、彼は生きていかなければなりません。  騎手として復帰しようとすれば、この減量の苦難とまた向き合わなければならないことはわかっています。休養中に普通にしていても体重が増えて、その時点で「復帰は無理だな」とか思うようなことは、なかったのだろうか……。  この問いに、彼は長く考えてから、このように答えました。 ​「いま、自分に出来ることが、これだ、ということなのでしょうね。」​ 「結局、最後は『気持ち』だということなんだと思います。」  彼は、そんな風に話します。 「去年、短期移籍の高知から戻ってきて、多くの人々に信頼されて仕事の流れも良くなっていたときには、気持ちが張っていますから、頑張れるんですよね。例えば、減量がキツくても『サウナもう1回行こ』って、自然になりますから。」  確かに、どんな仕事でもそれって同じだよな、と。  彼の話で気づかされました。  そういう、気持ちを張って日々歩んでいけるような流れを、早くつくり出すこと。  そこまで​行って、彼にとっての「復帰」なのかも知れません。 「いまは、数乗って勝つということよりも、『タイトル』を獲りたいですね。」 ​ そういう具体的な目標​​​​こそが、かれが日々減量と向き合いながら活躍を続けていくための「気持ち」に結びついていくのでしょう。  まずは、また次の開催で彼の姿を競馬場で見られるように。  そしてレースに乗っていれば、彼は「やる男」ですから。馬も本当によく動かすジョッキー。  ご声援ください。          この日5月3日のメインは、東海優駿に向けての最終関門・駿蹄賞(2000m) (オッズはパドック周回中のもので、最終ではありません)  ​スティールアクター​・​ミトノウォリアー​・フークピグマリオン  名古屋の「3強」が人気的にも全くの互角  これに、笠松での前哨戦を勝ったキャッシュブリッツが加わり、混戦が予想されました。  しかし、蓋を開けてみると……  内ラチ沿い、先行馬有利の馬場状態の中  フークピグマリオンが勝負所から外を回して捲り追い込み  直線入口では先頭に立ちました。  他の馬とは勢いが違うフークピグマリオンが、直線では独走!  この馬一頭の強さが際立つレースになりました。  今井貴大騎手の勝利騎手インタビューの模様は、​名古屋競馬オフィシャルYoutube映像​でご覧下さい。  前走のネクストスター中日本を勝った後、少し調整に遅れが生じていましたが、直前に「腹をくくって追った」(今井騎手)という渾身の調教で、状態面は最低限必要なところまで上がってきていたようです。  それでも「正直調子はよくなかった」という中での、この圧勝。  東海優駿では、今度はこの馬1頭に期待が集まることになるのでしょう。  中間の調整の推移も、大いに注目されるところです。  ミトノウォリアー(写真一番左)は3着。  1番枠を利して、この日有利な逃げ馬の直後の位置を取りました。  しかし、逃げ馬の脚色が鈍ったところで意を決して岡部騎手が交わしに行くと……途端に脚色が鈍りました。見ていた感じは、これまでと同じ。前に出たら、やはり止めてしまったのかな…。  スティールアクターは、7着  前走を熱発で取り消した影響もあったのでしょうか。  加藤聡一騎手は、今井騎手との感想戦の中で「来られたときにはもう手応えがなかった」と話していました。本来の状態なら、こんなことはないはず。 ​     実は、​​明日5月9日木曜日に笠松競馬場で行われる重賞・新緑賞(1400m)に、ミトノウォリアーもスティールアクターも出走します。​​この駿蹄賞から中5日という出走間隔。​  東海優駿に向けての「戦い」は、まだ終わっていませんでした。  両馬​の動向に、引き続き注目していきます。        続きまして。話は土日を挟んで3日後。5月6日(月振休)  この日が、4日間の開催最終日    例年ですと、この季節のダートグレード競走はかきつばた記念でしたが……  ダート路線の日程が変わり、今年は名古屋グランプリ(2100m)が行われました。    開門前から、長蛇の列  200人近くが、ゲートオープンを待っていました。  この季節らしい賑わい。  ただ、天気だけが残念で…時折小雨の降るような天候でした。 (オッズはパドック周回中のもので、最終ではありません)  12月、5ヶ月半前に行われた名古屋グランプリの覇者・ディクテオンが連覇を目指して登場。そしてライバルと目されたのは、絶好のデキで川崎記念に臨みながら敗れた、ノットゥルノ  しかし……レース後半の捲り追い込みが主戦法のディクテオンには、内ラチ沿いが有利なこの開催の馬場状態はあまりに酷でした。  果敢に先手を取ったノットゥルノが、速いラップを刻んで行き、レース中盤以降はもう一人旅。  2分10秒9のコースレコードで圧勝!  2着には、JRAオープンから高知に移籍して初戦だった7歳馬・ヒロイックテイル(写真中央)が入りました。これは大健闘! 「(3番手をポツンと行けたのが)あれが楽でしたね。自分のペースで行けました。歩様のハマりはしっかりしていないし、良くなる要素は残っていると思います。追い切りをかけたら結構動いて、それで馬がピリッとしました。2着ですが、やれることはやれたのではないかと思います。」  その後ろで上がってきたディクテオン(青帽)は、4着。  正直、前回勝ったときもこの馬のことを取材しているだけに、今日の馬場はディクティオンには「まさに合わない馬場」(岡部誠騎手)だと、見ているこちらも感じていました。 「この極端な馬場状態では……」  岡部誠騎手の表情と言葉には、自分にも馬にもどうにもならない要素に、もどかしさと無念さが溢れていました。 「レースの前に(吉岡辰弥)調教師に馬場の状況を伝え、早めに行くなり、ポジションを取りに行ってもいいという話になりました。ある程度押して位置を取りに行きましたけれど、かかって行くような馬ではないので、位置も取れず、(有利な)内ラチピッタリも取れませんでした。今日は、脚質が馬場に合いませんでした。」  今開催は、明と暗。くっきりという馬場状態でした。  観衆の声援と拍手に応える武豊騎手。  武豊騎手の勝利騎手インタビューでの話は、​名古屋競馬オフィシャルYoutube映像​でご覧下さい。 ​​​​  音無秀孝調教師(写真左から二人目)は「左回りが苦手というのは明らかですね。左回りはもう使いません。」と明言。春は帝王賞、秋は佐賀のJBCと東京大賞典を目指すと表明しました。      あまりにも気になるので……  次回は笠松。明日の新緑賞の取材に行ってきます。

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