2020/08/22(土)21:40
草原の椅子
「草原の椅子」宮本輝著。
遠間憲太郎は、50歳の会社員。
現在は、妻と離婚し、大学生の娘・弥生と夙川で暮しています。
数年前に阪神淡路大震災を経験しました。
街は、復興していますが、憲太郎の心の底には、震災で受けた衝撃が残っていました。
震災後、世界最後の桃源郷とよばれるフンザに旅行し、そこで不思議な老人と出会い、その老人から受けた言葉が心に残っています。
仕事上の取引先の社長であり、同じ年の富樫重蔵と、
仕事を超えた付き合いができ、
憲太郎が昨年行ったフンザと、
そして「生きて帰らざる海」と言われる「タクラマカン砂漠」
そこに、2人で旅行しようと~人生を問い直すために?、これからの生き方を模索するために?~。
憲太郎は、会社の近くで陶器店を営む篠原貴志子に、少年のような恋をします。
憲太郎の娘の弥生は、バイト先の上司の息子である4歳の圭輔に慕われます。
圭輔は、実の母親から虐待を受け、心身ともに未発達の幼児で、
普通の大人を受け入れないのです。
あるきっかけから、圭輔を憲太郎の家で預かることになります。
そこで、圭輔は、優しい大人たちに愛を注がれ、
言葉すら、ろくに話せなかったのに、
憲太郎を「トーマ」、富樫を「富樫のおっちゃん」と呼んで
少しずつ4歳児らしい子供になってゆきます。
そして、当初男2人旅のはずだったのに、
いつしか、篠原貴志子と、圭輔も加わった旅になりました。
そしてついに、4人はタクラマカン砂漠~生きて帰らざる海~に立つのです。
大いなる再生のために…。
もしかしたら、あるかもしれないささやかな出来事で綴られる日常。
人と人の細やかな触れ合いが、ちょっと切ないけれど、心地よい~。
そんな物語でした。
2013年に映画化されたそうです。
遠間健太郎は佐藤浩市、富樫重蔵は西村雅彦、篠原貴志子は吉瀬美智子。
そして、圭輔を虐待する母・喜多川祐未は、小池栄子。
さすがのキャスティングだと思います。