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どうぶつ畑

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暴れん坊やオトコの目覚め

暴れん坊やオトコの目覚め

腕に抱かれたまま寝てしまう屋久島ヤギの暴れん坊や君にも
とうとう性の目覚めの時が訪れた。

それまではまだ幼いということもあり、
他のメスたちと共に
お客さんのいるフロアに出て接客にいそしんでいた彼だったが、
ある日メスに乗る行動が見られたのでとうとう隔離とあいなった。

暴れん坊やがやって来た当時、当園にはすでに1頭の種オスがいた。
彼は韓国在来種という黒ヤギで
精力びんびんの実に子沢山な野郎だった。

だが彼は触られるのはおろか人が近づくのさえも嫌がるという、
人を怖がるヤギだった。
彼はふれあい広場の一角に設けられた柵の中で隔離され、
メスたちを魅了していた。
暴れん坊やはその彼とは真反対にある柵に隔離されることとなった。

こうして当園には2頭の性成熟オスが
広場のあっちとこっちに陣取ることとなったわけだが、
メスたちの反応はどうだろう。

これまでは黒い彼しかいなくて選択の余地も無かったのだが、
今では茶色い、
それも黒い奴よりもぴっちぴちの若い
活きのいいイケメンが登場したわけだから
それはそれは喜んでいることだろう、
と思ったのはどうやら人間だけだったよう。
かわいそうに暴れん坊や君はメスたちに見向きもされず
毎日をひとりぽつねんと過ごすことになってしまった。

オスもメスもある程度年齢のいったものを選ぶ傾向にあるようで、
これはきっと(セオリー通りならば)
それだけ年齢の高い個体の方が繁殖経験も豊富なはずだからだろう。
理にかなっている。
若いのがいいのはどうやら人間の世界だけのようだ。
 
動物は繁殖のために最もふさわしい相手を選ぶ。
自分の性欲を満たすことに重きをおきやすいヒトとは大違い。
きっとヒトよりヤギの方が種として生き残っていくんだろう、
などとわたしはしみじみ思いながらその光景を眺めていたのだが、
暴れん坊やにとってはどうでもいいことだろう。

だがこればっかりはわたしにもどうもしてやれない。
彼女たちの好みにとやかく口をはさむ筋合いはわたしにはないし、
いくらわたしが必死になって彼女たちに暴れん坊やのことを売り込んだとしても
所詮私はヒト、ヤギではないのだ。
あんたなんかになにがわかるのよん、
と聞く耳も持たれない。

発情したメスは黒い奴のところへ日々アプローチに訪れ、
彼の周辺ではヤギの熱い熱い愛の語らいが繰り広げられていた。
かたや暴れん坊やのところには誰も訪れず、
来たとしてもからかい半分のメスのみ。
暴れん坊やは喜んで迎えるが
メスはこんな乳臭い小僧っ子のプロポーズには心惹かれないらしく
(むしろ腹が立つらしく)、
がつんと一発やって去っていく。

かくしてわが園のヤギ社会はオスに対して局地的な偏りができてしまい、
あっちにはヤギがいるがこっちにはいない、
という事件がたびたび発生したのであった。

2004年3月5日(金)の日記より


黒い奴との勝負の行方は如何に・・・。
暴れん坊やおかまに負ける



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