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『緋い記憶』 『前世の記憶』 『蒼い記憶』 : 高橋克彦
3作品とも、主人公が失った過去の"記憶"を取り戻す過程が中心ストーリー。なぜ"記憶"を失わざるをえなかったのか?そこには、恐怖や悲しみ、憎しみや愛が隠されています。「緋い記憶」では血や死にまつわる記憶、「前世の記憶」ではタイトル通り自分が自分として生れる前の自分の記憶、「蒼い記憶」では幽霊やいるはずのない人、科学では説明できない記憶をテーマにしているようですね。
もう1つの固定設定は、 ほとんど全ての主人公が30代~50代男性。 そして失われた記憶の大半が、故郷の東北地方が舞台です。これは作者が、盛岡出身とだからですね。
ホラー=怖いはなし、
人の記憶というのもホラーなんですね。"記憶"のメカニズムの不思議や、脳の不思議な働きを感じます。
人の複雑な心理が、丁寧に描かれて、単なる謎解きに終わらず、ラストが予測出来ないものばかり。背筋が寒くなったり、「そういう事か!」と呻ったり。悲しい結末もあれば、心がほっとするものもありました。
そして、そんなきっかけで昔のことを思い出すことってあるな~と思ったり。
記憶は、時とともに風化し、真実とは違った形に変化したりする。そして忘れていた本来の記憶を取り戻した時、恐ろしい真実が明らかになっていく。
「記憶シリーズ」というと、海外小説トマス・H・クックの「緋色の記憶」をはじめとするシリーズがありますね。偶然なのか題名も似ています。長編ですけれど。他に「死の記憶」「夏草の記憶」「夜の記憶」などクック氏も多作な作家さん。
『緋い記憶』 記憶シリーズ1
生まれ故郷の古い住宅地図には、あの少女の家だけが、なぜか記されていなかった。あの家が怖くて、ずっと帰らなかったのに。同窓会を口実に、ひさしぶりに故郷を訪ねた主人公の隠された過去、そして彼の瞼の裏側に広がる鮮やかな“緋色のイメージ”とは、一体何なのか……。直木賞受賞の傑作ホラー。表題作ほか、選考委員の激賞を受けた「ねじれた記憶」など、粒よりの七篇を収録。痺れるように怖いのに、とてつもなく懐かしい――高橋克彦ならではの独自の世界を満喫できます。
【収録作品】 「緋い記憶 」「ねじれた記憶」「言えない記憶」「遠い記憶」「膚の記憶 」「霧の記憶」「冥い記憶」
『前世の記憶』 記憶シリーズ2
幻想小説の新地平を拓いた「緋い記憶」から3年。あの甘美な恐怖が甦る。催眠療法で生前の記憶を甦らせた男を描く表題作ほか、7篇を収録。性的な頭痛に悩まされ、催眠療法を受けた男に甦る、存在するはずのない記憶。遠足のリュックサックの中のバナナ、土盛りのダム、見覚えのない同級生たち、そして場所は暮らしたこともない岩手県盛岡…。それは前世の記憶なのか?直木賞受賞の『緋い記憶』に続く、「記憶シリーズ」第二弾。
【収録作品】「前世の記憶」「傷の記憶」「匂いの記憶」「凍った記憶」「針の記憶」「匂いの記憶」
『蒼い記憶』 記憶シリーズ3
オゾンの匂いがきっかけで、脳裏に蘇った幼馴染みの面影。幼少の一時期をすごしたあの小さな村で、私の唯一の遊び相手だった女の子。やがて家の火事で両親は焼死、私は村を離れた──。記憶に導かれ、村を訪れた男が見たものは!?(「蒼い記憶」)。いい大人のくせに、私はなぜか床屋が怖い。剃刀も、頭を洗われるのも……旅先で仕方なく入った床屋の椅子で、古ぼけた鏡の中に写った風景が、何十年ぶりの記憶を呼び起こした──(「鏡の記憶」)ほか、粒揃いのホラー12篇!「記憶シリーズ」第三弾!珠玉のホラー短篇集。
【収録作品】
「夏の記憶」
30年以上昔の子供の頃、面倒を見て貰ったお手伝いさんの順ちゃん。好きだった。その順ちゃんが田舎に帰って間も無く、若くして死んだことを知らなかった。轢き逃げされた順ちゃんは殺されたのだと思った・・・。
「幽かな記憶」
母親は蒸発し、父親は自殺した。1人残された赤子の私を、乳母車に乗せて祖母の家まで運んできたのは・・・。
「記憶の窓」
この短編集の中では一番ホラー色が強い。“私”だと主張する女性が現れた。私は男だが“私”を名乗るのは10歳以上も年上の女性だ。ようやくたどり着いた記憶の先には、幼い日の恐ろしい記憶が・・・。
「棄てた記憶」
作家の私は、出版社の企画で精神科医との対談に出た。その対談で、私の精神分析をされ、それが見事なほど当たっているので動揺を隠すのに冷や汗をかいた。精神科医に指摘された“自転車というトラウマ”を捜すため、盛岡に帰ったが、よみがえった記憶の先には・・・。
「水の記憶」
永い間自分を苦しめてきた幼い日の事故の記憶。遊び友達の女の子が、私の間違った指示で池で溺れたのだ。典子は事故の後遺症で左半身麻痺の後遺症が残った。20年ぶりの小学校の同窓会で再会した典子と私は、やがて結婚したが・・・。
「鏡の記憶」
盛岡の講演会の講師に招かれた私は、シェーバーの電池を切らし、仕方なく理髪店に飛び込んだ。店主の様子がおかしい。顔にもどこかで見覚えが。やがて、それは恐ろしい記憶へと繋がっていく・・・。
「夢の記憶」
面白い夢を見た私は、不思議な世界に引き込まれていった・・・。
「愛の記憶」
したたかに飲んで帰った男は、昨夜のことを殆ど覚えていなかった。部下の坂本が家まで送ってくれたらしい。坂本は私が盛岡に長々と電話をかけていたと言う。しかも女房にだ。妻の秋子は6年前に亡くなっていた・・・。
「嘘の記憶」
地方スーパーの経営で成功した立花の出版祝賀パーティーに招かれた“私”は、若い頃、同人誌仲間だった。他のメンバーたちも招かれて来ていたが、立花を良く言う者はいなかった。同人誌仲間からただ1人、作家になっていた“私”は、女性メンバーだった高島佐江子と読者として手紙をくれた柏原玲子をめぐり、ある秘密に辿り着く・・。
「炎の記憶」
趣味で集めているジッポーのライターから、幼い日の記憶に疑問を抱く。幼い“私”の手を引いて家を出ようとした母。やがて、母の秘密、そして自分の出生にまで遡って暴かれていく過去。
「欠けた記憶」
アルバムから台紙ごと写真が剥がされていることに気付いた。それを突き詰めていくと、恩人にたどりついた。浜田プロダクション社長の浜田が肩入れしてくれたから、今の自分が居るのだ。だが、浜田には他人に知られてはならない過去が・・。
「蒼い記憶」
この作品もホラー色が強い。子供の頃の匂いの記憶が、恐ろしい村の秘密を明らかにしていく。この短編集の中で、最大の悲劇が襲う。
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最終更新日
2007年11月26日 10時04分49秒
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