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陽の当たる場所

夢で生きる





夢で生きる






一人で車に乗っているのも悪くないが、大勢で賑やかに車に乗っているのも楽しくて好きだ。


さほど広くない五人乗りのセダンに、大人が三人と子供が二人。座っているのも窮屈なぐらいのスペースしか自分に与えられていないが、ずっと笑いながらその空間を楽しんでいた。


運転手はぐり子の父、後部座席にはぐり子の母とぐり子の子供達、助手席にはぐり子、北方の避暑地でのバカンスを終え、中心地をぐるりと囲むように走っている環状線をハイウエイならではのスピードで住居のあるCブロックへと向かっていた。


この町は、いわゆる城下町みたいなつくりになっていて、超高層のビルが建ち並ぶオフィス街が中心にあり、それを囲うようにホテルやアミューズメントパークやレストランなどがひしめきあい、一番外側の円が住居部分、整然と同じ形のアパートメントがゴミ一つない道路によってきれいに区画で分けられていた。

円の北側がAブロック、西側がBブロック、南側がCブロック、東側がDブロックとなっている。
ブロックといっても広大で、一つのブロックはかつて日本が都道府県制度をとっていたときの一つの県に匹敵するぐらいの大きさだ。
ぐり子の家は南側のCブロックに属するが、位置的にはBブロックに近く、そして中心の繁華街にも近い場所に位置していた。

車は現在北側のAブロックからBブロックへ入るところだった。
ぐり子は楽しくおしゃべりしながらも座っている場所が助手席だったため、視線は窓の外へ向けていた。少し前まではいつもと同じ光景が窓ガラスの外を流れていっていたのに、気がつくと、

何かがいつもと違う、

何かと聞かれても答えられなかったであろうが、やはり窓の外の光景がいつもと違う感じがした。周りを走る車のスピードがいつもより速いような気がしたし、何より車の運転手の瞳が恐怖に見開かれた状態である人が多かったからだ。


車はBブロックを過ぎ、そして高速道路を降り、繁華街へと突入した。この繁華街を抜ければぐり子の家がすぐに出てくるのだが、やはり街の様子がいつもと違い、道には人が溢れ、その多くはどこへ行ったらいいのか分からないように走り回っていた。


さすがにぐり子の父もこの異常な空気に気がつき、車を停めることに。何か情報を得てくると言って、車の外へ出た。
ぐり子も母と子供達と車の外へ出て、走り回る人々の姿を見ていたのだが、ヒカリタワーというオフィスとショッピングセンターが一体になっているビルの外壁に掲げられた巨大なスクリーンに目を奪われた。



つい先ほど車で走り抜けてきたAブロック付近のオフィスビルが爆撃されている様子が画面に映っていたのだ。


戦闘機は円盤型をしていて、中から青い光を放つスケルトンの機体で、やはり青い光線をその機体から放ち、それがAブロックの超高層ビルを包み込んでいた。爆発や煙などはなく、その光に包まれた全て物もが、その動きの源をその光に奪われているようだった。


ぐり子の頭の中には、以前テレビのニュース番組でやっていた、新型核弾頭のことを思い出していた。

「帰ろう、家に帰ろう。繁華街は危ない」

そうぐり子の母と、すでに戻ってきていたぐり子の父に向かって言った。が、ぐり子の母は、

「いや、地下街なら安全そうだし、買い物もして帰らないと、いつ食料の補給ができるかどうか分からない」

と、ヒカリタワーの地下街への入口に向かって歩き出した。

「いや、ダメだ、帰ろう」

とぐり子は母を車の中に押し込んだ。

恐怖からではない。生き抜くために、今まで培ってきた知識とそしてその頭脳を最大限に使って出した答えだった。
旧ソ連邦が作った地下鉄構内は巨大な核シェルターであるという噂があるが、その地下鉄構内に入るために、人が駆け足で走るスピードよりも早いエスカレーターで何分も地下にもぐらなければならない。この地下街といえば、出口は多数あり、地上のすぐ下に広がる、いってみれば地上とそう変わらない、むしろ出口が限られてしまっている分生き埋めになる可能性も多い空間なのだ。きっとあの青い光が襲ってきたら、一瞬にして命の源を全て奪われてしまうだろう。
ならば無防備ではあるが、繁華街から離れた自宅なら、繁華街ほど攻撃の的になることも少ないであろうし、自分と自分の家族の最後の瞬間が自宅なら、少し悔いはあったとしても、あの青い光を正面から迎いいれることができるであろう。


自宅付近に着くと、その風景はいつもと同じでゴミ一つなく整然としたものであったが、いつもの光景、そう子供達が走り回ったり、買い物へ行く道を急いでいる人達や車の往来など一切なく、街は静まり返っていた。しかしぐり子はそんな静けさの中にも、どこかその街の中に息づく何かを感じていた。それは見慣れた住み慣れた街だったからかもしれない。ぐり子は帰ってきて間違いがなかったのだと、何故かその瞬間、確信した。

子供達と両親と家に入り、ぐり子は情報を得るためにラジオを押入れの中から引き出してきた。テレビはぐり子の家にはなかった。引き出してきたラジオは、ぐり子には日常ラジオを聴く習慣はなかったので、これが現代のものかとおもわれるぐらい大きなもので、しかも電源を取るコードも紛失していた。電池で動かそうと、ラジオの裏面を見てみるが、単2が8本と、家の在庫では足りないのが分かった。

ぐり子は角のコンビニまで電池を買いに行くことにした。

家を出て、すぐにコンビニに着いたのだが、その光景にぐり子は唖然とした。

コンビニの店主はすでに非難したのであろう、その入口は固く閉ざされていたが、こういう機会を狙っている空き巣にやられたのか、入口以外のガラスが全て割られていて、商品の棚なども荒らされているのが、ぐり子の目に入ってきた。


これでは仕方がないと諦めて、家に帰ろうとしたところ、ぐり子に声をかけてきた存在があった。

巡回中の警察官だった。

「集会場の2階にみなさん非難されています。そこで安否の確認もしていますので、急いで行ってください。」


ぐり子は来た道を戻り、子供達と両親を連れて、集会場へと向かった。
集会場の2階に子供達と両親を押し込み、そこで初めて安心したのか、ふとぐり子の兄弟のことを思い出した。
郊外のはずれで、住民相手に仕事をしている兄弟は大丈夫であろうと、が、Bブロック付近の中心地で仕事をしている兄弟は無事なのだろうかと。
この瞬間、ぐり子がこの日初めて安堵を感じた瞬間、この日初めての恐怖を感じた。
目に見える現実は、立ち向かっていくものであり、受け入れていくものであり、それが運命なら運命の中で精一杯もがくだけだと思えるが、目に見えない現実は、その現実よりも大きくぐり子の心に押しかかってきた。
ぐり子は集会場のドアノブに手をかけたまま、たまらなくなって、ここからでは絶対に見えないBブロックがあるであろう方向の空を見上げた。
ぐり子にできることはその空を見ながら無事を祈るだけだった。

と、その瞬間、ぐり子の目にあの青い物体が飛び込んできた。手が届きそうなぐらい近い場所にあるのが分かる。戦闘機がCブロックの上空に現れたのだ。

次の瞬間、青い機体から青い光線が放たれるのを、動けずにそこで見ていた。


「あ、あ、あ、ヒカリタワーが!、ヒカリタワーが!」


ヒカリタワーが青い光に包まれて、そしてその命の火を消していくのをぐり子はしっかりとその瞳で見ていた。
そしてぐり子は意識を手放した。





意識が戻ったのはその直後で、集会場にいた人の腕に抱えられて、集会場の中のマットの上に横たえられた後だった。


集会場の中は思ったよりも人が少なく、今の状況を把握できず楽しそうに走り回っている子供達と、その母親達、それから老人達がほとんどだった。若い男女や働き盛りの男性は、まだ中心地にいるのであろう。

集会場の隅にテレビが置かれていて、大人は大体その周りに陣取りテレビで放映される街の様子に釘付けだった。
テレビの画面には先ほどぐり子がその目で見た、死にゆく、ヒカリタワーと、そしてぐり子の母が買い物をしていこうと言った地下街が続けざまに映されていた。


ぐり子の瞳にそれらは映し出されたが、それはぐり子の頭脳の中までは入ってこずに、目で見た現実にもかかわらず、非現実的な、どこか別の国での惨事にしか感じられなかった。映像はぐり子の頭の中を素通りし、だが、テレビから流れてくる音声には、何故かぐり子の頭は反応を示していた。

まだ攻撃されていないDブロック付近の中心地にあるテレビ局から発信される音声は、攻撃元の国がどこであるかまだ判明していないことや、あの青い戦闘機の製造国はヨーロッパの国であるということなどを告げていたが、アナウンサー独特の発声ではなく素人に無理やり難しい原稿を読ませていることが伺えた。

「俺達は映像を発信できる限り、この番組を続けていきます」

と言ったのは、コメディアンのイチョウクラブというコンビの3人のうちの一人だった。時折、その場にふさわしくないギャグを飛ばしながらも、次々にニュースの原稿を読み、次々に街の様子を視聴者に伝えていった。

一瞬、ぐり子は腹立たしく感じた。が、その腹立たしさが、ぐり子を正気に戻し、そのテレビを見ている、少なくともこの集会場にいる人達の、全ての不安を取り除けるはずはないものの、緊張感をほんの少しだけ和らげているように感じたのだ。



全ての人が自分の天職を見出せるとは限らないし、そして多くは自分の死する瞬間を選べるわけではない。彼らのギャグが面白いか面白くないかは別として、少なくともイチョウクラブの3人は彼らの職業に恥じない満点の仕事をして、そして死するかもしれない瞬間を彼ら自身で選び、勝ち取っているような気がした。





私は自分で選ぶことができるのであろうか、











と思った瞬間、






画面が・・・・・。













ぐり子は瞼を深く閉じ、そしてその瞼を開けた次の瞬間に目に飛び込んできたものは、









上の子が私の横で口を開けて寝ている姿でした。




終わりです。




すいません、こんなので。





あ、登場人物はまあぐりら一家がほとんどなので問題ないとして、イチョウクラブはかなり私の頭の中でははっきりと分かっているのですが一応架空の人物です。
ぐりらが見た夢の中での話しなので現実ではありません。
都市やビルの名前についてもかなりはっきりと記憶があるのですが、ここで使わせてもらっているのは架空の都市とビルです。
あくまで夢の中での話ですので、一切現実とは関係ありません。




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