広告屋の独り言

2008/11/29(土)00:19

俺のハンダンで!

広告業界のヘンな人(2)

僕が前にいた広告代理店は、まるで珍獣ランドみたいな会社で、とくにアートディレクター系の職種の人に理解不能な方々が多かった。 その会社は、広告会社としては珍しく、自社でイベントを主催して集客を図る仕事があって、僕も何度かその仕事に関わったのだった。集客のために、新聞社とタイアップして新聞の15段広告(全ページ広告)を打ったりする力の入れようで、ローカル紙の地元密着イベントとはいえ、目立つことこの上ない。 で、あるとき僕にその仕事の、コピーの役割が回ってきた。 一緒に組むのは、日頃から「この人はあり得ないほどダメなヤツだな」と僕がひそかに認定していた先輩のアートディレクターA氏。 彼は何の打ち合わせもなく、一人で勝手に制作を進めて、自分的にほぼデザインが完成したところで僕に回してきた。(通常であれば、その前段階からコピーライターも一緒に入って、原稿のコンセプトとかメッセージを固めたりするんだけどね。) で、A氏は僕にデザインを見せながら、「エムちゃん、ここに15文字ぐらいでキャッチくれ」 まあ、ここで普通のコピーライター諸氏は、「わかってねえなあああああ」と内心ガッカリしながら、この仕事が楽しいものになることを完全にあきらめ、「15文字ぐらいでキャッチって、何だよその自己チューな文字数制限は?」などと思うんですが、まあそれはいい。 もうひとつ、僕の場合は、「頼むから苗字にチャン付けで呼ぶその妙な業界風味、やめてくれ」と思うのだけど、まあそれもいい。 僕はA氏から出されたデザインに、本当に、目を見張ったのだ! 新聞1ページ全面にあしらわれた、「壷(つぼ)」!大きな「壷」のビジュアル! 読んでくださる方への注釈として念のために申し上げると、このイベントは、「壷」に関連するものではございません。むしろ、このイベントと壷と、一体どこに接点があるのかさえ、想像することすら困難。 まあ、例えて言うならば、「全国ご当地カレーライス食べ比べ!」的な雰囲気の、どちらかと言うとファミリー向けの楽しそうなイベントなのに、その集客のための告知ビジュアルが、ものすごーーーく陰鬱な「壷」!しかもナニゆえに、全面に壷? ・・・・・・・・・・・・・・・・・。 ここで僕は考えるわけですよ。 いったいこの壷はどこから来たのかと。 いったいこの壷は、どこから来てどこへ行きたいのか、と。 んで、恐る恐る、アートディレクターA氏に聞くわけです。 「あんのーーーー、この壷には一体どういう意味が・・・・・・?」 まあ、よくあるこじつけ的な理由が返ってくるだろうから、もうこの際何でもいい、15文字のコピーにつながるヒントだけもらえればいいや的な気分で僕は聞いてるわけです。 しかし返ってきた言葉が、 「おお?つぼか?俺な、これ一回使ってみたかったんだよな」 ヤバイ何にもヒントなしですか。 「でもあのーーー、今回のイベントと壷とはほとんど関係ないように思えるんですけどね、それは僕の気のせいでしょうか・・・?」 「おお?うん、分かるよ?エムちゃんの言いたいこと、俺だって分かるよ?でもな、ここはお前が引け。な?今回は俺のハンダンで、これでいくから!」 俺の!!!!!! ハンダン!!!!!!!!!!! ・・・・・・・で、壷(謎 まったく意味が分からないししょうがないので、壷のビジュアルに僕は、 「みんなで楽しくカレーを食べよう」 的なコピーを書いたのでした(笑 見事15文字(^^; 新聞に掲載された広告は、なんだか「弥生式土器展覧会」的な大胆ビジュアルに、なぜか「みんなで楽しくカレーを」的なキャッチの入った、非常にシュールな出見栄えとなっておりました(汗 もちろん、集客は大失敗に終わったわけですけどね? あれで客がたくさん来たら、わはは、むしろ驚くよなあ(^^;;

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