「袋小路の男」絲山秋子
図書館で予約して借りてきた本。ついに読み終えました。「袋小路の男」の他、「小田切孝の言い分」「アーリオ オーリオ」と3つの短編からなっている。「袋小路の男」では主人公の「わたし」には、12年間、指一本ふれることなく、それでいて最期は看取るとまで思いをよせる男がいる。時には1年も会わなかったりするのに、続いていく二人。女の立場として、主人公「わたし」の切ない気持ちに共感できた。蛇の生殺しのように片想い状態というのが嫌だという気持ちもわかる。けれど、たとえ体の関係がなくても、「静かな気持ち」でいられるなら幸せだ・・・と思ってしまうのは、私自身が年を重ねて、山あり谷ありの人生だったせいかな。主人公と小田切は、恋人未満家族以上。「家族以上」、そんな出会いそうあるものではない。二人の関係がうらやましい。「小田切孝の言い分」では、三人称で物語りがすすみ、「袋小路の男」では、つかみどころのなかった小田切の思いが明らかになる。こちらを読むと。「袋小路の男」がさらに楽しめる。