席亭の囲碁日記

2005/07/11(月)21:13

ツケノビ定石

 よく巷で初心者向けの定石としてツケノビ定石が教えられている。  このツケノビ定石は強い人には案外不人気(注)な定石で、初心者向けだという定説も手伝って置碁定石的な雰囲気さえある。  ツケノビの特徴は、形が決まり手厚くなることだ。初心者向けといわれる所以である。定説には一応の根拠がある。  もっとも自分の石が固まるかわりに相手の石も固めてしまうので、掛かってきた石を攻めたい場面では大抵不適切になる。置碁でのカカリは大抵弱い石であるためツケノビを選択するのは必ずしもスマートではない。挟んだり、コスミツケたりするほうが厳しいことが多いのだ。置碁でツケノビを選択するのは簡明さを求めた妥協策だということは知っておいたほうがよいだろう。  そして最大の問題が、ツケノビ定石の手順に危険が沢山あること。たしかに定石手順が完成すればツケノビは厚くて簡明だが、そうはならないケースも多々あるのだ。図に挙げた白のデギリはひどい無理手だがこれを受けきるにはなかなか力が要る。これ以外にもハネてからデギル手や、間接的にノゾキでくすぐる手などがあって危険が一杯だ。  もちろんツケノビ定石を使いながらこうした嫌がらせの対策と学び、戦いの技術を一つ一つマスターしてゆくのであればよい上達方法であり、初心者向けの定石といえるかもしれない。しかし巷でのツケノビ定石の扱いは「ツケノビさえ打てば何とかなる」的な安易なツケノビ至上主義が多いように見える。   注 プロの棋譜を並べていてもあまり現ない。意外なことは趙治勲がツケノビの採用率が高い棋士ということだ。  

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