テーマ:本のある暮らし
カテゴリ:Novel
・青山美智子『人魚が逃げた』は、銀座の街角を舞台に、SNS発の謎めいた“王子”と呼ばれる青年が放つ一言──その言葉が、五人の人生の節目を静かに揺らす連作短編集だ。 ・王子の言葉が紡ぐ、小さな奇跡。ある3月の週末、銀座の歩行者天国に現れた「王子」と名乗る青年が、「僕の人魚が、逃げたんだ。この場所に」と語り、SNSは瞬く間に祭りに。現実と幻想が交錯するその声は、街を行き交う五人の胸に静かな波紋を広げる。 ・五つの物語、ひそやかな重力 - 元タレントの会社員は年上の恋人との関係に自信を失いかけていた - 主婦は子どもの成長と共に自らの存在意義を見つめ始める - 絵画コレクターは執着が家族を壊した過去と向き合う - 作家志望者は選考結果を前に、自らの物語の重みを問う - クラブのママはプロとしての姿と、自身の望みの距離を測る ・銀座という光と影の交響。銀座という街が、華やぎと孤独の狭間で揺らぎ、幻想と現実を織り交ぜる舞台として響く。それぞれの“人魚”は実在なのか、それとも心の隙間が生んだ幻か──その曖昧さこそ、日常の奥底に漂う不思議さをすくい上げる。あの日、誰かの言葉にふと立ち止まり、気づけば別の自分に目が向いていた──そんな記憶を静かに呼び起こす作品だ。 ・『人魚が逃げた』は、王子という架空のナレーターが紡ぐ断片を通じて、人生のひと息ごとの心の動きを丁寧に照らす連作詩。日常の延長線上に潜む小さな奇跡を、その目に、その胸に感じさせる、30〜40代の大人たちに寄り添うゆるやかな灯りだ。 ・受賞歴:2025年 第22回本屋大賞第5位 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2025.07.18 00:00:13
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