Book #1166 ウチの子の、結婚相手が見つからない! 親の代理婚活でわかった「結婚の壁」
・「ウチの子の、結婚相手が見つからない! 親の代理婚活でわかった「結婚の壁」」は、家族問題や若者を取り巻く社会問題を長年取材してきた 石川結貴 が、「親の代理婚活」という現象を入り口に、日本社会における結婚の困難さを描いたノンフィクションである。タイトルだけを見ると、少しコミカルな社会観察本のように映る。しかし本書の内容は軽くない。描かれているのは、結婚できない若者の問題ではなく、結婚できない社会の問題だからである。・物語の出発点は「親の代理お見合い会」である。会場に集まるのは結婚適齢期を過ぎた子どもを持つ親たち。本人ではなく親同士が名刺を交換し、写真を見せ合い、子どものプロフィールを紹介する。一見すると奇妙な光景だ。しかし著者はその場を冷笑しない。なぜなら、そこにいる親たちは単なる過干渉な存在ではなく、子どもの将来を真剣に案じる人々だからだ。・あらすじとして見るなら、本書は複数の家庭への取材を通して、現代日本の結婚事情を解き明かしていくルポルタージュである。高学歴で安定した職業に就いているのに結婚できない男性。仕事に打ち込み過ぎて出会いを失った女性。親元を離れられない子ども。経済的不安を抱える非正規雇用者。介護や家族問題を背負う人々。それぞれの事例が積み重なることで、「結婚できない理由」が単純な個人の問題ではないことが見えてくる。・本書の核心は、結婚は個人の努力だけでは解決できない社会現象になっているという指摘にある。かつての日本では、地域社会や親族、職場が自然な出会いの場を提供していた。しかし現代ではその仕組みが弱体化している。自由恋愛が一般化した一方で、人々は自力で相手を探さなければならなくなった。選択肢は増えた。だが出会いはむしろ難しくなった。本書はその逆説を丁寧に描いている。・本書は「なぜ結婚しないのか」という問いを、なぜ結婚できる環境が失われたのかという問いへ転換する。そこに本書の社会学的な価値がある。文学的に見るなら、本書は現代日本の孤独を描いた作品でもある。取材対象者たちは決して不幸ではない。仕事もある。住む場所もある。趣味もある。だがどこか満たされない。誰かと人生を共有したいと思いながら、その一歩を踏み出せない。その姿には、現代社会特有の孤立が滲んでいる。親たちが代理婚活に参加するのも、単に結婚を急かしたいからではない。子どもが孤独な老後を迎えることへの恐れがあるからだ。そこには愛情と不安が複雑に絡み合っている。・批評的に見るなら、本書は結婚を人生の重要なテーマとして扱っているため、多様な生き方が尊重される現代の価値観とはやや緊張関係にある。結婚しない人生も当然存在する。独身で充実した人生を送る人もいる。しかし著者は結婚を絶対視しているわけではない。むしろ、結婚したい人が結婚しにくい社会になっているという現実を問題視しているのである。・『ウチの子の、結婚相手が見つからない!』は婚活本ではない。結婚という現象を通して、家族、孤独、経済、地域社会の変化を描いた現代日本の社会ルポである。30代から40代の読者にとっては、自らの人生だけでなく、親世代や次世代との関係を考えるきっかけにもなるだろう。その本質は結婚論ではなく、「人は誰と生きるのか」という普遍的な問いを見つめた作品にある。ウチの子の、結婚相手が見つからない! 親の代理婚活でわかった「結婚の壁」 [ 石川 結貴 ]価格:1,870円(税込、送料無料) (2026/5/16時点)楽天で購入