テーマ:本のある暮らし(4190)
カテゴリ:Novel
・横山秀夫『64(ロクヨン)』は、刑事としての矜持と、組織の論理とのはざまで揺れる男が、過去の未解決事件と向き合う姿を描いた“警察小説の最高峰”とも称される傑作である。 ・舞台は、D県警。広報官に異動となった元刑事・三上義信は、警察と記者クラブの間で揺れる「記者発表のルール変更問題」に直面し、板挟みの苦悩を抱えていた。そんな中、かつてD県警の威信を失墜させた、未解決の少女誘拐殺人事件「64(昭和64年に起きた事件)」の遺族を慰問する企画が持ち上がる。ところが―― ・『64』の最大の特徴は、“事件”そのものよりも、“事件に向き合う人間たちの内面”が主軸にある点である。警察内部の組織力学、記者クラブとの駆け引き、上層部の圧力、そして過去の悔恨。 構成はあくまで静かで、淡々とした筆致で綴られているが、行間に込められた感情の濃度は異様なまでに濃く、最後の数章では文字通り息を呑むような展開が用意されている。 「64は、終わっていない。いや、始まってすらいなかった。」 過去の“未解決事件”は、風化するどころか、なおも人の人生を支配し続けている。 ・受賞歴:2013年 第10回本屋大賞第2位、2012年「このミステリーがすごい!」国内編 第1位 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2025.06.23 00:00:12
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