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テーマ:本のある暮らし(4321)
カテゴリ:Novel
・宮島未奈『婚活マエストロ』に心が引き寄せられるだろう。孤独な日常を送る40歳の在宅Webライター、猪名川健人が受けた仕事は、怪しげな婚活会社(ドリーム・ハピネス・プランニング)を取材すること。古びた妖しげなオフィス、手作り感あふれる小さなパーティーが舞台だ。そこで出会ったのは、場違いなほど美しく凜とした女性・鏡原奈緒子。彼女は「私は本気で結婚を考えている人以外は来てほしくありません」と断言し、マイクの前に立つ。魔術のように手慣れた進行で場を支配するその姿は業界でも有名な「婚活マエストロ」だった。なぜこんな場にいるのか、マエストロとは何者なのか――疑問は深まるばかり。やがて猪名川は記事だけで終わらない感情の旅へと足を踏み入れることになる。 ・猪名川健人──戸惑いながらも、少しずつ婚活の世界に関心と共感を寄せていく“ビギナー”だ。彼の視点を通して、読者は「興味はなかったけれど、意外と心が動いてしまう」感情をそっと知る。 ・鏡原奈緒子──理想と現実をつなぐ立ち居振る舞いを持つ、職業人の凛々しさそのもの。「参加者の感情のベクトルを読む」能力を使って、カップル成立させる手腕はまさに「マエストロ」。その熟練が物語を鋭く美しく貫く。 ・婚活パーティーの参加者たち──シニア向け、地方のバスツアー参加者、SNS慣れした若い男女…個性豊かな群像が並ぶ。その多層性が、婚活現場の多様な動機と期待を描き出す。 ・『婚活マエストロ』は、騒がしい婚活現場の裏にある静かな変容を描く物語。新人とベテランの視線が交差し、個々の“手探り”が、少しずつ輪郭を築いていく。その余白を信頼と共感の空間に変える構造は、30〜40代のビジネスパーソンにとって、思考・表現・チームづくりの手触りを磨く文学的な扉となる。 ・『婚活マエストロ』は、ほんの少しの出逢いと手の内に触れた瞬間から始まる物語であり、人生の前提をゆるやかに揺らす“成熟した変化”を教えてくれる。読後の余韻に、自分の言葉と感情を託したくなる──そんな一冊である。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2025.10.05 00:00:23
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