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2025.11.15
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カテゴリ:Business

・『ゴールドマン・サックスに洗脳された私』(原題:Bully Market: My Story of Money and Misogyny at Goldman Sachs)は、元ゴールドマン・サックス副社長ジェイミー・フィオレ・ヒギンズによる、ウォール街の象徴的投資銀行の内側を赤裸々に暴いた回顧録である。表向きは洗練されたエリート集団として知られるゴールドマンだが、その内部に潜む性差別、権力闘争、そしてを神とする企業文化を描き出す本書は、金融業界の暗部を知るリアルな証言として全米で大きな反響を呼んだ。

・ジェイミー・ヒギンズは、敬虔なカトリック家庭で育った中西部出身の女性。父は郵便局員、母は教師という庶民的な家庭で、努力を信条に名門ペンシルベニア大学ウォートンスクールを卒業後、22歳でゴールドマン・サックスに入社する。そこからの彼女のキャリアは、外から見れば成功の一語に尽きた。激しい競争の中で結果を出し続け、女性として異例のスピードで副社長に昇進する。しかし、その成功の裏側には、洗脳にも似た企業文化への適応と、自分自身の良心を押し殺す日々があった。ヒギンズが出会ったのは、数字と権力に支配された世界だ。そこでは「稼ぐこと」こそが絶対の価値であり、長時間労働・過剰な飲み会・上司への服従が当然とされた。女性は少数派でありながら、同僚や上司からの性的嫌がらせや侮辱的発言が常態化していた。彼女自身も何度も屈辱的な場面に遭遇しながら、周囲に“男社会で成功した女”として認められるために、強がり、笑顔を貼り付け、自分を武装していく。

・だが、地位が上がるほど孤独は深まった。出産と子育ての時期には、「母親は昇進にふさわしくない」と暗に告げられ、家庭との両立は罪悪感に変わった。ヒギンズは次第に、「自分は誰のために働いているのか」という根源的な疑問に直面する。金銭的成功、社会的名声、エリート意識――それらすべてが空虚に感じられたとき、彼女は“ゴールドマン・サックスに洗脳されていた”ことに気づく。最終的に、20年近いキャリアを捨て、退職を決意。彼女はその過程で、「真の成功」とは他人の価値基準に従わない自由であると悟る。

・本書は、単なる暴露ではなく、「企業文化がいかに個人の思考を支配するか」を描く心理的ドキュメントである。ヒギンズは、ゴールドマンの世界を「信仰」に喩える。成功を信じ、上司を崇め、ルールに従う。内部では“信者”としての忠誠が求められ、疑問を抱くことは“背信”とみなされる。その構造が、無意識のうちに人間を“洗脳”していく。

・また本書では、女性としての葛藤が大きな軸を占める。ヒギンズは“ガラスの天井”を突破した成功者として称えられながらも、実際にはその天井の厚さを誰よりも痛感していた。出世のために“男のように振る舞う”ことを求められ、母であることがキャリアの足枷と見なされる現実に直面する。その歪んだ構造は、金融業界に限らず、グローバル企業に共通する“構造的な偏見”を象徴している。

・本書は、3040代のビジネスパーソンにとって、企業の中で「自分を失わずに働くとは何か」を問う一冊でもある。組織はしばしば文化という名のもとに、個人の価値観や倫理観を侵食していく。ヒギンズの体験は、成功や昇進を目指す過程で、人はどこまで自分を犠牲にするのか、という現代的な問いを突きつける。彼女の語る「洗脳」は、特定の企業に限った話ではない。長時間労働、成果主義、同調圧力、そして出世しなければ負けという空気――日本企業にも共鳴する構図が見える。ヒギンズは、その構造の中で金のために心を麻痺させた自分”と対峙し、やっとの思いで抜け出した。その過程は、現代の働き方を考えるうえでの鏡であり警鐘でもある。

・『ゴールドマン・サックスに洗脳された私』は、金融エリートの暴露記であると同時に、「個人の自由と幸福を企業社会から奪還する物語」である。金と名声のために自分を偽るのか、それとも信念に従って生きるのか――ヒギンズの選択は、成功の定義を根底から問い直す。ビジネスの現場で疲弊し、組織に飲み込まれそうな者ほど、この本の痛みと解放を深く理解できる。“洗脳”とは他人の手で行われるものではなく、自分が自分にかける呪いである――ヒギンズの筆は、それを鋭く暴き出している。








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Last updated  2025.11.15 00:00:13



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