105657 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

Digital Book Library of SKPI

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

×

Profile

DBL_SKPI

DBL_SKPI

Keyword Search

▼キーワード検索

Category

カテゴリ未分類

(0)

Business

(346)

Novel

(532)

Manga

(143)

Life

(241)
2026.09.06
XML
カテゴリ:Business
​

・養老孟司の『AIの壁 人間の知性を問いなおす』は、AIの進歩を前にして、「そもそも人間の知性とは何なのか」を問い直す一冊だ。養老孟司は、AIがどこまで人間に近づけるかという競争そのものに距離を置く。AIは大量の情報を処理し、言語を操り、囲碁や将棋で人間を凌駕する。しかし、それだけで「人間と同じ知性を持った」と言えるのか。本書の核心は、「知能」と「知性」は同じではないというところにある。AIを理解しようとすると、逆説的に人間そのものが見えてくる。

・AIについて考えるとき、普通は、「AIは何ができるようになるのか」という未来予測に目が向く。しかし養老が向ける視線は逆だ。「AIにはできないことは何なのか」ではなく、「人間はそもそも何をしているのか」と問い直す。AIはデータを処理できる。文章を生成できる。画像を認識できる。複雑なパターンを見つけられる。しかし人間は、単に情報を処理しているだけではない。身体を持ち、環境の中で生き、感情を抱き、他者と関係を結び、死を迎える。この「身体を持った存在」という点が、人間の知性を考えるうえで重要になる。

・本書を読むうえで最も重要な区別がここにある。知能=問題を解く能力に対して、知性=何を問題にするべきかを考える能力と捉えることができる。AIは与えられた目的のもとで、極めて高い能力を発揮できる。しかし、「そもそも、この目的でいいのか」という問いは別の問題だ。ビジネスでいえば、売上を最大化するAIを作ることはできても、「売上を最大化することが、本当に会社や社会にとって良いことなのか」という問いは、単純な最適化問題ではない。ここに人間の知性を考える余地が残る。

・養老孟司の思想を理解するうえで、「身体」は欠かせない。AIには身体がない。もちろんロボットに身体を与えることはできる。しかし人間の身体は、単なる情報入力装置ではない。空腹になる。疲れる。痛む。老いる。病気になる。そして死ぬ。人間の思考は、こうした身体的条件から切り離せない。だから人間の知性を、脳内で情報を処理する能力だけとして考えると、重要なものを取り落とす。人間は「考える脳」ではなく、「身体を持って世界の中に存在する生物」なのだ。

・『AIの壁 人間の知性を問いなおす』は、AIの限界を語る本である以上に、人間の思い込みの限界を語る本だ。AIが賢くなるほど、「人間の知性とは何か」という問いは難しくなる。そしてその答えは、知識量や計算速度の中にはない。疲れ、迷い、感じ、失敗し、誰かと関わり、やがて死ぬ。そうした身体を持った存在として世界にいることそのものが、人間の知性の土台なのだ。30代・40代のビジネスパーソンにとって本書が突きつける問いは明快だ。AIに仕事を奪われるかどうかを心配する前に、「AIにはできない仕事」ではなく、「人間だからこそ考えるべき問い」を持っているか。AI時代に価値を持つのは、AIより多く知っている人間ではない。AIが出した答えを前にして、「それで、本当にいいのか」と問い返せる人間なのかもしれない。

 

​






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2026.09.06 00:00:09
[Business] カテゴリの最新記事



© Rakuten Group, Inc.
X